ハマスとイスラエルの戦争から1年

2024年10月12日 21時17分15秒 | 社会・文化・政治・経済

ハマスが連れ去った251人の人質ののうち101人は今の捕らえられてたままだ。

これまで、ガザ地区の死者は?

 

イスラム組織ハマスが運営するパレスチナ自治区ガザ地区の保健省は15日、イスラエルの攻撃によって殺されたパレスチナ人が4万人を超えたと発表した。

保健省は現在、病院での記録、家族による登録、信頼できるメディア報道の三つのデータから死者数を割り出している。

発表されるデータでは民間人と戦闘員の区別はない。

しかし保健省は、死者の大半は子どもや女性、高齢者だとしている。

一方イスラエルは先に、この戦争でハマスの戦闘員1万5000人が死亡したと発表したが、根拠は示していない。

イスラエルの空爆による死者をとむらうガザ地区南部ハンユニスの人々

パレスチナ自治区ガザ地区の南部ハンユニスで、イスラエル軍による地上作戦と空爆があり、イスラム組織ハマスが運営する保健省によると、少なくとも51人が殺された。

イスラエル軍の戦車が1日夜、ハンユニスの一部地域と周辺地域に侵攻したもよう。住民は、銃声や激しい砲撃が聞こえたと述べている。

病院に搬送されたある負傷者はBBCに対し、戦車が警告なく村に「進んできた」と語った。

イスラエル国防軍(IDF)はこれとは別に、ガザ地区北部と中部で避難民が身を寄せている学校4カ所にあるハマスの標的を空爆したと発表した。

IDFによると、ハマスはムスカット、リマル、ブレイジ、ヌセイラトの各学校内に設置された「司令・制御室」で活動していたという。

パレスチナのWAFA通信は、ガザ市タッファ地区のムスカットの学校で少なくとも9人の民間人が殺されたと報道。また、リマル地区のアルアマル児童養護施設では6人が殺害されたと伝えた。

アルアマル児童養護施設はその後、フェイスブックへの投稿で、イスラエルの空爆が数百人の民間人が避難していた建物を襲い、子どもや女性を含む8人が殺され、大勢が負傷したと発表した。

ガザ地区の市民防衛隊も、2日にイスラエルがガザ中部のヌセイラト難民キャンプにある女子校を爆撃したと発表。3人が死亡し、15人が負傷したとした。

イスラエルは1日、レバノンへの地上作戦を開始するとともに、イランからのミサイル攻撃に対処した。イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは1年近く、国境を挟んで攻撃を続けてきた。1日の地上侵攻は、ヒズボラの拠点に対する「限定的」な作戦だとイスラエルは説明している。

IDFは、2日未明に行われたとされるガザ南部への空爆について、まだコメントしていない。

しかし、ハンユニス南東にあるキザン・アルナジャル村の男性はBBCアラビア語に対し、親戚の何人かが攻撃で死亡したと語った。

この男性はハンユニスのナセル病院で、「戦車がその地域に突撃し、クアッドコプター(無人機)が私たちを直接狙っていた」と語った。同病院の医療関係者も、死者数の最新情報を提供した。

病院にいた別の男性は、「私たちがあの村にいたところ、突然、飛行機や戦車から砲弾が降り注ぎ始めた」と話した。

さらに別の男性はBBCアラビア語に次のように語った。「事前の警告は何もなかった。レバノンからのロケット砲攻撃の後、私たちは完全な破壊を目撃した。私はかろうじて生き延びたが、娘は負傷し、妻は頭にけがをして、失明の可能性がある」。

この男性はまた、イスラエル軍が避難民が避難していた家屋も「完全に破壊」していたと話した。

ハンユニスでイスラエルの空爆により破壊された建物で救助が行われている

画像提供,EPA

画像説明,ハンユニスでイスラエルの空爆により破壊された建物で救助が行われている

ガザ地区の保健省は2日、イスラエルの攻撃による死者はさらに増える可能性があると警告し、新たに82人が負傷したと発表した。

IDFは昨年12月以来、ガザ第2の都市圏であるハンユニスで、ハマスの戦闘員を標的とした複数の地上作戦を展開している。

ハマスは昨年10月7日にイスラエルを攻撃し約1200人を殺害、251人を人質として連れ去った。これを受けて始まったイスラエルの軍事作戦により、これまでに4万1689人が殺害されたと、ガザ地区の保健省は発表している。

欧米諸国はイスラエルに武器を供与するなどの支援を続けていることも問題視されている。

特に米国は、イスラエルがどんなに間違っていても絶対にイスラエルを支援する立場だ。

イスラエルのネタニヤフ首相は収賄と詐欺、背任の罪でイスラエルの検察に起訴されており、裁判で有罪が決まれば逮捕される恐れがある。

それを避けるための、戦争を長引かせているのだ。

なぜ戦争をしているのか?

レバノン南部にはリタニ川という水量豊富な水源があり、イスラエルは、そこを手に入れたいという思惑のもあるのだろう。

日本はパレスチナを国家承認をすべきだ。

今や、世界の多数である140か国がパレスチナを国家承認している。

最も重要なことは、パレスチナ人の生活の質の向上である。

昨年10月7日以前も、イスラエルはガザ地区をたびたび空爆しており、パレスチナ人の死傷者は急増している。

しかも、パレスチナ人がイスラエル軍に投石しただけでも、3年から20年の禁固刑を受ける。

パレスチナ人へのイスラエルの横暴な振る舞いは植民地支配や占領に当たるものであり、それにパレスチナ人が抵抗すること国際法上、人民の自決権の行使として認められている。

とはいえ、昨年10月7日のハマスへの奇襲はイスラエルの民間人も犠牲にしており、許されるものではない。

イスラエルは強く、国際社会から強く糾弾すべきだ。

 

 


日本は現在 いい線をいっているのか?!

2024年10月12日 15時29分59秒 | 社会・文化・政治・経済

民主党政権時(2012年)と最近の経済指数

日経平均株 8664円(12年11月)  4万2224年(24年7月)

名目GDP 494兆円(12年10月期ー12月期) 607.6兆円(24年4-6月期)

春闘賃上げ(連合まとめ) 1・72%(12年)  5・10%(24年)

同中小企業 1・52%(12年) 4・45%(24年)

最低賃金 749円(12年度) 1055円(24年度)

就業者数 6228万人 6815万人

インバウンド(訪日客) 836万人(12年) 2507万人(23年)

農林水産物・食品の輸出 4497億円(12年) 1兆4547億円(23年)

 


テレビドラマ 松本清張原作「黒の奔流」

2024年10月12日 13時28分34秒 | 社会・文化・政治・経済
テレビで放送された松本清張原作の小説「種族同盟」を原作とした映画「黒の奔流」は、船越英一郎主演
BSテレ東で2024年2月18日と10月12日に放送されました。
 
 
情報
原作
松本清張の小説「種族同盟」
脚本
国弘威雄
監督
渡辺裕介
撮影
小杉正雄
出演
船越英一郎ほか

この映画は、多摩川渓谷の旅館の女中がなじみの客を崖から突き落したという殺人事件の裁判が始まる様子を描いた作品です。

番組内容

弁護士・丹羽修造(船越英一郎)は、経営コンサルタント・風間隆一(金山一彦)の強盗殺人の被告人・横山リエ(星野真里)の弁護を担当することになった。

リエは、自白を強要されたことを告白して無罪を主張するが、彼女を犯人と裏付ける証拠が揃い、俄然不利な状況であった。

被告人の無実を信じる丹羽は、助手の由基子(黒谷友香)と事件当日の目撃情報収集に奔走する。
そして、ある証言をもとに不利な状況から一転、見事無罪を勝ち取るが…。

松本清張サスペンス 黒の奔流 出演:船越英一郎

 
チャンネル銀河
https://www.ch-ginga.jp › detail › episode
 
 
出演者: 船越英一郎、賀来千香子、星野真里、黒谷友香、西村雅彦、阿部力、風間トオル、金山一彦、吉満涼太、鹿賀丈史 ほか ; スタッフ: 【原作松本清張 ; 制作年: 2009年.
含まれない: 映像 ‎| 必須にする: 映像

