(七)
「それは失礼致しました。では訂正させて…」
「マネージャー! ここには淑女しか居ないのよ!」
今度は薫が叫んだ。
どっと笑いが起こる中、額の汗を拭きつつ、
一段と力を込めてマネージャーが、まさに絶叫した。
「とに角、ようこそのお出で、まことにありがとうございます。
本日のビッグスター、天才マジシャンのご登場でーす!
どうぞ万雷の拍手でもって、お迎えくださーい!」
ドラムの音に合わせて、黒マントに黒のシルクハット姿で登場してきた。
マスクに口ひげを生やした男で、
「よっ、怪傑ゾロ!」
との声に、
「グラッチェ!」
と声を張り上げた。
「なんだい、あれは。
西洋式の奇術師かなんかかい?」
初めて見る異様な出で立ちに、正三が見を乗り出した。
「知らないの? 今、大人気なのよ。
とに角すごいの!」
ひとみが身振り手振りを交えて、詳細に説明をする。
しかしあまりの興奮ぶりに要領を得ない説明となってしまい、
正三にはちんぷんかんだ。
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