誰一人として居ない長椅子に腰を下ろすと、漫然とテレビの中の漫才師を見つめた。ドタバタと走り回る相方に対し、あれこれと注文を付けている男。令嬢に振り回されている彼が、そこにいた。そのひと言々々に、観客が笑い転げている。 . . . 本文を読む
久々の晴天です。
見て下さい、この壮観な風景。
みんな一斉に、洗濯でした。
さてさて、久しぶりの世界に向けた、日本からの発信でしたね。
テクニクス、良い響きじやないですか。
世界初の[ダイレクトドライブ方式]なんて、懐かしいですよ。 . . . 本文を読む
「お食事は今度にしましょう。映画が見たいわ、『ひまわり』をご存じ?マルチェロ・マストロヤンニという役者が、私のお気に入りなの。ソフィア・ローレンとの共演なの。リバイバル上映なの、嬉しいわ。」
有無を言わせぬ言葉だった。彼は、唯々従うだけだ。いやいや、本心を言えば、
“また、会える。食事で、会えるんだ。”と、喜びに打ち震えていたのだ。 . . . 本文を読む
「ごめんなさい。お友達にバッタリ出会って、挨拶だけのつもりが話し込んじゃって。
気にはしてたのよ、ホントにごめんなさい」
笑顔で詫びる令嬢に、彼は口ごもるだけだった。そして、安堵感と共に緊張が走った。
「お詫びに、横に座らせて」
彼は驚きの表情を隠せず、彼女の言うがままに席を移った。 . . . 本文を読む
「明日の夜、『愛』という喫茶店に来て! 時間は、五時五十分。遅れたりしたら、私帰るから」
極めて事務的な、命令調の言葉だった。
「どうして、五時五十分なんですか?」
彼は、おずおずと聞き返した。 . . . 本文を読む