人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

川久保賜紀のチャイコフスキーVn協奏曲を聴く~ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン最終日から

2012年05月06日 07時20分25秒 | 日記

6日(日).昨日はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン”熱狂の日音楽祭”の最終日でした.暖かい気候だったので上着なしで出かけました

 

          

 

早めに会場に着いたので,まず国際フォーラムの展示ホールに行ってみました.そこでコーヒーを飲んでこの日のスケジュールを確認しました それにしてもつまんねー写真撮ったものだねぇ

 

          

 

よみうりホールに移動して午前11時半からエル・バシャのピアノによるラフマニノフ「13の練習曲」(24の前奏曲全曲演奏・第2部)を聴きました(公演ナンバー381) 3日に前半の11曲を聴いたので今回は後半の13曲です.自席は1階中央右の通路側,会場はほぼ満席です

レバノン生まれでパリ国立音楽院出身者のバシャは,ステージマナーが紳士そのものです 落ち着いた物腰でピアノに向かいます.速いパッセージのアレグロからゆっくりのアンダンテやレントまで,曲が変わるごとに音の表情を変えて再現します 私はアレグロよりもゆったりした緩徐楽章の方が彼に向いているような気がします.夢見るような旋律が頭に残っています

最後の曲のフィナーレはまさに24曲を締めくくるのに相応しい堂々たる曲ですが,バシャは感情に流されることなく理知的に締めくくりました 演奏直後,会場後方の女性から”ブラボー”がかかりました珍しい出来事だと思いました.

終演が12時を過ぎていたので昼食を取りました.それから,再度展示ホールに行くと生け花「ストラヴィンスキー”火の鳥”」が飾られていました.

 

            

 

次に国際フォーラムCホールに移動して1時45分から公演ナンバー343のコンサートを聴きました.プログラムは①チャイコフスキー「白鳥の湖」より情景,ワルツ,白鳥の踊り,情景,②プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番ト短調」で,ジャン・ジャック・カントロフ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアによる演奏,ピアノはエル・バシャです

会場入り口の掲示によると,「白鳥の湖」の演奏順が変更されていました.当初ワルツが2番目だったのが最後になっていました.多分,演奏効果を狙って変えたのだと思います.変更のお陰で,ワルツのフィナーレは迫力満点でした

2曲目のプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」のピアノ・ソロを担当するのは午前にラフマニノフの前奏曲を弾いたエル・バシャです.第1楽章冒頭は神秘的なメロディーが最初はオーケストラで,次いでピアノで奏でられます 徐々にプロコフィエフの世界に引きづりこまれていきます.この曲を生で聴くのは今回が初めてですが,聴きごたえのある曲でした

予定を10分オーバーして2時40分に演奏が終わりました.国際フォーラムに戻ると,地上広場の「キオスクステージ」でバラライカのテルム・カルテットが演奏していました.「デンデラ―,デレデレ,デンデラ―」と酔っぱらいのような歌声に合わせて観客が手拍子をしていました.こういうのは楽しいですね

 

          

 

その足でクラシック専門ラジオ局「OTTAVA」のブースに行くと,ちょうど3時からヴァイオリニスト川久保賜紀がゲストで出演していました この日演奏するチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」にまつわる話などをパーソナリティーが尋ねていました.「演奏前に食事はするんですか?」という問いに「演奏前は食べませんが,演奏後にはたくさん食べますよ」と答えていました.彼女は普段着で,髪の毛も普段通りでした

 

          

                      中央が川久保賜紀

 

再びCホールに移動して3時半から公演ナンバー344のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を聴きました自席は3階1-1です.ピアノはユーリ・ファヴォリン,小泉和裕指揮東京都交響楽団です.ちなみにコンサートマスターは矢部達哉です.3階席の一番前の席なので,舞台中央に座っている首席第2ヴァイオリン奏者・遠藤香奈子さん(通称エンカナ)の姿が良く見えます.1階席の中央席からは,ピアノの蓋が邪魔をして彼女の姿は見えないでしょう.残念でした