松本清張 黒の奔流 - FOD - フジテレビ

 

出演者

 丹羽修造…船越英一郎
 丹羽ひとみ…賀来千香子
 横山リエ…星野真里
 岡橋由基子…黒谷友香
 屋代邦和…西村まさ彦
 二宮正樹…阿部力
 楠田拓也…風間トオル
 風間隆一…金山一彦
 新川忠志…吉満寛人
 日置啓吾…鹿賀丈史


映画 『カリートの道』

2024年10月12日 12時18分29秒 | 社会・文化・政治・経済

 

カリートの道

『カリートの道』(原題:Carlito's Way)は、1993年のアメリカ合衆国の犯罪映画。 監督はブライアン・デ・パルマ、出演はアル・パチーノとショーン・ペンなど。

ニューヨーク州最高裁判所の元判事エドウィン・トレス(英語版)の同名小説、およびその続編『それから』を原作とする。ゴールデングローブ賞2部門の候補に挙がった。

アル・パチーノ
カリート・ブリガンテ
ショーン・ペン
デイビット・クラインフェルド
ルイス・ガスマン
Pachanga
ペネロープ・アン・ミラー
ゲイル
ジョン・レグイザモ
ベニー・ブランコ
ヴィゴ・モーテンセン
Lalin
イングリッド・ロジャース
ステフィ
ジョルジ・プルセル
Saso
ジェームズ・レブホーン
Dist. Atty. Norwalk


ストーリ

元麻薬王のカリート・ブリガンテは、親友の弁護士デイヴ・クラインフェルドの尽力によって、刑期30年のところ、たった5年で刑務所から出所する。そして、クラインフェルドの紹介でディスコの経営という仕事も早々にして得ることができた。しかし、彼が5年ぶりに見た街と人々は、仁義も信義も失い変わり果てていた。麻薬の取引では見境いのない殺人が横行し、かつての仲間は金のために平然とカリートを裏切ろうとする。

さらにカリートは、ベニー・ブランコというチンピラを殺害することができず、自らの老いを悟る。そんな街と人々にカリートは絶望し、周囲の期待をよそに南国バハマでレンタカー屋を営むという夢を叶えるため、堅気の生活を送りながら貯金に精を出す。さらに、かつての恋人・ゲイルとのよりを戻し、夢へと一歩一歩近づいていく。

そんな中、クラインフェルドが「マフィアのボスの脱獄を手伝ってくれ」という依頼を切り出してきた。カリートは、かつて自分の裁判の際に弁護士として刑を軽くしてくれた恩義のため断ることができず、ゲイルの制止を振り切って頼みを承諾する。決行当日、コカイン漬けのクラインフェルドを見たカリートは、嫌な予感を覚える。そしてその予感は的中、クラインフェルドは突如として暴走し、ボスと見張り役のボスの息子を惨殺してしまう。クラインフェルドの凶行にカリートは激怒、彼にもう借りはないとしてその場を立ち去る。

しばらくしてクラインフェルドは、マフィアからボス殺しの報復として襲撃され負傷する。一方、カリートは検察に召喚され、カリートが服役している間にクラインフェルドが数々の犯罪に手を染めた大物犯罪者になっていたことや、彼が嘘の証言で自分を売ろうとしていたことを明かされる。検察は「免罪の代わりにクラインフェルドを計画殺人罪に問う証言を行う」という司法取引に応じるかどうか、翌日の昼までに決断するようにカリートに迫る。

カリートは、帰り道で突然マイアミ行きの夜行列車の切符を購入し、全ての有り金を持って今夜中にバハマへ旅立つことをゲイルに告げる。ゲイルが妊娠し、今夜旅立つという時に怒りを隠せなかったカリートは、彼女を先に駅へ行かせ、自らはクラインフェルドの病室に向かう。

クラインフェルドは、カリートが自分を殺しにきたのではと警戒し彼に銃を向けるが、カリートは言葉をかけるだけで何もしなかった。その後、今度はマフィアの殺し屋がクラインフェルドの病室にやってきた。クラインフェルドは銃で応戦しようとするが、銃の弾丸が抜かれていた。カリートの策略にまんまとはめられたクラインフェルドは、無様に射殺されてしまう。

カリートは金を持ってゲイルの待つグランド・セントラル駅に急ごうとするが、彼の前にマフィアのボスの次男ヴィニーが立ちはだかる。追撃をかわしながら駅に辿り着き、壮絶な銃撃戦の末に彼らを倒したカリートだったが、乗車する直前に自分の用心棒バチャンガとベニー・ブランコが現れ、カリートは撃たれてしまう。

今際のカリートはゲイルに金を託し、「お腹の子供と2人で街を出ろ」と言い残す。それまでの人生が走馬灯のように脳裏を駆け巡る中で、カリートは静かに息を引き取る。彼が最期に見たものは、かつて夢見たパラダイスを写し出した看板だった。

音楽
パトリック・ドイルがオリジナルのスコアを作曲し、ミュージカル・スーパーバイザーのジェリービーン・ベニテスがサウンドトラックにサルサ、メレンゲ、その他の本格的なスタイルを追加した。
サウンドトラックに収録されたジョー・コッカーの主題歌"en:You Are So Beautiful"は、ゲイルのアパートのシーンと映画のエンドクレジットで使用されている。
作品解説

原題“Carlito's Way”はフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」にちなんでつけられたが、劇中に「マイ・ウェイ」は一回も使われていない。

生い立ちから30代までのカリートを描いた『カリートの道』と40代のカリートを描いた『それから』が原作としてクレジットされているが、映画で描かれているのは主に『それから』の部分である。

『それから』をベースにしているのに映画のタイトルが『カリートの道』なのは、『それから』と原題が同じマーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』(After Hours)との混乱を避けるためである。

カリートとイタリアン・マフィアとの電車でのシーンは、予算の都合で見送られた『アンタッチャブル』のクライマックスシーンを応用している。

クライマックスの銃撃戦が行なわれるエスカレーターは、ニューヨークのグランド・セントラル駅に実在する。映画では非常に長いエスカレーターに思えるが、実際はかなり短い。これはデ・パルマの得意とする撮影テクニックであり、『アンタッチャブル』の乳母車のシーンにもその手法が使用されている。

カリートの道:作品情報|シネマトゥデイ

 
 
 

詐欺師君へ

2024年10月11日 21時38分50秒 | 社会・文化・政治・経済
青山加奈子です。前回、私がお話をした件で、貴方の結論を待っています。
貴方を私に紹介してくれた鈴木さんからも、その後、どうなった?って心配されてい
るので無視せず、返答だけは最低限、お願いしますm(__)m
私と本当に会って頂けるなら1回につき、報酬金を10万円、貴方にお支払いをしま
す。
もちろん、この交際は貴方と私の二人だけの秘密という事なので、決してご
迷惑はお掛けしません。また、紹介ですから私が冷やかしや何かの勧誘で貴方に
連絡をしている訳ではありません。本気で貴方とお会いし、抱いていただきたい
と思ってます…
内容が内容なので驚いていると思いますが、YESかNOかの返答を早急にお願いしま
す。

削除返信転送迷惑メール報告移動

このような、迷惑メールが1日100ほど、
見るのは、時間の無駄
中には、探偵社の名前。

「片木さんに、お知らせします。
奥さんが、先週の木曜日と土曜日、浮気をしていました。
その証拠写真です」

写真を見ようとクリックする。
99、900円、振り込めの強要、詐欺!
よくやる。
君たち詐欺師君たち、地獄へ落ちてね!

