12日(土)。新聞業界紙「新聞之新聞」10月7日号に「よみうり大手町ホール オープニングシリーズ決定~来年3月 読響特別公演で開幕」という見出しの記事が載りました 要約すると、
「大手町で今秋竣工する読売新聞東京本社の新社屋(33階建て)に造られる『よみうり大手町ホール』(501席)のオープニングシリーズの公演内容が決まった 2014年3月28日、読売日本交響楽団の特別公演で開幕 6月末までの3か月間、クラシックからジャズ、伝統芸能まで多彩な公演が行われる。クラシックでは、読売日響名誉客演指揮者の尾高忠明が、河村尚子をソリストに迎えモーツアルトの『ピアノ協奏曲第23番』を演奏するほか、辻井伸行のピアノ・リサイタルなども予定されている」
客席数501というのは内幸町のイイノホールとほぼ同じです。是非一度聴いてみたいと思いますが、有楽町駅前のビックカメラ・ビルにある読売ホールはどうするのでしょうか
閑話休題
昨夕、池袋の東京芸術劇場でベネズエラのオケ「エル・システマ・ユース・オーケストラ・オブ・カラカス」のコンサートを聴きました プログラムは①ヴェルディ「オペラ”運命の力”序曲」、②グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」(ピアノ:萩原麻未)、③チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」で、指揮は音楽監督のディートリヒ・パレーデスです
「エル・システマ・ユース・オーケストラ・オブ・カラカス」はベネズエラの、音楽による青少年教育システム「エル・システマ」内で結成されたオケで、14歳から22歳まで計175人の若者たちから成っています
会場の東京芸術劇場に着いて、チラシの束を指定の1階L列14番に置いてからトイレに行きました。男子トイレに入ってビックリしました。5~6人の外国人の若者が着替えの最中だったのです 一人は上半身ハダカ、一人はワイシャツを着ているところ、一人はズボンのチャックを閉めているところ、小用便器に上には腕時計や財布が置きっぱなし・・・・という具合で、一瞬、新宿三丁目のゲイバーに紛れ込んだのではないかと勘違いしそうになりました よ~く考えてみると、彼らはこれから演奏するオケのメンバーでステージ衣装に着替え中だったのです それにしても、天下の東京ゲイ術劇場なのだから控室はあるだろうに。さすがに175人は収容しきれなかったか
座席はほぼ満席です。若き演奏者たちが拍手に迎えられて次々と入場します これ以上は舞台に乗れないのではないかと思うほど、所狭しとメンバーが席に着きます 全員を数えるのは面倒なので、代表してコントラバスを数えると15人もいます ヴァイオリン・セクションの多さは言うまでもありません。オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後方にコントラバスという態勢を採ります 男女の比率はほぼ半々くらいと思われますが、第2ヴァイオリンとチェロに女性が多いようです。男性は黒の上下にエンジ色のネクタイ、女声はワインレッドのノースリーブで統一されています
パレーデスがタクトを持って登場します。彼が後ろに向いた瞬間、会場後方でフラッシュが焚かれました日本人ではないと思いますが、どうでしょうか?1曲目のヴェルディのオペラ「運命の力」序曲が始まります。オーボエ、クラリネット、フルートのソロがありますが、皆素晴らしい演奏です。若さの総力で力強い演奏が展開します
演奏が終わり、指揮者が袖に引っ込んでもコンマスが座らないのでオケはずっと立ちっぱなしです 3回目くらいに、やっと気が付いたか、コンマスが座り、それに倣ってオケが座るや否や、指揮者が登場します。何ともちぐはぐな感じですが、こういうところが良いのでしょうね、このオーケストラは
弦楽器を中心に椅子がかなり片付けられ、舞台の左袖からピアノが中央に運ばれますが、何しろ人数が多いので、一旦メンバーが舞台袖に引っ込むのに時間がかかります 相当オケが縮小されてオケがスタンバイします。何と、コンマスよりも遅れて登場したメンバーが約2名いました
2曲目はグリーグの「ピアノ協奏曲イ短調」です。萩原麻未が白のドレスに身を包まれて登場します 激しい第1音で曲が開始されます。第1楽章の終盤のピアノの独奏は狂気迫るものがあり、萩原麻未の集中力が発揮されます 第2楽章の抒情に満ちた演奏はロマンティックそのものです 第3楽章は舞曲のような弾むメロディーの音楽が続きます。そして華々しいフィナーレを迎えます 萩原麻未は期待通りの瞬発力で素晴らしい演奏を聴かせてくれました
