昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(二十六)

2024-06-16 08:00:32 | 物語り

 今日の駐車場も満杯の状態だったが、幸いにも一台の車が目の前で発進した。
幸運に感謝しながら、「日頃の行いがいいからすぐに止められたよーん」と、軽口を叩いて止めた。
「何を言ってるの、二人の乙女のおかげよ」と貴子が言うと、思いも掛けずに「そうですよ」と、真理子の声が彼の耳に聞こえた。
ミラーを見ると、俯いた真理子が居る。
そして貴子が手を叩いて「山の神さまも美女には甘いのね」とはしゃぎ回った。

 プラネタリウムの中では、投影機を中心にして、その周りに椅子が設置されている。
背もたれを大きく倒して、ドーム型の天井に投影される季節ごとの星々を観ることになる。
貴子が気を利かせて真理子を中央にして、彼を隣り合わせに座らせた。
気恥ずかしさが少し残ってはいたが意を決して話しかけた。
「俺の運転、恐かった?」

 真理子は何も答えない。
薄暗い灯りの下で、じっと俯いている。
少し間を置いてから、ようやく重い口を開いた。
「わたし、こんなことを、ご本人に向かって言っていいのかどうか分かりませんけど。
でも、やっぱり言います。
でも、気を悪くしないでくださいね。
わたし、自分が不良のように思えるんです。
無茶な運転の車に乗っていたり、暗いプラネタリウムに入ってみたり、で」

 



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