2020.5.1 10:48 sankeibiz
東京23区の保健所が新型コロナウイルスの電話相談業務に忙殺されている実態が30日、明らかになった。他にもPCR検査や濃厚接触者の追跡調査、施設療養者の健康観察などで過重な負担がかかるが、数十人の限られた職員で対応に追われる区も目立つ。負担軽減に向け、退職した保健師の活用や民間委託などの取り組みが求められる。
PCR検査用の検体の確認作業をする葛飾区職員。保健所業務が逼迫し、応援に入っている=4月30日午後、東京都葛飾区(宮崎瑞穂撮影)
PCR検査用の検体の確認作業をする葛飾区職員。保健所業務が逼迫し、応援に入っている=4月30日午後、東京都葛飾区(宮崎瑞穂撮影)
感染者数が299人(29日時点)と都内で2番目に多い新宿区は48人の職員で対応にあたる。歌舞伎町などの繁華街を抱え、3月下旬ごろには「夜の街」クラスター(感染者集団)の追跡調査にも追われた。
区の担当者は「医療に関わる部分は医師や保健師ら専門職でないと難しいが、記録を取る事務職とチームを組むなどして、少しでも負担軽減を図っている」と話す。退職者の臨時雇用のほか、民間の派遣会社経由でも保健師の補充を試みているが、他の自治体との奪い合いの側面もある。
1日に200~250件の電話相談を受ける港区は都からの応援などを含め約100人態勢で臨むが、1日に対応できるのは30~40人に限られる。練馬区の担当者は「全庁的な応援でかなり増えているが、いっぱいいっぱいで計算している余裕がない」と嘆く。
相次ぐ院内感染も保健所の業務を圧迫する。医療従事者や患者ら約200人の感染者を出した永寿総合病院(台東区)では、濃厚接触者らの検査が1千件超に膨らみ、保健所に重い負担がのしかかった。この影響で患者からの電話相談が殺到したという。
江戸川区が車に乗ったままPCR検査を行う「ドライブスルー方式」を都内で初導入するなど、地元医師会と連携して検査業務を分散化する動きも進む。
浜松医科大の尾島俊之教授(公衆衛生学)は「特に感染者の多い大都市圏では保健所の負担が大きく、職員も疲弊している。健康観察にITを活用している地域もあり、民間委託を含め業務分担の方法を模索していくしかない」と指摘。「不要な相談電話を控えるなど、一般の人の協力も欠かせない」としている。