ソリストのファヴォリンは3日に現代音楽を演奏したピアニストです.第3協奏曲は4日,チェチュエフで聴いたので,本来なら聴き比べといったところです.どちらも技巧的には文句のつけようのない演奏家ですが,チェチュエフの演奏の時にも書いたように,いったい演奏家の個性とは何か,独自性とは何か,という問題に突き当たります 2人の演奏を比較して優劣をつけることなど素人にはできません.世界中の音楽コンクールでは,差のつけようのない実力者揃いの出場者の中から優勝に相応しいアーティストを選別しているわけですね.とても信じられません

終演はちょうど4時15分でした.次の公演が4時半からAホールであるので,拍手もそこそこに3階からエレベーターで降りて隣の棟のAホールに駈け付けました ペラ1枚のプログラムとともに歌の日本語訳(1枚)が用意されていたのはでした.

Aホールでは公演ナンバー314のコンサートを聴きました.プログラムは①ラフマニノフ「晩祷より第1番,第6番,第12番」,②同「詩曲:鐘」です.①は合唱のみのアカペラで,指揮は50年間埋もれていたラフマニノフの「晩祷」を演奏し,功績を遺したヴラディスラフ・チェルヌチェンコです 合唱はカペラ・サンクトぺテルベルクで男女各26~27人位の編成です.自席は1階18列14番で,中央左サイドの通路側です.会場はかなり空席が目立ちます.ロシアの宗教曲かあ,といった感じでしょうか

最初の「晩祷」はキリストを称える曲で,ほんの15分程度の短い曲ですが,合唱は力強く歌い上げていました

2曲目のラフマニノフ「詩曲:鐘」は4つの楽章から成りますが,第1楽章をテノールが,第2楽章をソプラノが,第3楽章を合唱が,第4楽章をバリトンが,それぞれ歌います 全体的に激しい曲で,とくに合唱だけで歌われる第3楽章は,これ以上声が出ないというほど大きな声を張り上げて歌い,指揮者のドミトリー・リスはボクシングのような振りでウラル・フィルに対峙し,今にも相手に喧嘩を売るようなスタイルで指揮をしていました 彼が指揮棒を持たないのは,もしも持っていて,それがすっぽ抜けて誰かに当たると大変なことになるからではないか,と勘繰ります 第4楽章あたりでリスの背中を見ると,汗でシャツが濡れ,その部分が黒くなっています.相当体力を使うのでしょうリスはいつでも全力投球です. なお,ソリストはソプラノ=ヤーナ・イヴァ二ロヴァ,テノール=スタニスラフ・レオンティエフ,バリトン=パヴェル・バランスキーです.熱演のためか時間を15分オーバーしました

次の公演まで時間があるので,再び展示ホールに行ってみました.すると,ホール内の一角に前日までの演奏の写真が掲示されていました.2枚写メしてきました.これって本当はいけないの?内緒ね

 

          

          

                       庄司紗矢香

          

今回の音楽祭の聴き収めはAホールで6時45分から開催の公演ナンバー315のコンサートです プログラムは①グリンカ「ルスランとリュドミーラ」序曲,②チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」で,ジャン・ジャック・カントロフ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア,ヴァイオリンは川久保賜紀です

最初の「ルスランとリュドミーラ序曲」は,いかに速く演奏するかが問われる代名詞みたいな曲です カントロフとオーケストラは,「ちんたら演奏したら席を蹴って帰るぞ」という観客の厳しい視線を浴びながら最速のテンポで突っ走りました

2曲目は,待望のチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」です.ソリストの川久保賜紀が深紅のタンクトップで登場します.背中丸出しは”大胆素敵”です 髪の毛をお団子にして上で丸めているせいか,先ほどの普段着の彼女とは雰囲気が違って見えます

第1楽章「アレグロ・モデラート」が軽快なテンポで開始されます.途中のカデンツァの時は,会場が緊張感で満たされ,5000人の聴衆の目と耳が彼女に集中しました.それは見事な演奏でした カントロフはオーケストラだけの演奏になると,テンポ・アップしてオケをせき立てていました 第2楽章「カンツォネッタ.アンダンテ」では,しみじみとヴァイオリンが”歌って”いました.そして,第3楽章「フィナーレ」に突入するとソリストの独壇場です.舞台の左右壁面に設置された大型スクリーンに写し出された彼女の顔を観ると,時に指揮者とアイ・コンタクトを取ってニッコリ笑い,時に悲しいメロディーに眉をひそめ,表情をくるくる変えながら演奏していきます

フィナーレの最後の音が終わるや否や会場一杯の拍手とブラボーの嵐が待っていました 何度も舞台に呼び戻され,観客の声援に応えていました 賜紀さんは一仕事終わったので有楽町の街に繰り出してたくさん食べたのかもしれませんね

これで今年のラ・フォル・ジュルネ”熱狂の日音楽祭”も終わりです 3日間はあっという間でした.16公演聴いた中で印象に残っている公演を挙げると,順不同で次のとおりです.

プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番ハ長調」(ピアノ=クレール・デゼール)

ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(ヴァイオリン=庄司紗矢香)

チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」(ヴァイオリン=川久保賜紀)

ラフマニノフ「前奏曲」(ピアノ=ベレゾフスキー)

グリンカ「大六重奏曲変ホ長調」(ピアノ=ケフェレック,コントラバス=ポワンシュヴァル,弦楽=プラジャーク弦楽四重奏団)

連休最終日の今日は新宿ピカデリーに,映画METオペラ・ライブビューイング,マスネの歌劇「マノン」を観に行きます

 

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ピアノ界のオール・スター饗宴~ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン第2日目報告

2012年05月06日 07時18分04秒 | 日記

5日(土).昨日はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン”熱狂の日音楽祭”第2日目のコンサートを5つハシゴしました 4日は朝から曇り空 念のため折りたたみ傘を持参することにしました

 

          

 

最初は国際フォーラムB7で午前10時45分から開かれる公演ナンバー221のコンサートです.私が聴く公演のうちこのコンサートだけがB7(822席)で,他はAホール(5008席),Cホール(1494席),よみうりホール(1100席)のいずれかです.少数収容のホールはなかなかチケットが取れません プログラムは①チャイコフスキー「弦楽セレナード ハ長調」,②プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番ハ長調」で,アレクサンドル・ルーディン指揮ムジカ・ヴィーヴァによる演奏,ピアノはクレール・デゼールです

自席は13列15番でセンター通路側,会場はほぼ満席です.指揮者ルーディンが登場し,最初のチャイコフスキー「弦楽セレナード」が始まります.冒頭の音楽を聴いて「おやっ,随分あっさりしているなあ」と感じました もっと濃厚な音楽作りをするのかと思っていただけに意外でした.ただ,ルーディンは緩急のメリハリをつけて丁寧にリードしていました 弦のセクションがトップ同士でアイ・コンタクトを取りながら演奏していたのが印象的でした.終わってから「弦楽セレナーデってこんなに長い曲だったかなあ」と思いました

ピアニスト,クレール・デゼールは14歳でパリ国立音楽院に入学,その後,チャイコフスキー音楽院にも留学したとのことです.彼女は金髪を上で束ね,上は黒を基調としたキラキラ光る金のようなものが散りばめられたコスチューム,下は黒のパンツ・ルックで登場しました.スリムで,まるでファッション誌から抜け出てきたモデルのような女性です

プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」がクラリネットのソロに導かれて始まります.デゼールは,何かに取りつかれたように演奏に集中します.曲が演奏者にそうすることを求めているのかもしれません その演奏スタイルを観て,アルゲリッチを思い出しました.しかし,アルゲリッチが動物的感覚で演奏しているように見えるのに対して,デゼールはより理知的なアプローチで演奏しているように見えます.完ぺきなテクニックという点では共通していますが・・・・・・曲想が目まぐるしく変わっていくこの曲を完ぺきにとらえ,聴衆の喝さいを浴びました

ルーディン指揮ムジカ・ヴィーヴァは,ソリストをよくフォローしていました 途中で気が付いたのですが,ピアノはYAMAHAです.そういえば,よみうりホールでのピアノもYAMAHAでした.徐々にYAMAHAが多方面に進出しつつあるのでしょうか

公演が11時45分に終わったので,昼食をとりました.外はいつの間にか雨になっていました 傘を持ってきて正解でした.1階の広場にはNHK・FM放送の臨時スタジオが設けられていて実況マナ中継の準備中でした

 

          

  

