人はなぜ、自ら死を選ぶのか?
伯父の死が徹の拘りの元凶とも言えた。
伯父は、愛した人が他の男を愛して結婚したことが許せぜ、包丁で愛した人の心臓をめがけて刺殺し、その直後に自らの首を切り自死する。
小学生4年生であった徹は深い衝撃を受けた。
伯父の深山明人は当時20代の後半であり、小説家を目指していたんのだが、才能が結実することはなかった。
徹は伯父が遺した本を読んだのは高校生の時であった。
その小説は、太宰治の本をはじめ、坂口安吾、織田作之助、檀一雄などの無頼派の作家の作品であった。
そして、詩作に目覚めたのは、高校の国語教師の峰昭信の影響であった。
20代後半の彼は授業のなかで詩を感情を込めて多感までに朗読する。
徹はその声の匠さに惚れ込む。
将来は声優かアナウンサーになりたいと徹は傾倒していく。
実際、徹はソプラノ歌手を目指していた姉に似て美声だった。
だが、徹は挫折する。
突然の姉の自死に打ちのめされ、高校を2年で中退し、母の故郷で田舎暮らしとなったのだ。
人生をがらりと、100度まで変えてしまう元凶は如何ともしがたかったのだ。
将来を絶望し、母の故郷の群馬の利根川に身を投げた17歳の徹は、死にきれなかった。
彼は皮肉にも体操と水泳で高校時代に花形選手の一人でもあった。
「元凶」の「元」は訓読みで「もと」、「凶」は訓読みで「わざわ(い)」「わる(い)」というように読む。