会場一杯の拍手とブラボーに、彼女は会場に向かって何かを言ってアンコールを始めました。「震災で亡くなられた人・・・・」という言葉が聞こえたので、多分、3.11東日本大震災で亡くなられた霊に捧げるために演奏する、と言ったのだと思います 彼女は、静かにバッハ作曲・グノー編曲「アヴェ・マリア」を演奏しました これが、心に沁みる素晴らしい演奏でした
休憩後はチャイコフスキーの「交響曲第5番ホ短調」です。オケは再びフルメンバーでの登場です コンマスが代わり、パレーデスが登場、第1楽章が開始されます 彼は楽章間の間を空けずに続けて演奏します。これは彼の演奏の特徴だと思います とくに第2楽章のホルンの独奏が光っていました。演奏後、指揮者は真っ先にホルンを立たせました 会場のそこかしこでスタンディングオベーションで若者たちを賞賛します
指揮者が何度か舞台袖に引っ込んでは出てきたと思ったら、急に会場の照明が落とされ、真っ暗闇になりました いったい何が起こったのか、会場は不安と期待に満ちています しばらくすると、再び照明が点けられ、舞台上のメンバーが浮かび上がりました。全員が下の写真にあるような青、赤、黄色に彩られた派手なパーカーを着ています これはベネズエラの国旗をあしらったデザインなのでしょう。会場は驚きと喜びに満ち、拍手 と口笛が飛び交います
パレーデスがオケの方に振り返り、アンコールを演奏します サン=サーンスの「サムソンとデりラ」から”バッカナール”、そしてバーンスタインの「シンフォニック・ダンス」から”マンボ”です(もう1曲やったのですがメモしきれず)。オケのメンバーは、時に楽器を持ち上げて踊りながら、時に楽器をクルクルと回しながら、楽しそうに演奏します 聴衆は手拍子で応えます こんなに生き生きと演奏するオケがほかにあるでしょうか
すべてが終わると、オケのメンバーはパーカーを脱ぎ、会場に向けて放り始めました 会場は興奮の坩堝と化しパーカー争奪戦の様相を呈してきました。はたして、ここはAKB48のコンサート会場か?それともペルシャザールの饗宴か?はたまたB級グルメ選手権のグランプリ発表会場か?こんなに賑やかなフィナーレは初めてです
ロビーで10月8日に発売されたばかりのCDが売られていました 萩原麻未のピアノ、パレーデス指揮エル・システマ・ユース・オーケストラ・オブ・カラカスによるグリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」とショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」で、今年6月8日にカラカスで収録されたライブ録音です。日本・ベネズエラ外交関係樹立75周年を記念したもので、収益は被災地の復興支援のために寄付されるとこことです 終演後、サイン会があるというので迷うことなく購入しました。萩原麻未待望の初CDですから
終演後、ロビーのサイン会用デスクに並びましたが、10番目でした。通路側寄りの席は有利です とは言うものの、かなり長時間待たされました。パレーデスが「ソーリー、トゥー・レイト」と謝りながら萩原麻未とともに来場しました。パレーデス、萩原の順にサインをすることになっており、最初にパレーデスがCDジャケットのど真ん中に堂々とサインを書いてしまったのでスペースがあまりなくなってしまいました 麻未さんに「どこにサインしましょうか?」と訊かれ、迷った挙句、左上のスペースを指して「この辺にお願いします」とお願いすると、チャチャッとサインしてくれ、「ありがとうございました」とお礼を言うとニコッと笑ってくれました 「パレーデスめ、でかでかと真ん中にサインしやがって」と恨みましたが、短いながらも麻未さんと会話する機会を作ってくれたのだから感謝しなければ、と思い直すことにしました 下の写真中央の黒色の細いサインがパレーデス、左上の金色の太いのが萩原麻未さんのサインです 麻未さん、サインの左側の音符♪は判るのですが、あとは何と書いてあるのでしょうか
この日のコンサートは、憧れの萩原麻未さんとベネズエラの若き演奏者たちの情熱的な演奏に元気をもらいました
(旧式ガラケーの写メのためシャッタースピードが遅く、
何枚か失敗のあと苦労してやっと撮った1枚です)