ブログの広告に対する課金へ方法は?

2024年10月11日 20時14分34秒 | 社会・文化・政治・経済

目次


「合理的な説明は無理?」イスラエルの“戦争”の行方は?

2024年10月11日 08時21分44秒 | 社会・文化・政治・経済

2024年10月2日 20時23分 NHK


イランのミサイル攻撃に対抗措置を行う考えを強調したネタニヤフ首相。

イスラエルの政治に詳しい専門家は、この1年、ガザ地区、そしてレバノンでの軍事行動を強めてきたイスラエルの姿勢について「イスラエルはいま“7正面”の戦争を続けていて、何かが起きればより大きな戦争になるリスクを抱えています」と話します。

ハマス、ヒズボラのトップを殺害し、レバノンへの地上侵攻にまで踏み切ったイスラエルのねらいは何なのか。この戦争はどこに向かうのか。詳しく解説します。

(ニュースウオッチ9キャスター 佐藤真莉子 / 国際部記者 勅使河原佳野)

イランのミサイル攻撃 同じ日に…
10月1日午後7時半、イスラエル軍は「180発を超える弾道ミサイルがイランからイスラエルに向けて発射された」と発表しました。
エルサレム上空(2024年10月1日)
イランは、ことし7月にハマスのハニーヤ最高幹部、9月にはヒズボラの最高指導者ナスララ師が殺害されたことへの報復措置だとしています。

同じ1日の未明、イスラエル軍が発表していたのが、レバノン南部での「限定的な地上作戦の開始」でした。

9月に入ってレバノンのヒズボラへの攻勢を強め、2006年以来、18年ぶりの“レバノン侵攻”にまで踏み切ったイスラエル。

今後、中東情勢はどうなるのか、イスラエルの政治やパレスチナ問題に詳しい防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。
防衛大学校 立山良司 名誉教授
(以下、立山教授の話。インタビューは10月1日に行いました)
なぜレバノンに地上侵攻した?
まず1つは、去年10月以来、ガザの戦いを支援するという形で、レバノンのヒズボラが毎日のようにイスラエルに攻撃を仕掛け、イスラエル軍が反撃するという攻撃の応酬が続いていますが、いっこうにそのレベルが落ちず、むしろイスラエルから見ればヒズボラの攻撃が強まっています。
そうした中で、イスラエル北部の住民は6万、7万ともいわれる住民が避難していて、避難民からはネタニヤフ政権に対する批判も強まっています。

それとあわせて、こう着状態が続いているヒズボラとの対立をなんとか打開しろという声も相当強くなってきたわけです。

また、ガザでのハマスとの戦いはかなり激しさが下がってきて、一時のような感じではありません。

今は小さな拠点に残っているハマスの戦闘員、少数の戦闘員のグループを掃討する作戦を続けている状況で、大規模な部隊を投入してハマスに戦闘を仕掛けるという状況ではないわけです。

だからこそ、ガザに展開していた地上部隊の主力を、北に向けてレバノンの国境に投入したということだと思います。
レバノン国境近くに集結したイスラエル軍(イスラエル北部 2024年9月30日)
ナスララ師殺害がターニングポイント?
イスラエルは9月中旬以降、ヒズボラに対する攻撃を強めていて、ナスララ師だけでなく相当数の幹部も殺害したことで、イスラエルとしてはヒズボラの指揮命令系統がかなり機能しなくなっているのではないかという見方をしていました。

さらに、ヒズボラが持ってるといわれているミサイルも相当破壊したということで、ヒズボラがある程度弱体化している、地上攻撃をして大きな打撃を与えるチャンスだと判断したのだと思います。
ヒズボラ最高指導者 ナスララ師(2013年)
地上侵攻は限定的なもの?
イスラエルとしては多正面で戦っているわけで、レバノンだけに軍を集中するわけにはいきません。

そうなると、地上戦も一定程度限定したものにならざるをえず、レバノン南部のヒズボラの拠点を激しく攻撃することによって、レバノン南部でのヒズボラの力を弱らせる。それ以上はイスラエルとしても望んでいないし、軍事的に難しいだろうと思います。

ヒズボラは2011年から始まったシリア内戦でずっとアサド政権側について戦っているので、戦闘員たちの実戦経験がものすごく豊富です。

そういう戦闘員がヒズボラにはいるので、地上戦になればイスラエルとしても相当激しい戦闘が展開されると考えられます。

イスラエルとしては、一定程度ヒズボラに打撃を与えてさっと引くということを想定しているのかもしれませんが、ヒズボラとの戦いが長期化する危険性がないとは言えないと思っています。
ヒズボラの戦闘員(レバノン 2023年)
アメリカの対応は?
バイデン政権そのものはこれまでの1年間でいろんな休戦、停戦工作を行ってきましたし、ついこのあいだもフランスと一緒に一時的な休戦を呼びかけました。
アメリカ バイデン大統領
しかし、ネタニヤフ首相が聞く耳を持っていない状況で、アメリカの呼びかけというのはほとんど届いてないわけです。

加えて、アメリカは1980年代にレバノンで多数の大使館員や海兵隊員をヒズボラに殺されていて、ヒズボラをテロ組織として敵対視しています。

ナスララ師が殺害されたときに、バイデン大統領は「正当な措置である」として、ある意味で称賛しました。

そうしたことを踏まえ、イスラエルとしては、ヒズボラへの攻撃を仕掛けてもアメリカは支援をしてくれると考えて攻撃に踏み切ったのだろうと思います。
ヒズボラとの戦い いつ終わる?
ヒズボラがイスラエルを攻撃し始めたのはガザを支援するためであって、これまでヒズボラはガザで停戦しないかぎりイスラエルに対する攻撃を続けると言っています。

ヒズボラとしては少なくともイスラエルへの攻撃を止める理由はないです。だから、何らかの形でイスラエルへの攻撃は続ける。

そうするとイスラエルとしてはそれが地上戦の形であれ、あるいは地上部隊を引き上げたあとでの空爆とか、そういう攻撃であれ、攻撃を続けなければいけないという状況は変わらないと思います。
イスラエル ネタニヤフ首相
ヒズボラの余力はどれぐらい?
ハマスですらいまだにロケット弾を撃ってるわけで、その程度のことは誰でもできますし、ヒズボラははるかに強く、組織的にもしっかりしています。

ヒズボラはいま、15万発のロケット弾やミサイルを持っていると言われていて、イスラエルがこれまでに何発のミサイルを破壊したのかわかりませんが、たとえ半分破壊していたとしても、まだ7万発、8万発持ってるわけです。

ナスララ師や司令官クラスが何人いなくなっても、ヒズボラが軍事的に全く手も足も出なくなるような状況を作り出すというのは不可能なのです。
イスラエル北部に着弾したロケット弾(2024年9月)
1年に及ぶ戦闘 イスラエルも苦しい?
イスラエルがいまやってることは、軍事的、経済的、社会的な合理性を考えると、全く合理的な状況ではありません。