CD売り場脇のサイン会場にある「サイン会スケジュール」を見ると,ピアニストのクレール=マリ・ルゲのサイン会が1時5分からあることが分かったので,待つことにしました,というのは,こんなこともあろうかと思って,以前買っておいた彼女のCDを持ってきていたのです こういうところは小賢しいですよねルゲはにっこりと笑顔でCDにサインをしてくれました.彼女が「アリガト」と言ったので「メルシー」とお礼を言っときました

 

          

 

                   

 

次はよみうりホールに移動して,午後1時45分から公演ナンバー282のコンサートを聴きました プログラムは①リャードフ「2つのパガデル,②チャイコフスキー「四季より舟歌」,③同「12の小品より第6番,第10番」,④グリンカ「大六重奏曲変ホ長調」で,ピアノはアンヌ・ケフェレック,プラジャーク弦楽四重奏団,コントラバスはぺネローブ・ポワンシュヴァル.自席は1階N列10番です.

ケフェレックが黒のコスチュームで登場,①から③までを連続して演奏しました 珍しく,メガネをかけて楽譜を見て演奏していました.そして,プラジャークSQとポアンシュヴァルトを伴って再度登場します.ポアンシュヴァルトは男性かと思っていましたが,なんと背の高い女性でした.パリ国立高等音楽院出身とのことです.そういえばケフェレックもそうです

グリンカの「大六重奏曲」は,まさに大々的な曲で,第1楽章「アレグロ」が終わると拍手が起きました単一楽章と間違えただけなのかもしれません 第2楽章「アンダンテ」から第3楽章「フィナーレ」へなだれ込みます.圧倒的な熱演に会場一杯の拍手です 第1ヴァイオリン奏者が「スモール・アンコール」と言って,第3楽章「フィナーレ」を途中から演奏しました.これでまた,会場は興奮のるつぼに

再度,展示ホールに行くと広場で3時からテルム・カルテットの演奏が始まりました.アコーデオンと大小3つのバラライカから成るロシア民族音楽四重奏団ですが,これが実に楽しいコンサートでした 照明が熱いせいか顔を真っ赤にして熱演を繰り広げ,さかんに喝さいを浴びていました こういう演奏が無料で聴けるのはありがたいことです

展示ホールには生け花「ストラヴィンスキー”ペトルーシュカ”」が飾られていました

 

           

 

再びよみうりホールに戻って,4時から公演ナンバー283のボリス・ベレゾフスキーのピアノ・コンサートを聴きました 当初発表されたプログラムは①ラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第1番ニ短調」,②同「メロディ ホ短調」,③クライスラー(ラフマニノフ編)「愛の喜び,愛の悲しみ」でした.会場はほぼ満席,自席は2階左54番です.

最初にラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第1番」を強靭なピア二ズムで弾き切りました この人の演奏を聴いていつも思うのは,余裕をもって演奏しているように見えるということです 8の力しか出していないのに,聴衆には10に聴こえるといったらいいのでしょうか

次に舞台に出てきたとき,日本語で「スミマセン,3アリマセン,5のプレリュード,アリマス」と言って演奏に移りました.プログラムでその意味を確かめると,ラフマニノフの「メロディ」とクライスラーの「愛の喜び」「愛の悲しみ」の3曲を取りやめて,代わりに前奏曲の中から5つを演奏する,ということのようでした これがまた凄い演奏で,他のピアニストとそもそも音量が違います.完ぺきなテックニックの裏付けのよってピアノが壊れるのではないかと思われるほどピアノを鳴らします

”会場割れんばかりの拍手”というのはこういうのを言うのか,と感じました 会場の熱気で室温が一気に何度か上昇した感じです 気をよくしたベレゾフスキーはアンコールにサンサーンスの「白鳥」を演奏しましたが,まだ,拍手が鳴りやまないので,ショパンのワルツを演奏しました 彼はこれで引き揚げるつもりだったようですが,まだまだ拍手が鳴りやまないので,もう1曲ワルツ(多分)を演奏しました

外に出るといつの間にか雨は上がっていました 次の公演まで間がないのですぐにホールAに移動しました.5時半から公演ナンバー214のコンサートを聴きました.プログラムはラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」1曲のみで,ピアノはイーゴリ・チェチュエフ,フェイサル・カルイ指揮ベアルン地方ポー管弦楽団です.

