インクルーシブ教育

2024年06月18日 11時08分31秒 | いつものぐり

インクルーシブとは「包括的」を意味する言葉です。

多様性の尊重が重視される昨今、全ての人が互いに認め合う社会の形成には「インクルーシブ」が欠かせないでしょう。本記事では、ビジネスや福祉の現場などで使用されるインクルーシブの意味と、「インクルーシブ教育」の内容を紹介します。

インクルーシブ教育とは、特別な支援の必要な子どもと、そうでない子どもが平等に学びの機会を得られる教育システムです。障がいの有無にかかわらず、子どもたちの多様性を尊重しながら共生社会の実現を目指します。
文部科学省では、共生社会の形成に向けて、インクルーシブ教育のシステム構築を推進しています。今後の教育では、インクルーシブな環境での学習が、スタンダードになると考えられるでしょう。

インクルーシブ教育での取り組み

インクルーシブ教育では、すべてのこどもたちが平等に学ぶために、合理的配慮を行います。合理的配慮とは、障がいのある子どもが、ほかの子どもと平等に教育を受ける権利を確保するために、状況に応じた適切な調整を行う取り組みです。具体的には、以下のような取り組みが必要です。
  • 子どもをサポートする教員やスタッフの配置
  • 適切な施設や設備の整備
  • 子どもの状況に応じた指導計画の立案、授業の実施
両者が同じ教室で授業を受けるだけでは、インクルーシブ教育の実現とはいえません。同じ授業を受けて、平等に学びを得られるように個性に合わせたサポートが求められます。

インクルーシブ教育のメリット

インクルーシブ教育が実現すれば、直接指導を行う教員や、障がいのない子どもたちにとってもメリットがあります。

教員への影響

教員が多様な子どもたちと過ごす環境のメリットは、教育スキルの向上や意識の変化です。障がいのある子どもへの接し方や支援の方法を学び、現場で実践を重ねれば、新たな学校教育のあり方を考えられるでしょう。

障がいのある子どもへの影響

インクルーシブ教育が実現すれば、今まで以上に学びの機会が増え、成長や自立への良い影響が期待できます。サポートを得ながら授業を受けやすくなるだけではなく、子ども同士のコミュニケーションの取り方、学校での過ごし方も学べます。
支援の必要な子ども同士での交流だけでなく、多様な友人や教師と接することで心身の成長を促進させるきっかけにもなるでしょう。インクルーシブ教育を受ければ、卒業後も積極的に社会参画に臨めると考えられます。

周囲の子どもたちへの影響

障がいのある子どもと学ぶ機会があれば、障がいに対する偏見をなくし、共生社会への理解を育てやすくなるメリットがあります。小中学生のうちから多様性を学ぶことで、思いやりの心を育めるでしょう。また、学校以外の場面でも、障がいのある人への接し方や考え方を活かせると考えられます。

インクルーシブ教育のデメリット

インクルーシブ教育にはデメリットもあり、すべての教育現場ですぐ導入できるシステムではありません。メリットとともにデメリットを知り、インクルーシブ教育の課題や現状を把握しましょう。

教員への影響

インクルーシブ教育では、支援が必要な子どもへの配慮する度合いや、範囲を考えなければなりません。過剰な配慮は、授業のペースが遅延する、教員の負担が増加するなどの問題が発生します。
学校施設のバリアフリー化が進まず、専門的な知識をもつ教員や支援員が不足していれば、教員の負担を軽減できません。インクルーシブ教育を取り入れる際には、現場の状況を把握し、適切な環境を整える必要があります。

障がいのある子どもへの影響

障がいのある子どもにとっては、2つの懸念点があります。1つ目は、子どもたちの間で、かかわり方や認め合いが進むかです。
障がいの有無にかかわらず仲よくできる子どももいれば、かかわり方に戸惑う子どももいるでしょう。なかには距離を置こうとする子どもがいて、孤立してしまう可能性も否定できません。
2つ目は、障がいのない子どもたちとともに学ぶ環境が、ストレスとなりかねない点です。周囲の子どもたちと比較して、授業が満足に理解できない、友人との関係を築けないなど、疎外感や劣等感を抱く可能性があります。
多様性を認め合うシステムのインクルーシブ教育が、反対に子どもの成長機会を摘み取ってしまわないよう配慮しなければなりません。

周囲の子どもたちへの影響

障がいのある子どもを含めたインクルーシブ教育では、授業のペースに遅れが発生する可能性もあります。周囲の子どもたちにマイナスな影響が発生しないためにも、バランスを考慮しなければなりません。生徒間でも障がいのある子へのサポートや配慮を実施できるよう、共通認識や対応方法の指導も行えると良いでしょう。

インクルーシブ教育の実現に向けた課題

インクルーシブ教育の課題は、合理的配慮をするための整備が十分ではない点です。2つの具体的な課題を紹介します。

適切な人員の配置や教育

インクルーシブ教育を実現するためには、知識をもつ専門性の高いスタッフを配置する必要があります。教育現場では以下のようなサポートが行われます。
  • 感情のコントロールが難しい子どもへの声かけ、コミュニケーション
  • 活動範囲が限定された子どもへのサポート
  • 服薬の管理
また、現在教育現場にいる人員が、「インクルーシブ」に対する正しい知識をもっているとは限りません。新たな人員の確保だけではなく、今いる教員およびスタッフがインクルーシブ教育を学ぶ機会を設けることも重要です。

設備の整備

障がいには個人差があるため、状況に応じた適切な整備をする必要があります。インクルーシブ教育に必要な設備の一例は、以下のとおりです。
  • 手足の動作が不自由な子どもも使える教材
  • 移動が困難なこどものためのバリアフリー化(エレベーター、トイレ、スロープなど)
  • 災害発生時に必要な施設や備品
教育施設の整備には、現実的な問題として大きなコストがかかります。インクルーシブ教育を実現するためには、都道府県や市区町村の規模で財源の確保を進めていく必要もあります。
 

まとめ

インクルーシブは「包括的」を意味し、インクルーシブ教育は障がいの有無に関係なく、平等に学べるシステムを意味する言葉です。
多様性を理解し、認め合う社会をつくるためには、インクルーシブな環境の整備が欠かせません。私たち一人一人が、年齢や性別、国籍、宗教、障がいなどの特性に関係なく、活躍でき認め合える、インクルーシブな思考を持つ意識が重要です。