ヒズボラとの戦争はガザが停戦しないかぎり終わりませんし、イエメンのフーシ派もどんどん撃ってきて、2000キロも離れたイエメンまで2回も空爆を行っています。

経済はどんどん悪くなり、アメリカは別としても国際的な批判も高まってます。

また、すでにイスラエルの兵士が相当数亡くなっていますし、負傷者も多いです。精神的にまいっているような兵士もかなりいるようです。

1年間の戦闘で、兵器も相当壊れたり部品がなくなったりという状況も出てきているようです。

ヒズボラだけを攻撃するような作戦ではありませんので、それだけイスラエルとしても苦しい作戦だろうと思います。
フーシ派によるミサイルの発射(イエメン 2023年11月)
イスラエルはなぜ続ける?
イスラエルとしては、やり続けているのは合理的な理由ではなくて、イスラエルのユダヤ人の社会の中での10月7日のショックというか怒りというか、あの出来事に起因している恐怖心というか、そういうものを少しでも和らげたいという意識が強いんだと思います。

私は最近、合理的に説明をしようというのは無理だと思っています。

彼らのゴールというのは、彼らの気持ちが癒やされる、彼らの恐怖心が少しでも小さくなるということで、それに政治的な思惑や入植者の運動などが絡んで「ガザに再入植しよう」みたいな声が結構あるわけです。

恐怖心やショックという意識と、右派を中心とする大イスラエル主義的な思想が一緒になって、ガザ戦争を終えられない状況があるのだと思います。
検問所を襲撃するハマスの戦闘員(2023年10月7日)
ネタニヤフ政権への反発はない?
そういう声は、イスラエル社会、ユダヤ人社会の中でむしろ減ってきてると思います。

例えば、ネタニヤフ首相が率いているリクードという政党の支持率が上がってきたり、ネタニヤフ個人の支持率も時々、世論調査によってはトップになったりしています。

イスラエルのユダヤ人としては、10月7日に受けた屈辱とか恐怖心を、戦争を続けることによって癒やしているという状態だと思います。

合理的に考えれば、これでは人質が帰ってこないでしょうとか、経済がもっと悪くなるでしょうとか、軍隊だってどんどん疲れてくるでしょうといった問題があるのですが、その一方で、自分たちの気持ちが癒やされないということがあるんです。
音楽イベントの参加者を連れ去る戦闘員
だから、ナスララ師の暗殺などのニュースにはイスラエル国民は戦争反対、賛成関係なく拍手を送るわけです。

それは留飲を下げるということ、あるいは、本当は長期的には逃れられないのですが、自分たちがこれで多少は恐怖から逃れられるという気持ちがあるのだと思います。

現地の新聞では、暗殺があるたびに支持率が上がる、上がっては下がり上がっては下がりということを繰り返していると報道されていました。
今後どうなる?紛争の拡大は?
ガザにしてもレバノンにしても停戦が成立する見込みが今のところないですから、そうなるとその7正面の戦争※、イスラエルとしては7正面の戦闘が続き、イスラエルは攻撃を受けるたびに何らかの形で反撃報復を繰り返すことになります。

ヒズボラがミサイルを何十発もテルアビブに向けて撃って、イスラエル市民に多数の死傷者が出れば大変なことになる。はるかに大きな報復攻撃をベイルートにするでしょう。

そうなると中東全体はいつも不安定で、何か起きればより大きな戦争になるのではないかというリスクを抱えたままの状態が今後も続くだろうと思います。
※ 7正面の戦い
ガザ地区、ヨルダン川西岸、レバノン、シリア、イラク、イラン、イエメンの7か所
イスラエル軍の攻撃で破壊された建物(レバノン ベイルート郊外 2024年10月)
(2024年10月1日ニュースウオッチ9で放送)

ニュースウオッチ9キャスター

佐藤 真莉子
2011年入局
福島局、社会部、国際部、アメリカ総局を経て現所属
国際部記者
勅使河原 佳野
2019年入局 松山局を経て2024年9月から現所属
中東・アフリカ地域を担当

あわせて読みたい
アメリカも警戒する「抵抗の枢軸」とは?中東揺るがす存在?

中東各地で米軍施設などに攻撃を繰り返す「抵抗の枢軸」の1つ、イエメンのフーシ派が日本企業が運航する貨物船を乗っ取りました。「抵抗の枢軸」とは?

アウシュビッツ生存者の子がパレスチナのために声をあげるわけ

両親がアウシュビッツの生き残りだという77歳のユダヤ人男性。50年以上パレスチナの人たちのために声を上げ続けています。その理由とは?

“8分に1人” 地獄に生まれる赤ちゃん

去年10 月以降、ガザ地区で生まれた赤ちゃんは2万5000人以上。“8分に1人”生まれる新たな命、母親たちの過酷な現状を取材しました。

イスラエル情報機関元トップが語る「ハマスを怪物にしたのは?」

ハマスせん滅を掲げるイスラエル。双方の犠牲者が増え続ける事態をどう収束させるのか。イスラエルの情報機関で長官を務めたアミ・アヤロン氏に話を聞いた。

ガザの現実を伝える2人「報道し続けることは私たちの義務」

死者が1万3000人を超えたパレスチナのガザ地区をめぐる軍事衝突。NHKの現地からの報道は2人のパレスチナ人スタッフによって支えられている。

イスラエルとイラン なぜ対立しているの?


ハマスを“テロリスト”と呼ばないイギリスBBC いったいなぜ?

イギリスの公共放送BBCがハマスを“テロリスト”と呼ばず、政府や市民から批判や抗議の声があがっています。いったいなぜなのか、取材しました。

「家族を返して」地上侵攻準備進めるイスラエル 人質家族は

イスラエル軍はガザ地区内にとらわれている人質は203人にのぼると発表。地上侵攻が行われたら人質はどうなってしまうのか。

100人の死に直面した日本人医師

11月中旬からガザに入った「国境なき医師団」の医師・中嶋優子さん。数々の紛争地で活動してきた中嶋さんですら限界と無力感を感じたガザの実情とは。

母を殺したハマスがどんなに憎くても 平和の道を閉ざさない 

ハマスに母を殺害された男性。母はいつも和平を訴え、「戦争が平和をもたらすことはない」と口にしていたと言います。

イスラエル人質交渉 なぜカタールが仲介?ハマスとの関係は?

ガザ地区で拘束されている人質の解放交渉を仲介していると言われるカタール。なぜ仲介役になれるのか?そもそもどんな国なのか?専門家に聞きました。

ハマスの地下トンネル内は?イスラエルどう攻撃?今後どうなる

イスラエル軍が目指すハマスの本部があるとされるガザ地区の地下トンネル。「要塞都市」のように張り巡らされた地下トンネルの内部はどのようになっているのか。イスラエル軍はどう攻撃しようとしているのか。2人の専門家に聞きました。

アメリカも警戒する「抵抗の枢軸」とは?中東揺るがす存在?

