<貝寄風(かいよせ)に乗りて帰郷の船迅(はや)し>
<降る雪や明治は遠くなりにけり>
中村草田男作品は大きく俳壇を動かすことになった。
正岡子規が唱えた俳句の近代化、この草田男によってひとつの成熟へと向かい始めたといっていい。
草田男の文学は思想詩としての深まりを見せはじめた。
定型と季題という伝統俳句の制約のなかで、自然や社会と内面世界との統一が志されていったのである。
<焼跡に遺る三和土(たたき)や手毬つく>
<夜の蟻迷へるものは弧を描く>
こうした人生や社会と深くわたりあう近代的人間的な作家精神に、俳壇は共鳴していったのである。
<全能母に縋れど天然え原爆忌>
<折々己れにおどろく噴水時の中>
一方では瑞々しい愛妻俳句、吾子俳句のリリシズムが読者を魅了した。
<空は太初(たいしょ)の青さ妻より林檎>
<萬緑の中や吾子の歯生え初むる>
評論においても草田男は昭和俳句界の強力な索引者だった。
桑原武夫が俳句を第二芸術と呼んだことに徹底して論駁した。
俳人・横澤放川さん
<降る雪や明治は遠くなりにけり>
中村草田男作品は大きく俳壇を動かすことになった。
正岡子規が唱えた俳句の近代化、この草田男によってひとつの成熟へと向かい始めたといっていい。
草田男の文学は思想詩としての深まりを見せはじめた。
定型と季題という伝統俳句の制約のなかで、自然や社会と内面世界との統一が志されていったのである。
<焼跡に遺る三和土(たたき)や手毬つく>
<夜の蟻迷へるものは弧を描く>
こうした人生や社会と深くわたりあう近代的人間的な作家精神に、俳壇は共鳴していったのである。
<全能母に縋れど天然え原爆忌>
<折々己れにおどろく噴水時の中>
一方では瑞々しい愛妻俳句、吾子俳句のリリシズムが読者を魅了した。
<空は太初(たいしょ)の青さ妻より林檎>
<萬緑の中や吾子の歯生え初むる>
評論においても草田男は昭和俳句界の強力な索引者だった。
桑原武夫が俳句を第二芸術と呼んだことに徹底して論駁した。
俳人・横澤放川さん