ちょっとだけ大きな町の、とっても大きなお屋敷にマリーというシャムネコが住んできました。でも、マリーの飼い主は、本当は猫なんて好きではありません。
「この家にも、何か生き物が欲しいわね。インテリアに合わせると…そう猫、シャムネコがいいわね」
飼い主が、マリーを飼い始めたのは、そんな理由からでした。
マリーは、小さいときから大きなお家で、豪華なお食事をして過ごしていました。そして、マリーのためにあつらえた豪華な猫ベッドで1日の大半を過ごしていました。
マリーにとっては、当たり前の生活でしたが、ぜんぜん楽しくありませんでしたし、幸せを感じたこともありませんでした。
マリーは成長すると、外の世界に興味を持つようになりました。人間は、家の中を閉め切ったつもりでも、そこは猫。わずかな隙間をみつけて外に出て行っては、何事もなかったかのように、家に帰ってくるようになりました。
外に出るようになると、地域で暮らす猫たちともお話をするようになりました。
「へぇー、君、あの大きな家に住んでるんだ。すごいなぁ」
みんな口々にこんなことをいいましたが、マリーにとっては地域で暮らしている猫たちのほうが、ずっとすごいと思っていました。
そんなある日、マリーはこの地域のナンバー2の猫・虎次郎に出会いました。虎次郎は、その名の通り、きれいな虎模様の猫。とっても体が大きいのですが、とってもやさしくてこの辺りの猫たちにも信頼されています。
虎次郎は、ボス猫のフーを助けて、猫たちがちゃんと縄張りを守っているか、見回りをしている最中でした。このため、虎次郎は、マリーに出会ったときに、警戒心たっぷりで尋ねました。
「お前、この辺りでは見かけないな。どこの猫だ?」
マリーは、今まで見たどの猫よりも体の大きい虎次郎を見てびっくり。恐る恐る蚊の鳴くような声で答えました。
「あの坂を上がったところにある家に住んでいます。ちょっと家を抜け出してきました」
虎次郎は、その様子を見て、今度はやさしく言いました。
「それなら縄張りも必要ないから、好きなようにしていていいよ。だけど、縄張りを荒らしに来たと思う猫もいるだろうから、俺からもみんなによくいっておくよ。それに、人間の中には、猫に石を投げたりするヤツもいるから気をつけろよ」
「はい、では、もう帰ります」
「そうか、せっかくの散歩をジャマしてしまったようだな。お詫びに家まで送ろう」
虎次郎は、マリーの前に立って歩き始めました。
マリーは、ちょっとどきどきしながら虎次郎の後に従い、家まで送ってもらいました。
虎次郎はマリーを送る道すがら、外に出るときの注意―どこから・どこまでがどういう猫の縄張りなのか、いじわるな人間が出没するのはどこか―などを、詳しく優しく教えました。
「君は、この地域のことを知らなすぎるな。これからも家からでるんだったら、しばらくの間、俺と一緒に縄張りの見回りをしながら、町のことを覚えないか」
虎次郎は、別れ際にマリーにいいました。
「はい、よろしくお願いします」
マリーは、ちょっと照れながら答えました。
実は、マリーは虎次郎の誠実な対応にすっかり魅せられてしまい、好きになっていました。
(つづく。 今回のお話は全3回です)
「この家にも、何か生き物が欲しいわね。インテリアに合わせると…そう猫、シャムネコがいいわね」
飼い主が、マリーを飼い始めたのは、そんな理由からでした。
マリーは、小さいときから大きなお家で、豪華なお食事をして過ごしていました。そして、マリーのためにあつらえた豪華な猫ベッドで1日の大半を過ごしていました。
マリーにとっては、当たり前の生活でしたが、ぜんぜん楽しくありませんでしたし、幸せを感じたこともありませんでした。
マリーは成長すると、外の世界に興味を持つようになりました。人間は、家の中を閉め切ったつもりでも、そこは猫。わずかな隙間をみつけて外に出て行っては、何事もなかったかのように、家に帰ってくるようになりました。
外に出るようになると、地域で暮らす猫たちともお話をするようになりました。
「へぇー、君、あの大きな家に住んでるんだ。すごいなぁ」
みんな口々にこんなことをいいましたが、マリーにとっては地域で暮らしている猫たちのほうが、ずっとすごいと思っていました。
そんなある日、マリーはこの地域のナンバー2の猫・虎次郎に出会いました。虎次郎は、その名の通り、きれいな虎模様の猫。とっても体が大きいのですが、とってもやさしくてこの辺りの猫たちにも信頼されています。
虎次郎は、ボス猫のフーを助けて、猫たちがちゃんと縄張りを守っているか、見回りをしている最中でした。このため、虎次郎は、マリーに出会ったときに、警戒心たっぷりで尋ねました。
「お前、この辺りでは見かけないな。どこの猫だ?」
マリーは、今まで見たどの猫よりも体の大きい虎次郎を見てびっくり。恐る恐る蚊の鳴くような声で答えました。
「あの坂を上がったところにある家に住んでいます。ちょっと家を抜け出してきました」
虎次郎は、その様子を見て、今度はやさしく言いました。
「それなら縄張りも必要ないから、好きなようにしていていいよ。だけど、縄張りを荒らしに来たと思う猫もいるだろうから、俺からもみんなによくいっておくよ。それに、人間の中には、猫に石を投げたりするヤツもいるから気をつけろよ」
「はい、では、もう帰ります」
「そうか、せっかくの散歩をジャマしてしまったようだな。お詫びに家まで送ろう」
虎次郎は、マリーの前に立って歩き始めました。
マリーは、ちょっとどきどきしながら虎次郎の後に従い、家まで送ってもらいました。
虎次郎はマリーを送る道すがら、外に出るときの注意―どこから・どこまでがどういう猫の縄張りなのか、いじわるな人間が出没するのはどこか―などを、詳しく優しく教えました。
「君は、この地域のことを知らなすぎるな。これからも家からでるんだったら、しばらくの間、俺と一緒に縄張りの見回りをしながら、町のことを覚えないか」
虎次郎は、別れ際にマリーにいいました。
「はい、よろしくお願いします」
マリーは、ちょっと照れながら答えました。
実は、マリーは虎次郎の誠実な対応にすっかり魅せられてしまい、好きになっていました。
(つづく。 今回のお話は全3回です)