「われわれへの攻撃をやめなければ、やり返す」

アメリカのバイデン大統領がこう警告するのは、中東各地でアメリカ軍の施設などに攻撃を繰り返す「抵抗の枢軸」と呼ばれる武装組織のネットワークです。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスが衝突するなか、「抵抗の枢軸」の1つイエメンのフーシ派によって日本企業が運航していた貨物船が乗っ取られる事態まで起きています。

活動を活発化させる「抵抗の枢軸」とはいったい何なのでしょうか。

(テヘラン支局 土屋悠志 / ワシントン支局 渡辺公介 / ドバイ支局 スレイマン・アーデル)

イスラエルを囲む “抵抗の枢軸”とは

“抵抗の枢軸”とは、中東各地でイランが支援する武装組織のネットワークを指した言葉です。イラン自身も「抵抗の枢軸」という言葉を使っています。共通するのは、イスラエルやアメリカに「抵抗」するとして、対決する姿勢を示していることです。

実際、どんな組織で、どのようなメンバーで構成されているのか。公式なものはありませんが、3年前、イランがその陣容を内外に意図的に誇示した瞬間がありました。

演説するイランの精鋭部隊「革命防衛隊」の司令官(2020年)

2020年1月、アメリカとイランの対立が激化するなかで、イランの軍事精鋭部隊である革命防衛隊の司令官が演説したシーンです。

司令官の背後には、ずらりと旗が並べられていました。イランと関係が深いとされる各組織の旗です。

その中には、今、イスラエルと戦っている「ハマス」や、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」、イエメンの反政府勢力「フーシ派」、「カタイブ・ヒズボラ」などのイラクやシリアの民兵組織などが含まれていました。

“抵抗の枢軸”を支援するイラン

「抵抗の枢軸」に対しては、イランの革命防衛隊の中でも、国外での工作活動などを担う「コッズ部隊」が支援にあたっています。支援内容は兵器や資金・資材の提供、それに軍事顧問による訓練など、多岐にわたるとされます。

革命防衛隊の軍事演習(2023年8月公開)

各組織がそれぞれの国や地域で生まれた歴史的な経緯はさまざま。また、イランと各組織との関係性や意思決定への関与の程度も幅があるとみられます。

アメリカ国務省は2021年の報告書で「イランは年間1億ドルをハマスなどのパレスチナのテロ組織に提供している」と指摘しています。10月、取材に応じた革命防衛隊の元司令官も、長年のイランの支援がハマスの兵器開発能力を向上させたと誇示しました。

革命防衛隊の元司令官 キャナニモガダム氏

キャナニモガダム氏
「ガザ地区は閉じられているが、イランはサイバー空間などを通じた技術移転や財政支援によって彼らがミサイルや無人機を自分たちで作れるように後押ししてきた。われわれの支援が間違いなく戦争の質に影響を与えている」

最大の脅威 レバノンの「ヒズボラ」とは

「抵抗の枢軸」の中でも、イスラエルが最大の脅威として警戒するのが、隣国レバノンを拠点とするヒズボラです。

すでにハマスに呼応してイスラエル北部への砲撃などを繰り返し、攻撃の応酬が起きています。最高指導者のナスララ師は11月3日の演説で「戦線は複数に拡大した」と明言しました。

レバノンのシーア派組織「ヒズボラ」の最高指導者ナスララ師

ヒズボラは1982年、レバノンに侵攻したイスラエルに抵抗する民兵組織として発足。国内では政党としても活動して国政に強い影響力を持つほか、戦力は政府の正規軍をしのぐと言われています。

2006年にはイスラエル兵を拉致して、大規模な戦闘に発展。レバノン側でおよそ1200人、イスラエル側でおよそ160人が死亡したとされています。

葬儀に参列するヒズボラの戦闘員(レバノン 2023年10月)

イスラエル国家安全保障研究所によると、ヒズボラの戦闘員は推定5万人から10万人。

テルアビブなどイスラエルの主要都市を攻撃できる射程300キロの短距離弾道ミサイルをはじめ、ミサイルやロケット弾あわせて15万発を保有すると指摘しています。攻撃や偵察用に最大400キロ飛行可能な無人機も保有するとされます。

また、隣国シリアの内戦にも介入し、イギリスのシンクタンク「国際戦略研究所」は、今も7000人から8000人の戦闘員が活動すると指摘。このため、ヒズボラはイスラエルに対し、南のハマスと連携しながら、北からたびたび攻撃を加えるとともに、北東のシリアからもにらみをきかせているのです。

そのヒズボラはイスラエルと全面的な戦闘に入るのか、専門家は次のように指摘します。

ブルッキングス研究所 オハンロン上級研究員
「可能性はまだ5割以下だと思う。なぜなら、ヒズボラはイスラエルが一度に複数の問題を処理する能力があることも理解しているし、アメリカもその手助けをするかもしれないからだ。
さらに、ヒズボラは、社会福祉組織として、また政府の一部として、レバノン国内の権力基盤を維持することに関心がある」

イエメンの「フーシ派」とは イスラエルの戦線拡大か

一方、イスラエルにとって新たな脅威も生まれています。アラビア半島の南端、イエメンの反政府勢力「フーシ派」です。

10月19日、アメリカ国防総省は、紅海北部に展開していたアメリカ海軍のミサイル駆逐艦「カーニー」が巡航ミサイル3発と無人機を撃ち落としたと発表。フーシ派が発射したもので、攻撃目標はイスラエルだったとの見方を示しました。

フーシ派が公開した イスラエルに向けて発射されたミサイル(イエメン 2023年11月)

さらに、11月8日にはイエメンの沖合で、アメリカ軍の無人偵察機「MQ9」をフーシ派が撃墜。翌日9日にはイスラエル南部の都市エイラートに向けてフーシ派が発射した弾道ミサイルを撃墜したと、イスラエル軍が発表しました。

いずれも、フーシ派が自ら行った攻撃だと認めています。その幹部が10月31日、NHKのオンライン取材に応じました。

イエメンの反政府勢力「フーシ派」 ナセルディン・アメル報道官

アメル報道官
「攻撃は始まったばかりだ。今後、これまでとは比べものにならない攻撃を仕掛ける。私たちは4年も5年も前からイスラエルへの攻撃を想定して準備を進めてきた」

国際戦略研究所によると、フーシ派はおよそ2万人の戦闘員を抱え、イランの協力で軍備を増強してきたといいます。

9月、フーシ派が首都サヌアで行った軍事パレードでは、射程が最大1950キロとされ、イラン製の中距離弾道ミサイルと同じタイプとみられるミサイルが公開されました。

イエメンからイスラエルの国境までは、最も近いところでおよそ1600キロ。国際戦略研究所は、このミサイルがイスラエルの一部を射程におさめる可能性を指摘しています。

これまでフーシ派は、イエメンの内戦で敵対する政権側を支援するサウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦などに対し、ミサイルや無人機で石油施設や軍の基地を攻撃することはありました。しかし今、その矛先がイスラエルにも向けられているのです。

また、イエメンはスエズ運河へとつながる紅海の入り口に位置し、この一帯は国際的に重要な航路となっています。フーシ派は、紅海などを航行するイスラエルの船舶も攻撃対象だと警告しています。国際的な物流にも影響を及ぼす可能性も出ています。

アメリカが警戒強める イラクとシリアの民兵組織

イラクやシリアにはイランと関係の深い民兵組織があり、「抵抗の枢軸」として活発な動きを見せています。

「カタイブ・ヒズボラ」などがその1つです。両国には、アメリカ軍も駐留しているため、たびたび攻撃対象となっているのです。

アメリカによる 民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」への空爆(イラク 2019年)

イラクでは2014年、過激派組織IS=イスラミックステートが台頭し、広い地域を支配下に置きました。混乱の中、敗走を繰り返す政府軍に代わりISと対峙たいじしたのが、イランの精鋭部隊「革命防衛隊」の支援を受けた民兵組織でした。

民兵組織はISを弱体化させた後、いわば「イランの代理勢力」として影響力を保持。

今、その民兵による攻撃が相次ぐ状況について、専門家は、イランがこの地域のアメリカの影響力の排除を狙ったものだとの見方を示しています。

オハンロン上級研究員
「アメリカ国防総省は一連の攻撃を深刻に受け止めていると思う。イランの支援を受けた勢力がイランの兵器を使ってアメリカ軍の基地を攻撃することは、イラク戦争が激化したころから、長年、行われてきた。
イランはこの10年間、シリアからアメリカ軍を追い出そうとしてきており、その延長とみることができる」

