峠おやじの「たわごと」

峠、自転車、キャンピングカー、野菜、園芸、時事ネタなどをぼやいてます。

志賀直哉旧居、尾道

2015年10月05日 | 旅行
次に志賀直哉の旧居です。中年のご婦人が管理人をされてました。
お客によって色々パターンを変えた解説や声かけをされていて、文学記念室と同じように話し好きの人のようです。



志賀直哉が尾道へ来た理由からお話しされ、「清兵衛」の話から、「暗夜行路」尾道の部分を読み上げ、旧宅から見た尾道水道の夕景が見事に描写されているとのことでした。文学のこみちにあった石碑にもありました。



『六時になると上の千光寺で刻の鐘をつく。ごーんとなると 直ぐゴーンと反響が一つ、又一つ、又一つ、それが遠くから帰ってくる。其頃から昼間は向島の山と山との間に一寸顔を見せている百貫島の燈台が光り出す。それはピカリと光って又消える。造船所の銅を溶かしたような火が水に映り出す。(暗夜行路より)』

とにかく風景描写にかけては右に出る者がないほどの文章力だと漱石や龍之介に言わしめるものがあったそうです。



志賀直哉、唯一の長編「暗夜行路」
物語の設定は山崎豊子の「華麗なる一族」のように、父となさぬ仲である主人公に出生の秘密(祖父と母の子)があったことです。こういう血の呪いは推理小説などでお馴染みになりすぎて、今では驚きもしません。しかし、20歳頃に読むと、やはり衝撃でした。また、それ以上に風景描写にやられました。舞台装置やBGMが物語になってしまう。それだけ文章がビジュアルなのでしょう。



「暗夜行路」のラストは反対に大山から見た夜明けの風景描写です。

『中の海の彼方から海へ突出した連山の頂きが色づくと、美保の関の白い灯台も陽を受け、はっきりと浮び出した。間もなく、中の海の大根島にも陽が当たり、それが(赤魚覃)の伏せたように平たく、大きく見えた。村々の電燈は消え、その代わりに白い烟が所々に見え始めた。然し麓の村は未だ山の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた。謙作は不図、今見ている景色に、自分のいるこの大山がはっきりと影を映している事に気がついた。影の輪郭が中の海から陸へ上がって来ると、米子の町が急に明るく見えだしたので初めて気付いたが、それは停止する事なく、恰度地引網のように手繰られて来た。地を嘗めて過ぎる雲の影にも似ていた。中国一の高山で、輪郭に張切った強い線を持つこの山の影を、その儘、平地に眺められるのを希有の事とし、それから謙作は或る感動を受けた。』



こちらは夜明けなのでもっと出色です。私だって漂泊の人ですから、よくわかります(^^ゞ
こういう心象旅というか、インナートリップのようでいて、リアルな風景描写はとてもいいですね。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
matsubaraさん、羨ましいです。 (tougeoyaji)
2015-10-08 19:01:28
奈良はかなりの頻度で訪れてますが、
志賀直哉の話題は一度も出たことがありませんから、全く知りませんでした。
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30年くらい前に行きましたので (matsubara)
2015-10-08 18:31:25
忘れかかっていますが、モダンで
すてきな家でした。
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matsubaraさん、 (tougeoyaji)
2015-10-06 18:15:17
奈良の旧宅は尾道で解説されているときに初めて知りました。
大きなお家だそうですね。
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