2021/11/12(金) 18:42配信
文春オンライン
「人として最低なことをする人だなと思っています。反省しているように思えないので重い罰を与えてほしいです。(刑務所に入って欲しいかと聞かれて)できる限り長く行ってほしいです」
【画像】“睡眠薬で強制性交”リクルート子会社元社員の丸田被告
2021年11月8日、東京地裁第713法廷。そう語気を強めた女性の話をうつむきながら微動だにせず聞いているのは、リクルートコミュニケーションズ(現在はリクルートに吸収合併)の元社員・丸田憲司朗被告(31)だ。
丸田被告は2020年11月から2021年10月までの間に、準強制性交等、住居侵入、準強姦、準強制わいせつの罪で計10回の逮捕・起訴を受けている。事の発端は30代の知人女性に睡眠薬を飲ませ自宅に連れ込み、わいせつな行為をしたとして昨年11月12日に逮捕されたことだった。
目を覚ますと舌が真っ青に…
「丸田被告は2020年6月27日の夜に知人宅のホームパーティーで知り合った30代の女性に対し睡眠薬を飲ませたうえで、自宅に連れ込みわいせつな行為に及びました。翌日に女性が丸田被告の自宅で目を覚ました際、舌が真っ青になっており、体にも違和感を覚えたために被害届を提出。その後、女性の体内から睡眠薬の成分が検出され、丸田被告の逮捕につながりました」(全国紙社会部記者)
押収されたスマートフォンからは40人近くの女性がこん睡状態で映った動画や画像が見つかり、ほかにも被害者が多数いることが明らかになった。勾留中に余罪の捜査が進み、2020年12月に「OB訪問アプリ」を通じて知り合った就職活動中の女子学生に対して「資料作成を手伝う」と誘い出し暴行した件で再逮捕。
さらに2021年1月にも、別の就職活動中の女子学生に対して同様の犯行をした疑いが強まり3度目の逮捕。その後も10代から30代の女性に乱暴したとして2021年10月5日までに計10回逮捕されている。
「丸田被告の家宅捜索で、自宅から犯行に使用されたと思われる10種類の睡眠薬計700錠以上と、錠剤を砕くためのすり鉢などが押収されました。睡眠薬は自ら心療内科に通って『眠れない』と相談して処方されたもののようです。
押収されたスマートフォンから見つかった動画や画像の中には被害者の身分証明書も写されていました。中には性的な暴行を加えている女性の顔の横に身分証明書を置いて行為に及びながら撮影したと思われるものもありました」(捜査関係者)
次々と明らかになった事件からは、丸田被告の常習性と異常性が窺える。初公判は8月31日に東京地裁で行われた。その時の様子を前出の全国紙記者はこう語る。
「初公判では計3名の女性に対する加害行為について明らかにされましたが、丸田被告はぼそぼそと小声で話し、裁判長から『聞こえない』『もっと大きな声で』と叱責される場面もありました。丸田被告が取り調べに対して『睡眠薬を服用させるための実験を行っていた。薬理効果や、持続時間をある程度把握して使っていた』と説明していたことも明かされ、常習性や計画性があったことが法廷でも指摘されました」
9月7日にも性的暴行の疑いで9回目の逮捕となり、予定されていた第2回公判は延期された。あらためて11月8日に行われた第2回公判では、証言のために出廷した被害者の個人情報の秘匿が決定されていることが裁判長から確認されると丸田被告は小さく「はい」と答え、「Eさんとします」と言われると「Eさん…E…あ、はい」としどろもどろになりながら回答した。
「認否は留保ですか?」「はい」
リクルート本社 ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔
丸田被告は2018年9月20日に知人宅で行われたホームパーティーでEさんと知り合い、連絡先を交換。同年10月5日の夜にEさんと2人で食事をし、睡眠作用のある薬物を摂取させた。その薬理作用により抗拒不能状態(身体的または心理的に抵抗することが著しく困難な状態)にしたうえで被告人の自宅で性行為に及び、さらにその様子を撮影していたと起訴状には書かれている。
これらの事実を認めるかを問われた丸田被告は「一連のことについては記憶が定かではないので留保とさせていただきたいです。一方で被害者に取り返しのつかないことをし、なんてことをしてしまったのかと大変申し訳ない気持ちです」と語り、再度「認否は留保ですか?」と裁判長に確認されると「はい」と答えた。