11月5日、イラクを電撃訪問したアメリカのブリンケン国務長官は「イランと連携する武装勢力からの攻撃や脅迫は、決して容認できない」と述べ、牽制けんせい

訪問したイラクで会見する アメリカ ブリンケン国務長官(2023年11月)

10月17日以降、シリアとイラクに駐留するアメリカ軍の部隊に対して繰り返される無人機やロケット弾による攻撃。

国防総省は11月9日までに、あわせて46回の攻撃を受け、56人がけがをしたと明らかにしました。

さらにアメリカ軍も報復のため、11月12日までに3回、イランの革命防衛隊などが使用するシリア東部施設を攻撃しましたが、その後も民兵による攻撃は歯止めがかかりません。

アメリカによる 武器倉庫とされる建物への空爆(2023年11月)

ニュースサイト、アクシオスによると、アメリカ軍の兵士はことし10月現在でおよそ4万5000人が中東各国に駐留しています。

こうした駐留米軍への攻撃で大きな被害が出れば、中東全域で緊張が高まる事態になりかねません。

異例の発表 警戒強めるアメリカ軍 相次ぐ空母派遣

11月6日、アメリカ軍が異例の発表を行いました。

通常、その動向を公表することがない原子力潜水艦が、中東地域に到着したと、わざわざ明らかにしたのです。

スエズ運河を航行するアメリカの原子力潜水艦(2023年11月)

その狙いは、原子力潜水艦の存在を誇示することで、「抵抗の枢軸」の動きをけん制することにあるとみられています。

これだけではありません。

アメリカ軍は、イスラエルとハマスの衝突のあと、相次いで中東地域やその周辺に空母を派遣。空母「ジェラルド・フォード」をイスラエルに近い地中海東部に、さらに、空母「アイゼンハワー」をイスラエルの南側にある紅海などを管轄する部隊に配置することを指示しました。

アメリカが地中海に派遣した空母「アイゼンハワー」

さらに、迎撃ミサイルシステム「THAAD」の配備と地対空ミサイルシステム「パトリオット」の中東への追加配備も指示。有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、イラクとシリア、クウェート、ヨルダン、サウジアラビア、そしてUAE=アラブ首長国連邦に配備されると報じています。

アメリカ軍としては防空システムによって中東地域での守りを固めつつ、原子力潜水艦や空母を展開させて、「抵抗の枢軸」の動きににらみをきかせた形です。

「抵抗の枢軸」はイランの言いなり?

「抵抗の枢軸」の中心であるイランについてみれば、その軍事力は中東有数です。

国際戦略研究所によると総兵力は61万人。ミサイルと無人機の開発に最近は力を入れていて、こうした武器が各地の武装勢力に渡っていると指摘されています。

革命防衛隊(テヘラン 2012年)

ただ、イラン政府はイスラエルを強く非難する一方で、10月7日のハマスによる大規模攻撃には「関わっていない」としています。また、各武装組織についても「それぞれの判断で行動している」と主張しています。

アメリカも10月7日の攻撃がイランの指示や調整の上で行われたという見方は示していません。しかし、武装組織のアメリカ軍への攻撃については「イランが積極的に支援しているものもある」としてイランの関与を指摘しています。

今後、イランが直接、イスラエルとの戦闘に加わることはありえるのでしょうか。

イランの外交アナリスト ゼイダバディ氏

ゼイダバディ氏
「イスラエルに戦いを挑むことはアメリカやNATO=北大西洋条約機構との破滅的な戦いを意味し、イランにはそんな戦争の用意はない。
ガザ地区での民間人の犠牲がイスラエルに停戦を求める国際的な圧力になり、停戦が実現すれば、ハマスにとっては『勝利』を意味する。イランはそれを期待している」

ただ、思わぬ計算違いはいつでも起こる可能性があり、中東各地に紛争が拡大する可能性はくすぶっています。

ガザ地区をめぐる状況とともに、中東地域全体の動きに世界の目が注がれています。

 

 


大東亜戦争・太平洋戦争・第二次世界大戦…呼び方色々、何が違うの?

2024年10月11日 07時35分20秒 | 社会・文化・政治・経済

戦争の呼び方をめぐっては、第二次世界大戦・大東亜戦争・太平洋戦争など、様々な名称が使われています。それぞれの名称の違いとは?


太平洋戦争
終戦
第二次世界大戦
社会
今さら聞けない

戦前は、閣議で決定
「大東亜戦争」VS「太平洋戦争」
太平洋戦争(大東亜戦争)は、第二次世界大戦の一部
 戦争の呼び方をめぐっては、第二次世界大戦・大東亜戦争・太平洋戦争など、様々な名称が使われています。

呼び名によって、戦争の意味も変わってくると言います。それぞれの名称の違いとは?


戦前は、閣議で決定
 戦前、戦争の名称は政府が閣議で決めていました。

1931年9月の柳条湖事件に始まる戦争は、「満州事変」と呼ばれました。

1937年7月の盧溝橋に始まる日中全面戦争は、近衛内閣によって初めは「北支事変」、その後「支那事変」と改称されました。1941年12月に始まった日米戦争は、内閣情報局によって「大東亜戦争」と名づけられました。


戦前は戦争の名称は、政府が閣議で決めていた。

一九三一年九月の柳条湖事件に始まる戦争は、一般に「満州事変」と呼ばれた。

三七年七月の盧溝橋に始まる日中全面戦争は、近衛内閣によって初めは「北支事変」、ついで「支那事変」と改称された。

四一年十二月に始まった日米戦争は、内閣情報局によって「大東亜戦争」と名づけられた。

「大東亜戦争」VS「太平洋戦争」


 「大東亜戦争」については、敗戦直後、「太平洋戦争」を使う勢力との間で対立がありました。

結局、連合国軍総司令部(GHQ)が「大東亜戦争」の使用を禁止したことで、「太平洋戦争」が主流になりました。

背景には「大東亜戦争」の呼び名に対して、侵略戦争を肯定するという意味合いが強いという意見が根強かったことがあります。


10月13日は「国際防災デー」

2024年10月10日 13時35分30秒 | 社会・文化・政治・経済

▼試練を乗り越え、暗雲を突き抜け、誰もが予想だにしない、わが人生の<まさか!>の逆転劇を自身の手で痛快に実現するのである。

▼眼前の一人は一人ではない。

その人に背景には家族があり、友人がいる。

後継の若人もいる。

▼10月13日は「国際防災デー」

地震や豪雨などの甚大な自然災害が絶えない。

近年、防災の基本として発生時の被害の最小化(減災)と迅速な回復が掲げられている。

その意味で、劣悪な非難生活などに起因する「災害関連死」うぃどう防ぐかは、まさに喫緊の課題と言える。


国の政策に民意が反映されていない

2024年10月10日 12時17分04秒 | 社会・文化・政治・経済

日本における政治不信は、ある種の社会的な「諦念」「諦め」になっています。

今では、世論調査で支持政党を尋ねても、最も多いのは「特に支持している政党はない」という回答で<本当の第一党は無党派層>と言われることがあります。

しかし、こうした状況は、今に初まったことではありません。

内閣府が継続的に行っている「社会意識に関する世論調査」では、国の政策に民意が反映されているかを問う項目があります。

昭和の時代から最近まで一貫して、「反映されていない」という回答が多数を占めています。

一般の多くの国民は、政治について施策の詳細なで知ることは少なく、メディアなどの情報を通して、政策の良し悪しを判断していると考えられます。

近年は、政治的な決定や選択において、「イメージ(印象)」が強く影響を及ぼすようにんっており、政治家もイメージ重視です。

「イメージ」が偏重され、政治が動きかねない状況です。

効果や合理性よりも、可視化された「わかりやすい民意」に安直に身を委ねる政治の在り方です。

誤った認識に基づく民意に対しては、政治は安直に身を委ねることなく、責任をもって対話を重ねることが求められます。

合意に至らない場合は説明を試みたり、決断したりすることも必要です。

真正面から「政治教育をどうするか」ということも、もっと議論すべきだと思います。

日本大学 西田 亮介 教授


「ますます"人間の劣化"が深まっている…」

2024年10月08日 23時52分44秒 | 社会・文化・政治・経済

そう断言する宗教学者が解説する悪世を生き抜くための教えいつも関心の中心が自分にある"凡夫"のための教え

123456

 
戦争に貧困、格差……世界をとりまく深刻な状況は解消することがない。宗教学者の阿満利麿さんは「紀元前後に登場する『阿弥陀仏の物語』では『五濁』といって、人間とその世界の悲惨を5とおりに分けて説明している。現代もこの五濁を免れていないどころか、ますます五濁を深めている、という感慨をもたざるをえない」という――。

