レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

女性牧師闘争「前」史

2015-03-08 05:00:00 | 日記
何ヶ月か前にテレビ東京から取材協力の依頼があり、少しだけお手伝いしたことがあります。「未来世紀ジパング」という番組で男女の同権を扱いたいから、という趣旨でした。

アイスランドは男女同権度では世界のトップに六年間座り続けています。製作会社の方と電話でお話しした際に「女性に優しい職場」「女性に優しい社会」という表現を何度も使っていましたが、「そういうのが女性蔑視なんだよ」と言おうか言うまいか考えているうちに終わってしまいました。

でもそのようなテーマあるいは視点でアイスランドを扱ってくれることは嬉しく思いますし、日本ではそのまま同じようにはいかないとしても、良い意味での参考にはなるだろうと思います。

そこで、というわけではないのですが、今回はアイスランドの国民教会での「ジェンダー・イクオリティ」というか、「女性躍進」についてご紹介してみたいと思います。「女性躍進」といってももっぱら牧師職に関しての話しです。

日本でキリスト教会の司祭というとどうしてもカトリック教会の神父さんのイメージが強いでしょう。当然男性ですね。これは私の思うには圧倒的にテレビの影響です。テレビドラマで教会が出てくると、まず九割方はカトリックで神父さんが登場します。

多分テレビ的に神父さんは視覚性が強い(軍服のように衣装が決まっている)のと、そのしきたり習慣などが話しのネタ?になりやすいからではないかと想像します。

神父さんは皆男性です。これはキリストの十二使徒が皆男性であったことにも依るようですが、教会の生成期から徐々にそのような「仕組み」が形成されてきました。

プロテスタントの教会が生まれてからも、決して女性の牧師さんは当たり前のように登場してきたわけではありません。聖書の中に「婦人たちは、教会では黙っていなさい。婦人たちには語ることが許されていません」(コリントの信徒への手紙Ⅰ14章)という言葉があり、長い間その文字通りに受け取られてきた経緯があります。

現代の多くのプロテスタント教会では、聖書の言葉を無批判に文字通り受け取ることはしません。聖書に「載っている」言葉も、時代的あるいは文化的な制約の下にあり、そのような制約を考慮に入れて検証をしなければ、本当の「聖書の言葉」は分からない、というのがプロテスタント教会のメイン・ストリームです。

女性に関する先の言葉でいえば、使徒パウロがそのような言葉をしたためた紀元一世紀頃のギリシア世界での女性の社会的地位の現実から離れては、この言葉の真意は理解できないということになります。

もちろん、そのような考え方をせずに聖書に「載っている」言葉をそのまま文字通り受け取る教派もあります。(私自身はそのような「文字通り」の信仰はあり得ない、と思っていますが、ここは神学議論の場ではありませんので深入りしません)

それほどガリガリの保守的な教派でなくとも、女性の牧師を認めないという考えが強い教会もあります。例えば私の教会と同じルーテル派でも、お隣りのフィンランドではその傾向が強いようです。一応オフィシャルには女性牧師も認められていますが、個々の牧師さんや集会(全体としての教会に対しての個別の教会、例えば渋谷教会のような意味での教会のことです)には「断固認めない」という向きもあるのだそうです。

「だから私が訪問説教や奉仕をする場合には、事前にその教会の牧師や会衆の意見を確かめないといけないの」と知り合いのフィンランド人女性牧師さんが話してくれたことがあります。そういうのも教会の現実の一面です。




英国国教会初の女性主教リビーさん(左)と夫の司祭ジョージさん


別の一面では着実に事態は改善(私の視点からでは、という意味ですが)しています。1993年にしぶしぶ女性司祭(英国国教会での牧師のこと)を認めた英国国教会が、五百年の歴史で初めて女性主教(司祭の中でも一格上の職務)を任命したのはつい最近、一月末のことでした。ニュースでご覧になった方もあるかも。リビー・レーンさんという五十前の婦人です。

さて、社会一般での女性の諸々の権利というものは、それぞれにかなりの権利闘争を経て勝ち取られてきました。婦人参政権闘争などは特に万国共通の出来事ですよね。

教会の中で女性が牧師職に辿り着くのも、同じような経緯が必要なようです。少なくともここのアイスランドの国民教会ではそうでした。

って、アイスランドの内容に入る前にスペースを使い切ってしまいました。「アイスランド国民教会 女性牧師闘争史」は次回に持ち越しです。あしからず。m(_ _)m 


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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