愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

虎次郎とマリー3

2006年08月17日 | ネコの寓話
 翌日、虎次郎はマリーに会うといいました。
 「縄張りの点検は早く起きて済ませたから、もういいよ。今日は、ちょっと案内したいところがあるんだ」
 虎次郎はマリーを連れて川原に行きました。
 すると、タビと約束したとおり、豪華な食事が容易されていました。
 見たこともないキャットフードやおいしそうなお魚などなど。
 その豪華さには、頼んだ虎次郎もびっくりでしたが、平静を装っていいました。
 「君は、きっといつも豪華な食事をしていると思ったから、今日は特別に豪華にしたんだけどどうかな?」
 しかし、マリーは、その食事を見て、悲しそうな顔で涙を流しながらいいました。
 「これまでも、豪華な食事や大きなお屋敷で、私の気を引こうとした猫たちがいましたが、私はそんなものを望んだことはありません。私は、虎次郎さんと町を歩いているだけで幸せなんです。無理をしてもらったのはわかるけど、なんだかとっても悲しくなりました」
 マリーは、そういうとサッと走り去ってしまいました。
 虎次郎は、慌てて後を追いましたが、マリーはすでに家の中に入ってしまいました。
 虎次郎は、家の周りを鳴きながらうろうろしましたが、マリーは出てきません。
 マリーは、だれも信じられなり、猫ベッドで丸くなっていました。
 すると、目の前にタビが現れました。びっくりするマリーを目で制しながら、タビがいいました。
 「虎次郎は、ちょっと勘違いをしただけなんだよ。でも、それは君に好かれたいと思ったからさ。君のことを好きな気持は、どんな猫にも負けないと思うよ」
 タビは、そういうとサッと走り去って、どこかに姿を消してしまいました。
 マリーは、しばらくの間、タビがいた場所をじっと見つめていましたが、決心したように立ち上がると、外に走り去っていきました。
 数ヵ月後、マリーは3匹の子猫を出産しました。
 父親はもちろん、虎次郎です。
 川原に身を横たえながら、幸せそうに子どもたちを自分のシッポで遊ばせています。マリーは、あの日、飛び出してから二度と家には戻りませんでした。
 しばらくすると、虎次郎がどこかの魚屋から盗んできたさんまを子どもたちに与えました。その様子を虎次郎とマリーは、暖かな目で見つめています。
 マリーは、大きなお屋敷と豪華な食事は失いましたが、もっと大事なものを手に入れたようです。
 そんな、親子をタビが土手の上から、やさしく微笑みながら見つめていました。

作者・たっちーから:たまに無理をしてちょっと豪華に…ならいいのでしょうが、相手が何を望んでいるかを確認しないまま、勝手な思い込みで、無理をして取り繕って…を繰り返してしまうと、検討違いな不満が募っていきます。ありのままの自分を出せないのは、自分に自信がないから。ちょっとどんくさいかったりグチっぽいかったり…でも、この世の中でたったひとりだけの自分。かけがえのない自分。その自分を愛してくれるパートナーは、またかけがえのない存在です。
コメント (6)
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