※本稿は、阿満利麿『「歎異抄」入門』(河出新書)の一部を再編集したものです。

鎌倉大仏
 
※写真はイメージです
 

私たちの直面する苦しみや不安も、その原因が明らかにできれば、苦でなくなり、不安も解消される。だが、その原因を尋ねてゆくと、苦しみをもたらしている原因は、決して一つではなく、多くの原因と結果が複雑に絡み合っているのだ。そうなると、私たちの力では、苦しみをもたらす因果の関係のすべてを見通せる智慧を身につけることなど、思いも及ばないことになる。こうして、解決できない苦しみや、不安をもったまま生きるのが、人生ということになる。

ここで、「阿弥陀仏の物語」が登場する。

歴史的にいえば、紀元前後のころといわれる。仏教そのものは、紀元前5世紀ころ、ゴータマ・シッダールタによってインドで生まれた。彼は35歳のときに、「生老病死」の「苦」を脱するための智慧を身につけて、「ブッダ」(「悟った人」・「仏」・「釈尊」)になったとされる。その後、「ブッダ」の教えは、智慧を獲得するための精緻な修行の体系とともに、各地に広がってゆくが、こうした修行は、限られた人々のものになり、多くの人々が取り残されてゆく。

そこで、紀元前後くらいから紀元3世紀ころにかけて、万人の救済を目的とする、新しい仏教がインドで生まれてくる。そこでは、多くの「大きな物語」(「経典」)が生まれるが、その一つが「阿弥陀仏の物語」なのである。経典名は、漢訳されて『無量寿経』という。「阿弥陀仏の物語」は、釈尊の弟子、阿難が、阿弥陀仏という仏が生まれた経緯を釈尊から聞いた、という形式をとっている。いうまでもないが、ここに登場する釈尊も、阿難も、歴史上に実在した人物ではなく、物語のなかの登場人物である。

はじめに、私が興味をもつのは、物語の聞き手が阿難だという点にある。阿難は、歴史的には、釈尊の従弟といわれている。阿難は、釈尊の55歳ころに侍者になり、釈尊が亡くなるまで、身の回りの世話をしてきた。そのため、釈尊の教えの数多くを聞くことができたので、のちには、「多聞第一」とよばれるようになる。

だが、阿難は、釈尊の存命中には、悟ることができなかった。伝えられるところによれば、阿難は美男であり、世話好きであり、恩愛の情が大変深く、相手に同情しすぎて、状況を客観的に見ることができない人物であったという。そういうことも、彼が早々に悟ることができなかった理由であるかもしれない。彼が悟ったのは、釈尊亡きあと、兄弟弟子たちの導きのおかげであった。

思うに、恩愛の情に深く、ときに人情に流されることが多かった阿難こそは、私たち凡夫の代表なのではないか。その阿難がこの物語の聞き手として起用されているということは、この「阿弥陀仏の物語」が、私たち「凡夫」のための教えであることを示して余りあるように思われる。ちなみに、「凡夫」とは、なにごとにつけても、いつも関心の中心が自分にあり、他者への関心も自分のため、というような人間のことである。


ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代、その本当の恐ろしさとは

2024年10月08日 23時46分51秒 | 社会・文化・政治・経済
 
 
SNSを駆使して過激発言を連発するトランプ大統領がなぜ大衆を引きつけるのか。ヒトラーについて現代人は学ぶ必要がある 
 
前東京都知事の舛添要一氏が『ヒトラーの正体』 (小学館新書)を出版した。
自身の経験も織り交ぜながら、明快な文章で独裁者ヒトラーの実像に迫る入門書だ。
長年にわたりヒトラーを研究し続けてきた舛添要一氏に、なぜヒトラーについて知らなければならないのか語ってもらった。(清談社 村田孔明)

ヒトラー研究は
政治学者の原点だった

 ヒトラーについて「独裁者」「ユダヤ人の大虐殺」「親衛隊」など、断片的なワードを知っている人は多い。しかし全体像を把握できている人は意外に少ないのではないか。実は舛添氏も、かつてはそうだったという。

「初めてヒトラーに興味を持ったのは1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』。オーストリアの退役軍人の家族がナチスから逃れるために、徒歩で山を越えてスイスに亡命するストーリーです。主演ジュリー・アンドリュースの美声と豊かなアルプスの自然に魅せられ、ヨーロッパへ留学するきっかけにもなりました。多感な高校生のときに見たこともあり、ヒトラーが憎くてしょうがなかったですね」(舛添氏、以下同)

 

ところが30歳手前の頃、留学先のミュンヘンで下宿屋のおじさんから「ヒトラーの時代が一番よかった」と告げられた。

「下宿はアメリカの研究者が多く、日本人は私だけでした。70歳ぐらいのおやじは『ヤパーナー(日本人)、ちょっと来い』と、私をお茶に誘ってくれる。日本とドイツは同じ枢軸国だったので気に入ってくれたみたいで、古いアルバムを開いて、『俺の人生の中で、ヒトラーの時代が一番よかった』とうれしそうに話をしてくれたんです。ミュンヘン郊外にはダッハウ収容所跡があり、見学するたびに、あまりにも悲惨なユダヤ人虐殺の歴史を教えてくれました。それなのに下宿に戻れば、おやじはヒトラーがよかったという。このギャップがずっと頭から離れませんでした」

 それから50年間近くヒトラーの研究を続けてきた舛添氏だが、なぜ今になって、専門書ではなく入門書というかたちで発表したのだろうか。

「子どもが大学生と高校生になりました。父として、子どもたちが社会に出る前に、どうしてもヒトラーのことを語り聞かせたかった。民主主義の対極は独裁です。それなのに民主主義から独裁者が生まれてしまった。この歴史を知らなければ、民主主義は守れません。現代はトランプ大統領の誕生、ブレグジット、移民排斥を主張する極右政党の躍進など、世界中でポピュリズムが広がっている。ヒトラーが誕生した時代に似てきています」


「立憲主義って何?」

2024年10月08日 23時24分09秒 | 社会・文化・政治・経済

「立憲主義」って何でしょう?

 ひと言でいえば、権力の行使を憲法で縛る、コントロールすることです。

 権力行使の主体は、国家です。つまり、立憲主義とは、国家権力を憲法で縛るシステムのことです。

 日本国憲法は、「立憲主義」をとっています。

 では、なぜ「立憲主義」がとられているのでしょう。

それは、一人ひとりが個人として、人として尊重されるという「個人の尊重」をまもるためです。個人の基本的人権が保障され、個人の権利自由が侵害されないために、です。

 侵害するって、いったい誰が侵害するというのでしょう。

これは、国家、権力なのです。

 ここはピンとこないかも知れませんね。

国家は、いろいろと国民のために、何かをしてくれるものではないの?