この日の公判では、Eさんが傍聴席と被告人席から姿が見えないよう遮蔽措置が取られたうえで証人として出廷。丸田被告の恐るべき手口が明らかになった。
Eさんから見た丸田被告の第一印象は「気さくな感じで自分の仕事の話をしていて、仕事が好きなのかなと思いました。リクルートに勤めていて『じゃらん』を経験しているからおいしいお店を知っているという話をしていました」というものだった。
2018年9月20日に赤坂で行われたホームパーティーでは4、5人がグループになって会話をし、連絡先も交換していた。Eさんは丸田被告とも連絡先の交換はしたが「好意はなくいち友人くらいの好意で、タイプでもありませんでした。被告人の顔はネットで調べて思い出しました」と当時を振り返った。
その後、Eさんは丸田被告から2人での食事に誘われた。Eさんは1軒目で帰る予定だったが、会話の途中で「牡蠣が好き」という話をしたところ丸田被告から「牡蠣のおいしいお店を知っているから」と2軒目に誘われた。終電までまだ少し時間があり「サッと食べて帰れば大丈夫だよ」という丸田被告の言葉を信じ、2人はオイスターバーに移動した。
「間に合わなかったね」
しかし料理はなかなか出てこず、Eさんは終電に間に合わないと丸田被告を促したが「もう間に合わないんじゃない?」と急ぐ様子を見せなかったという。その後、店を出て駅に向かう際も丸田被告はゆっくり歩いていたと当時の様子を語った。
「終電があるため早歩きか小走りで行きたかったのですが、被告人がゆっくり歩いていたので、できませんでした。2軒ともお会計は被告人だったので置いていくのは失礼かなと思い、置いていけませんでした。被告人は『もう間に合わないんじゃない?』と言ってきたので『急げば間に合うと思うから急いでほしい』とお願いしましたが応じてくれず、不誠実だと思いました」
そしてEさんが改札を通ろうとした時にちょうど終電が行ってしまった。丸田被告は「間に合わなかったね」と言い、朝まで飲むことになったという。わざと終電に間に合わせなかったような丸田被告の言動に不信感を持ったが、3軒目でEさんは丸田被告に睡眠薬を飲まされ、意識を失った。その状況をEさんが法廷で明らかにした。
「(酔いの程度は)ほろ酔いで、いつもより気分が高揚しているくらいでした。眠気や足元がおぼつかないことはありませんでした。3軒目のお店で被告人から『けっこう酔ってるじゃん』『酔い止めの薬だよ』と言われ錠剤を2錠渡されました。普段なら疑うと思いますが、酔っていたこともあって被告人の言葉を信じて飲んでしまいました」
渡されたのは銀色のアルミが裏にはってあるシートで、中には白くて丸い錠剤が2つ入っていた。Eさんはそれまで飲酒して飲食店で眠ってしまうようなことはなかったというが「急に目の前が暗くなって記憶がなくなっていた」という。しかし覚えている場面が2つあると語った。
「被告人はタイプではありません」
「1つはお店を出るよと言われて起こされた場面。もう1つは外を歩いていて地面が近づいてきて、そこで途切れました。(地面が近づいてくるというのは)自分が前に倒れそうになったときの目線の感じ」
その後の記憶はなく、Eさんは翌日の午前中に丸田被告の自宅で目を覚ました。丸田被告はEさんの隣で寝ていたという。Eさんがすぐに服装を確認すると着衣に乱れはなかったが、シーツには経血による大きいしみができていた。
「服装の乱れがなかったということもあり、性行為があったと思いたくありませんでした。(自分から)性行為をもちかけたことや承諾したことはありません。誤解を与える様な言動もありません。そういった意図もありません。被告人はタイプではありません」(Eさんの証言)
それ以降、Eさんは丸田被告と連絡をとることも会うこともなかったが、警察の連絡を受けて事件を思い出したという。
「被告人が別の事件で逮捕されて、余罪を調べていく中で私が被害者と判明したと警察から電話がきました。『あの時、やっぱりそうだったんだな』と思いました。これまでの飲み会で突然記憶がなくなることはなかったので不思議に思っていました」(Eさんの証言)
Eさんの証言を聞く間、丸田被告は表情を変えずに天井を見上げたり、うつむいたりしていた。Eさんの事件について「記憶が定かではない」「留保とさせていただきたい」と語る丸田被告。裁判は今後も続いていく予定だが、丸田被告が心からの反省を示す日はくるのだろうか。
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