レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

観光立国 アイスランド!?

2014-06-30 05:00:00 | 日記
先週の週末、日本のふたつのテレビ局がアイスランドに関する番組を放映したと聞いています。日本のテレビの外国ロケ好きは前から承知していますが、この頃はまた輪をかけて盛んになっているのでは?という気がします。

それでもそういった番組を通して、日本の皆さんがアイスランドに興味を持ってくれるのなら、それはやはり嬉しいことですね、現地組としては。
「アイスランドに住んでいます」
「えっ?どこそれ?」
「北の小島です」
「ああ、ラグビーの盛んな」
「それはアイルランド」
こういうのはサミシイですから...(^-^;

さて、アイスランドで2008年の経済恐慌時よりググッと前に出てきた産業が観光業です。アイスランド通貨が非常に弱まったことが、国際観光的には「安い旅行」を提供することになり、多くの外国人ツーリストを呼び込むことになりました。

旅行者の数は毎年増え続けており、今年は年間百万人を越える見通しとなっています。人口に比して三倍以上の観光客が来る、ということになります。
短い期間のうちにこれだけ増えてくると、どうしても対応しきれない部分や、軋轢を生む部分が出てきてしまいます。

例えば今議論になっているのは、ゲイシル(間欠泉)その他の人気スポットで、見学料を取るかどうか、という問題です。

ゲイシルなどにも実は土地の所有者がおり、維持管理に掛かりがするので見学料を取り始めたのです。ところがそれらの人気スポットは「国民の財産」であるから、勝手に料金を徴収するのはまかりならん、と国からクレームがついているのです。

私が思うには維持管理のために料金を徴収したいというのはもっともな話しだと思います。ただそんな行き当たりばったりな工作ではなくて、所有者、国とあと観光業者が話し合ってきちんとした解決を見出すべきだと思います。

もうひとつの実際的な問題はホテルの急増です。あちこちの普通の住宅やアパートがホテルまたは観光用賃貸アパート化してきています。これによりもともと少なかった賃貸アパートが相当に不足しており、住むところがない、という人たちが増えてきているのです。

先週のニュースのインタビューでは、全く違った観点から観光客に対する不満が聞かれました。語った主はグビュズルンという女性でSamtok Idnadarinsサムタク・イズナザリンスの会長さんです。これは日本でいうところの商工会議所の様なものです。

グビュズルンさんの不満は押し寄せる観光客が十分なお金を落として行ってくれない、ということから始まりました。「豪華な客船で来る観光客はほとんど陸ではお金を使わない。欧州からフェリーで来る連中は自分の車、食料を持ち込んでくる。団体客は自前のガイドを連れてくる。おまけに観光客は付加価値税を払わないでいい。これは可笑しいではないか?」

最後の付加価値税は25,5%もあるのですが、これはいわゆるTax Freeの用紙をもらえれば最後に換金することができます。

息巻くグビュズルンさんは「でも観光客がひとつ1.290クローネもするケーキを食べさせられているのはどう思うか?」とレポーターに訊かれ、続けました。「美味しければいいじゃない?」

さすがにこのインタビューにはアイスランドの一般の人たちからかなり辛辣な批判を受けていました。「観光客が自前の食料を持ってくるのは、ここでの食費が高いからではないのか?」「アイスランド人が外国へ行ったら同じように倹約するのではないか?」「なんというぶったくり精神だ!」等々。

さて、私自身この観光立国化の経緯の中で不満があります。まず第一にレイキャビクのカフェやレストランの値段。明らかに観光客用の値段設定が常識化してきています。ケーキひとつ1.290クローネ?ワタシがこの間食べたアイスクリームは1.890クローネもしましたよ。美味しかったけどアイスの値段じゃないだろ!

ブルーラグーンの入場料もひとり5.400クローネもします。これも観光客用設定。おかげでアイスランド人の一家四人が気軽にお出かけの域ではなくなりました。これテーマパークではなくてスパですからね。

こうなった上はもう「住民割り引き」を作ってもらうしかない。免許証やクレジットカードで住民であることを示せば全て半額。これくらいやってくれなければ庶民はもう生活できないのだ!

こういう実態を日本のテレビは紹介してくれたでしょうか?

ワタシのもうひとつの不満は、この中でひとり儲けしている観光業界です。観光客が来るということには色々な形でアイスランドの全住民が関わっているといってもいいすぎではないと考えます。ですから観光業界も儲けている以上、きちんとした形で利益の社会への還元を考えるべきです。今のところそれが全然見えません。

前にも書いたことありますが、アイスランド人はどうしても目前の利益に飛びつく傾向があります。今そこにあるものをできるだけ搔き入れようとします。五年後、十年後を考えて計画を建てないと、かならずしっぺ返しを喰らうと思いますけどねえ。

日本の皆さん、テレビでどう紹介されているか知りませんが、アイスランドには問題が沢山あります。ゆめゆめ「天国に一番近い国」などとはお考えになられませぬよう...


*都合によりしばらくの間、週に一回のブログ更新になります。m(_ _)m


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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コメント (11)
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