昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十一)の七

2013-05-15 16:22:58 | 時事問題

(七)

「それは失礼致しました。では訂正させて…」

「マネージャー! ここには淑女しか居ないのよ!」
今度は薫が叫んだ。

どっと笑いが起こる中、額の汗を拭きつつ、
一段と力を込めてマネージャーが、まさに絶叫した。


「とに角、ようこそのお出で、まことにありがとうございます。
本日のビッグスター、天才マジシャンのご登場でーす! 
どうぞ万雷の拍手でもって、お迎えくださーい!」

ドラムの音に合わせて、黒マントに黒のシルクハット姿で登場してきた。

マスクに口ひげを生やした男で、
「よっ、怪傑ゾロ!」
との声に、
「グラッチェ!」
と声を張り上げた。

「なんだい、あれは。
西洋式の奇術師かなんかかい?」

初めて見る異様な出で立ちに、正三が見を乗り出した。

「知らないの? 今、大人気なのよ。
とに角すごいの!」

ひとみが身振り手振りを交えて、詳細に説明をする。
しかしあまりの興奮ぶりに要領を得ない説明となってしまい、
正三にはちんぷんかんだ。


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