2020NHK朝ドラ「エール」では、女優柴咲コウが双浦環=三浦環を演じている。
(古山音役の二階堂ふみ&双浦環役の柴咲コウ)
(双浦環役の柴咲コウ)
服部龍太郎「”夜話”日本のメロディ」に、三浦環についての次のようなエピソードが載っていた。
「・・・ピアノを教えている21歳の滝廉太郎が、16.7歳の柴田環に愛情を寄せて、プロポーズしたというのである。滝も柴田もいずれおとらぬ早熟の天才であったから、全然否定するわけにはいかないが、はたしてそんなことがあり得ただろうか。プロポーズされた環は”少し考えさせてください”と、確答をさけたが、”あの時ぐらい困ったことはありませんでした”と後になって告白したというから、話はやっかいになってくる。
柴田環が後年の三浦環であることはいうまでもないが、この人が目につきやすい女性だったことは、少女時代も中年になってからも変わりはない。
音楽学校に通いだしたころの環さんは、勇敢にも自転車に乗って通学した。上野の田を牛の背に乗って通う美術学校の先生もいた時代である。
山田耕作(エールでは志村けんが演じる”小山田耕作”)は、自伝の中でこう書いている。「そのころ、文明開化の尖端であった自転車を、しかも妙齢の美女、環さんが走らせるのだから評判にならない筈はない。しかし、私たちにとっては、それは悪戯の目標でしかなかった。
ある日、自転車に乗った環さんに行き合った。”それっ!”と私が目配せをするまでもない。とっさに美校と音楽の連合軍は、腕を組んで自転車の行く手を遮ってしまった。・・・三浦さんは、とうとう操縦の自由を失って精養軒のわきの浅い溝へ自転車もろとも落ち込んでしまった。・・・」