凄まじいまでの実社会を、垣間見たような気がした。男女平等が叫ばれてはいるが、ビジネス社会においては完全な男社会なのだ、と思い知らされた。
『男にとって、男のエゴが生命の源だ!』
父親である武蔵の口癖だった言葉が、思い出された。 . . . 本文を読む
「あなた、年上の女性と付き合ってるでしょ? それとも、付き合ってたでしょ?」
話題が突然飛び、蛍子の目が妖艶に光った。
「は、はい。でも、どうして分かったんですか?」
「で、一人っ子ね。何ていうか、せかせかしてないのよね」 . . . 本文を読む
「でも、私なんか運がいい方かもね。同期三人で頑張ってたけど、結局私だけなのよね、残ったのは。一人は結婚に逃げ込んだし、一人は水商売にトラバーユしちゃったし」
「水商売って、ホステスさん、ですか?」
「意外? でもね、証券レディが水商売へ、って間々あるわけ。接待でお供することが多いからね」
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話し足りなそうな表情の蛍子に対し、身を乗り出す素振りで問い掛けた。
「蛍子さん、チーフなんですよね? もっと面白い話、あるんじゃないですか?」
得意げな表情を見せつつ、かつまた困り顔も見せつつ、
「どうしょっか、なあ。機密事項みたいなもんだし…」
と、焦れる彼を楽しんでいる蛍子だった。 . . . 本文を読む
「そんなに上手く、行くものなんですか?」
「だから必死よ、みんな。自分をアピールすることに関しては、凄まじいものがあるわ。もう、見ていて恥ずかしくなるぐらい媚を売ってるんだから。今の娘は、それぞれ自分のチャームポイントを良く知ってるからねえ」 . . . 本文を読む
蛍子に連れられたのは、本通りを一本入った路地裏にある小ぢんまりとした小料理屋だった。
暖簾をくぐると、「いらっしゃい、おけいちゃん。あらあら、今夜はハンサムな青年ね」と、女将らしい女性から声が掛かった。 . . . 本文を読む
指差す先を見ると、数人のグループが一人の女性を介抱していた。
飲みすぎたらしい女性が、苦しそうにうずくまっている。
「どうするよ」
「どうするったって、弱ったなあ」
「チーフ、からまれてたもんなあ。課長、酒癖悪いもんなあ」
「何時だ、今?」
「えぇっと、一時ちょい前だな」
小声で話しているのだが、良く聞こえる。
「ねえ、ねえ、どうするぅ? 」
「帰ろうかあ、チーフがこんなだし」
二人の女性が、 . . . 本文を読む