自席は1階22列32番で,センタ―通路側です.舞台上のピアノを見るとスタインウェイでした.ソリストのチェチュエフはウクライナ出身で,1998年にルービンシュタイン国際コンクールで優勝しました 指揮者カルイは1971年生まれ.かなりの長身です.ペアルン地方ポー管弦楽団は20年の歴史を持つフランスの楽団とのことです.よく見るとティンパ二は女性です

オーケストラの序奏に導かれてピアノが入ってきます.ところが,音がボワーンとして聴き取りにくいのです.デッドな音と言えばいいのでしょうか 前日,読響を聴いたときにはそうは感じなかったのに・・・・・・温度や湿度などが関係しているのでしょうか? チェチュエフは優れた技巧でラフマニノフのロマンティシズムを再現します.その素晴らしさは演奏後の会場の拍手の大きさで測ることができます.

それにつけても,この音楽祭に登場するピアニストだけとってみても,テクニック上は完ぺきに近いし,スピードもあるし,抒情性もあるし,だれもが文句のつけようのないアーティストばかりです しかし,それではいったい,どうやって,個性あるいは独自性を出せばいいのでしょうか? ある意味,速く弾く傾向にあるピアノ演奏界にあって,極端に遅く弾くなどの方法しかないのか,とさえ思ってしまいます イーヴォ・ポゴレリッチのように.しかし,彼の物まねは非常に危険を伴うと思います

公演が6時20分ごろ終わったので夕食をとることにしました.それから再度展示ホールに行ってみると,ケフェレックのサイン会が始まっていました.彼女の人気を反映して長蛇の列が出来ていました

この日の最後に,Aホールで7時45分から公演ナンバー215のショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」を聴きました.ドミトリー・リス指揮ウラル・フィルによる演奏,ヴァイオリンは庄司紗矢香です.この音楽祭の白眉です おそらく発売開始からすぐにチケットは売り切れてしまったのではないでしょうか

自席は1階35列32番で後方の通路側です.さて,始まる5分ぐらい前,1階右サイドやや後方で「なんだ,おまえは」という男の大声が会場一杯に響きました.みな何事かとそちらの方を見ていました.ひとりの中年男が後ろを向いて座席に座っている人を睨んでいるのです.どうせ,席を間違えて座ったとか,前の席を蹴ったとか,つまらないことで大声を出したのでしょう コンサート会場で大声を出すこと自体が間違っています.何かがあっても小さな声で伝えれば済むことがほとんどでしょう.音楽祭があると,必ずこういう発火点の低い人が出てきます お祭りには”付き物”といってもいいかもしれません.こういうことのないように会場整理のボランティアさんはトランシーバーを身に着けているはず.”今そこにある危機”を発見して,すぐに責任者に通報して,そういう”困ったちゃん”を外につまみ出すくらいの仕事をしてほしいと思います.一人の非常識ために不特定多数の人が不愉快になる理由はどこにもないからです

さて,馬鹿はほっといて,目を舞台に転じると,オーケストラの配置は第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスの順で,一般的な形態と比べて,ヴィオラとチェロの位置が入れ替わっています.深紅のドレスに身を包まれた庄司紗矢香が指揮者リスとともに登場します.リスは指揮棒を持ちません.庄司は,スケルツォでは躍動感溢れる,パッサカリアでは情感豊かに,演奏を展開します 

終演後,何度も舞台に呼び戻され2人ですが,最後にリスが譜面台に置かれていた譜面を開いて,ショスタコーヴィチの顔写真を観客席に向けて「作曲家にこそ拍手を!」と言わんばかりの表情を見せていました そして大きな拍手の中,満足げに舞台のそでに引き上げていきました

このコンビによるこの曲のCDが発売されています.私は以前買って持っていますが,引き締まった良い演奏です.

 

          

 

 

帰りがけにフランス・ナントで2月に開催されたラ・フォル・ジュルネの公演の一部をライブ録音したCD「ク・ドゥ・クール」を買ってきました.決め手はグリンカの「大六重奏曲」が収録されていることです

早くも今日が最終日.朝からカラッとしたいい天気.今日は5公演聴いてきます

 

          

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