齢七十となり、チラホラと訃報がとどきます。
若すぎた死をいたむ声もあれば、大往生でしたねと慰める声があります。
そんな中、わたしもそろそろ終活を意識せねばと思いはじめたのです。
といっても独りぐらしのわたしですし、特段これといって遺したい物もありません。
もっともわたしの遺物などを欲しがる人がいるはずもありませんが。
そうだ、これは欲しがる人がいるかもしれません。
4Kテレビなんですがね、家電量販店で買いもとめました。
そのおりの笑うにわらえないエピソードを聞いてもらいましょうか。
わたしという人間のいっ端がわかっていただけるかもしれませんし。
そもそもはパソコンの購入で出かけたのですが、いつの間にかテレビの話になってしまいました。
わたし絵画を観るのが好きでしてね、ちょくちょく美術展に出かけます。
そんな話を販売員としていましたら、テレビの画面が水族館から、とつじょルーブル美術館に変わったんです。
モナリザが出てきましてね、驚きました。
なるほど違いますわ、たしかに。
絵の具のひび割れ具合までくっきりと現れています。
思わず額をくっつけてしまいました。
苦笑いする販売員に気づいて画面から離れましたけど。
「結構いらっしゃるんですよ、画面に顔を付ける方が」なんて声が聞こえました。
わたしを慮ってのことではなく、事実のようですね。
けれどもそのまま真うしろに離れたのではなく、意地悪心がムクムクと湧いてきまして、斜め横から見てみました。
おもわず唸ってしまいました。
販売員の言を借りれば、「そのまんま」でした。
どういう意味かというと、歪みゼロ、輝度不変、あといくつか特徴を話してくれましたが、耳に入りませんでした。
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