人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アリス=沙良・オット+チョン・ミュンフン指揮フランス国立放送フィルのコンサートを聴く

2013年10月01日 07時03分50秒 | 日記

10月(火)。昨日の朝日夕刊に「『役に立てる調べ』被災地の子支援~ピアニスト萩原麻未、広島・東京で公演」という記事が載りました 記事によると、

「2010年のジュネーヴ国際音楽コンクール優勝者で、パリを拠点に活動するピアニスト萩原麻未(26)が10月、故郷の広島と東京でコンサートを開く 活動の芯にあるのは、『人に役に立ちたい』という幼い頃からの夢、そして故郷で育まれた平和への思いだ。今回は、ベネズエラの若手オーケストラ『エル・システマ・オーケストラ・オブ・カラカス』と共演。グリーグのピアノ協奏曲イ短調を演奏する

私も、このコンサートを10月11日に聴きに行きますが、記事で驚いたのは「広島出身の被曝3世」とあったからです これまで彼女のプロフィールでこの表現が出てきたのを見たことがありません。そう言えば、広島出身の”現代のベートーヴェン”と言われる作曲家・佐村河内守は被曝2世です。いずれにしても、被爆2世だから、3世だからというのではなく、2人には共に頑張ってほしいと思います

 

  閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールでチョン・ミュンフン指揮フランス国立フィルハーモニー管弦楽団のコンサートを聴きました プログラムは①ラヴェル「組曲”ラ・メール・ロワ”」、②ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」(ピアノ:アリス=沙良・オット)、③サン=サーンス「交響曲第3番ハ短調”オルガン付”」です

 

          

 

会場はほぼ満席。自席は2階RC5列7番で、2階の右サイドから舞台を見おろす位置です オケのメンバーが入場しますが、1曲目はラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」のため小編成です。全員で55人前後といったところです 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、後ろにコントラバスという編成です

チョン・ミュンフンのタクトによって「マ・メール・ロワ」(つまりマザー・グース)が始まります。この組曲は「眠れる森の美女のパヴァーヌ」「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」「妖精の園」から成ります

「眠りの森の美女~」は管楽器も弦楽器もやわらかい音で、弦など絹のような肌触り、その響きは芳醇の一言です 最後の「妖精の園」はアンコールピースとしてよく演奏される曲ですが、短いながら感動的な曲です コンマスと首席ヴィオラ奏者のソロは聴きものでした

ピアノが右サイドからセンターに運ばれ、ラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」に備えます。ソリストのアリス=沙良・オットが白のロングドレスで登場します。足元を見ると、やはり素足です。つまり靴を履いていません ”はかない一生”と一笑に伏さないでください。これが彼女の演奏スタイルなのです

チョン・ミュンフンのタクトが振り下ろされ第1楽章が始まります。驚いたことにチョンは譜面台にスコアを置いています。私はこれまで何度も彼の指揮を観てきましたが、スコアを見ながら指揮をするのを観たのはこれが初めてです 彼がこのオケとのコンビでアリスと協奏曲を演奏するのは今回が初めてということなので、ソリストに合わせるという意味でスコアが必要だったのでしょう

アリスはしなやかに、そして軽快に音楽を進めます 第1楽章が終わっても、チョンは後ろを振り向きません。じっとアリスが第2楽章を弾き始めるのを待ちます アリスが詩情豊かにアダージョを奏で始めると、チョンはオケをそっと寄り添わせます ピアノとコーラングレとの対話は天国的で夢見るようです そして、ほとんど間断なく第3楽章プレストに突入します。アリスはジャズのようなメロディーを最高のリズム感で疾走します チョンはほとんどピアニストの方を振り返らず、背中で指揮をします。彼はすべてを掌握しています

会場一杯の拍手 とブラボーに、アリスはアンコールを演奏しました。ラヴェルのコンチェルトを弾いた後なので、アンコールもラヴェルかと思いましたが、あとで会場外の掲示で確かめるとシューマンの「ロマンス第2番」でした。どこかで聴いたことがある曲だと思いました

 

          

 

休憩後はサン=サーンスの「交響曲第3番ハ短調”オルガン付”」です。オケはメンバーが90人ほどに拡大されます チョンのタクトで第1楽章第1部が開始されます。この曲でも絹のような弦の響きは健在です それだけでなく、厚みがあります。管楽器も一人一人が実力者揃いです。第2楽章第1部の冒頭、弦楽器の力強い推進力を何と表現すれば良いのでしょうか とにかく凄い集中力です。それを可能にしているのは、チョン・ミュンフンの瞬発力を備えた集中力です キビキビとした指揮でオケを自由自在にドライブします。フィナーレは圧巻でした

会場割れんばかりの拍手 とブラボーがチョンとオケに押し寄せます。会場のそこかしこでスタンディングオベーションが見られます 何度も舞台に引っ込んでは登場し、日本語で「ありがとございます。ストラヴィンスキー、ファイアーバード、フィナーレ」と言って、アンコールにストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」から”終曲”を演奏しました

それでも拍手 が鳴り止まないので、チョンは再びタクトを持って登場、2曲目のアンコールを演奏しました。ビゼーの「カルメン」組曲から前奏曲です。拍手 ブラボー、拍手 スタンディングオベーション・・・・・・いやー、凄いコンサートでした

チョン・ミュンフンは1974年のチャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門第2位の実力者ですが、ロサンゼルス・フィルの名指揮者カルロ・マリア・ジュリー二のアシスタントを務め、2年後に副指揮者に任命されました それを皮切りにパリ・オペラ座バスティーユの音楽監督などを務め、今や押しも押されもしない世界最高峰の指揮者です

ピアニストから指揮者に転向した音楽家では、バレンボイム、アシュケナージ、エッシェンバッハなどがいますが、最も成功しているのはチョン・ミュンフンでしょう 他のピアニスト出身の指揮者たちと違って、彼にはカリスマ性があります 一度、彼の指揮を見たら決して忘れられないでしょう

 

          

          

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