国、行政には、もっといろいろと「やってほしい」。

 そのとおり、普段は、国、行政は、いろいろとやってくれるありがたい存在です。

でも、強い力、国民を強制できる力をもつ、時に怖い存在です。

 税金を取られたくなくても、国が決めた税金は、強制的に取られてしまいますし、犯罪を犯したとされれば、刑務所に強制的に入れられますし、時に命までとられます。

 権力には、強い力があるから、好き勝手に行使されてしまうとたまったものではないですよね。

憲法は、国民の権利自由を保障するために、国家に対して、「国民の○○の自由を侵害してはならない」という書き方を基本にしています。

 「立憲主義」は、なぜ必要なのでしょう?

 国家、権力によって、国家のためだとして、個人の基本的人権が侵害された歴史がありました。権力によって、一人ひとりのことよりも国家、団体、公が重視されて、個人の権利自由が侵害されてきた過去がありました。

特に、戦争というのは、究極的に、個人よりも国家を優先させ、個人を、一人ひとりの人ではなく、国家のための「道具」としてみなしがちです。

 ここで、民主主義国家、国民から選挙で、選ばれた人たちなら、権力の行使も適正に行われて、暴走することはないのでは?と思われるかも知れません。

 いやいや、民主主義国家であっても、憲法の縛りがなければ、間違った方向に行くこともありうるのです。逆に、国民から選ばれたんだと、謙虚さを忘れて、自分がやることは正しいのだと強気になってしまうかも知れない分、かえってやっかいです。

権力を持つものは、自らが誤りであることに気がつきづらいものです。正しいと思っている。自信があります。

正しいと思っているので、反対する人たちの声に耳を傾けることなく、「妨害する人たち」として排除したくなるでしょう。

多数者から選ばれた人たちからなるために、少数者の人のことがわからないこともあるのです。

そして、権力を行使するのは神様ではなく人なのですから、間違ってしまうこともあります。

 間違っても、大切な基本的人権の保障を侵害しないように、国家が守るべき約束を定めて、約束を破れば、国民がコントロールできるようにしているのが「憲法」です。

 つまり、 国家に権力を与えた国民が、権力行使を適正に行われるようにするため、国家をコントロールためのものが「憲法」なのです。

国家は、憲法に違反するような権力行使、すなわち個人の基本的人権を侵害することはできないという縛りをうけています。

 逆にいえば、国民は、「憲法」を持っているのだから、国家が権力を濫用している場合、濫用しそうな場合に、しっかり国家を「憲法」をもとに、コントロールできるし、しなければならない、ということになるのですね。

「立憲主義」というのは、個人を尊重するために、一人ひとりを人として大切にするための、よくできたシステムだなあと思います。

 

 


時の権力の暴走を防ぐため

2024年10月08日 23時21分42秒 | 社会・文化・政治・経済

請願

第185回国会 請願の要旨

新件番号 217 件名 日本国憲法の中心的理念の一つである第九十六条を堅持することに関する請願
要旨  日本国憲法はおびただしい犠牲を強いた戦争への反省から、平和と民主主義の願いを込めて作られた。取り分け憲法第九十六条は、立憲主義を定めた重要な条項である。これらの理念は、「侵すことのできない永久の権利として」(憲法第九十七条)定められたものである。特に日本国憲法は、時の権力の暴走を防ぐため、国民が行政に対して約束させたもので、他の法律のように簡単に変えることができないような形態に定められている。しかし自民党や維新の会は、憲法改正の発議を衆参各議院の総議員の三分の二以上の賛成(憲法第九十六条)から二分の一に下げようと言っている。これは日本国憲法の中心理念の一つを破壊しようとするものである。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、日本国憲法の中心的理念の一つである憲法第九十六条を堅持すること。

権力は暴走

2024年10月08日 22時44分18秒 | 社会・文化・政治・経済

日刊建設工業新聞 所論緒論2009年 6月10日

「民主主義の暴走」をくい止めよ

 

京都大学藤井 聡

 

日本の現政権の中心政党の名称は「民主党」であるが、この言葉の意味を考えたことのある読者はどれくらいおられるのだろうか。

そもそも「党」というのは、英語で言うところのパーティ、つまり、人々の集団である。だから、「民主」ということを政治思想の根幹に置く「人々の集団」、これが「民主党」という名称の意味である。

「民主」とは言うまでもなく、「民主主義」の「民主」である.

そして民主主義とは、「人民」に「主権あり」と考える主義である。つまり、「主権在民」を旨とする政治思想、それが、「民主」と言う言葉の意味である。

したがって,民主,あるいは,民主主義という言葉を理解するためには、結局は「主権」とは何か、を理解しなければならない。

ところが今日,この「主権」という言葉が,十分に一般の国民に理解されているようには到底思えない.もしもそれが十全に理解されているのなら,「主権在民」なり「地域主権」なりといった言葉が,軽々しく使われることはなかろうと思われるからだ.

さてこの「主権」という言葉であるが,これは英語の「サブリン・パワー」なる言葉を訳したものであるが,これを直訳すると「最高の権力」と言う意味である。「最高の権力」というからには、それに勝る者は何もない、ということである.だから人民に主権ありと考える民主主義とは、「政治的に人民に勝るものは、何もない、人民にこそが最高の権力者なのだ」と考える政治思想である。

そう考えると、誠にあっぱれ、現在日本の政治は、ほぼ完璧な「民主主義」だということが分かる。

かつては、「政治家たるもの、世論の人気を横目で気にしながらも、一般大衆が普段考えないような大所高所からものごとを考えるべし」、という常識があり,政治家は実際にその様に振る舞い、かつ、そんな政治家が人気を博していた。しかし、その様な常識を持つ人々は減少の一途を辿り、多くの政治家において「人民の人気」を得る事それ自体を目的とする傾向が相当な水準にまで高まってしまった。今や,大衆に直接訴えかけるテレビのニュースキャスターの方が、政治家よりも「実質的な権力」を握っていると言っても過言ではない。

国家官僚にも、かつては,全ての諸外国と同様に日本においても強大な国家権力である「行政権」が付与されていた.しかし、国家官僚に対する世論からのバッシングは激しく、「政治主導」のスローガンの下、「人民の人気取り」に奔走する政治家によって官僚達の自由な裁量が縮退され続けている.

つまり、日本においては、「立法府」も「行政府」も、「人民」の軍門にほぼ下ったのである。

そしてそんな民主主義の「暴走」を止められるのは,国内ならぬ国外の「アメリカ」くらいしかいない,という何とも情けない国になり下がってしまった(普天間問題が鳩山首相の退陣直接的原因となったと言う事実は,実はそれを暗示しているのだ).

すなわち,我々が,戦後半世紀以上に渡って「民主主義」なるものがなにがしら「善きもの」と信じて疑わずに、無邪気にも無責任にも軽々しく「ミンシュ,ミンシュ」と口にし続けてきたことのツケが回ってきたのである。

しかし,民主主義そのものが「善きもの」であったり「悪しきもの」であったりするはずがない。

あるとするなら,それは「良い民主主義」と「悪い民主主義」とがあるだけなのだ。「善き人民」が織りなす民主主義のみが善き政治をもたらし、「善からぬ人民」は愚かな悪しき政治をしか実現できない.

だからこそわれわれは,「民主」そのものを善きものとする愚を避け,「善き庶民であり善き国民たろう」とする努力をこそ重ねなければならない.その努力無くして,ここまで野放しにされ続けてきた「民主主義の暴走」を,自分自身の力でくい止めることなど,未来永劫できるはずもないのである.