東京で2度の開催となる五輪まで、2年を切りました。
しかし、今夏の猛暑はこの時期に開催して大丈夫なのかを投げかけています。
■夏の開催は「アスリートが最高の状態でパフォーマンス」できる?
東京2020大会の日程について、「立候補ファイル 第1巻」(東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会)では、次のように記載されています。
2020年東京大会の理想的な日程
東京での2020年オリンピック競技大会は7月24日(金曜日)の開会式に続いて、7月25日(土曜日)から8月9日(日曜日)までの16日間で開催し、閉会式は8月9日(日曜日)に予定する。また、パラリンピック競技大会は8月25日(火曜日)から9月6日(日曜日)までの開催を予定する。
この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。また夏季休暇に該当するため、公共交通機関や道路が混雑せず、ボランティアや子供たちなど多くの人々が参加しやすい。さらに、この時期は日本全国で伝統的な祭が多く開催される時期であることから、祝祭ムードが漂っている。また、重要な点として、この開催期間は他の大規模な国際競技大会とのスケジュールと重複しておらず、東京においても大会開催に影響を及ぼすような大規模イベントの開催を予定していない。
「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と書いていることに、違和感を持つのは私だけではないはずです。
それは、前回の五輪が10月に開催されたことを知っているからです。
■なぜ1964年大会は10月だったのか
東京五輪1964年大会(以下「64年大会」)は、10月に開催されました。素朴な疑問ですが、なぜ夏の開催ではなく10月だったのでしょうか。
当時の報告書に導きの糸がありました。
「第18回オリンピック競技大会公式報告書」(オリンピック東京大会組織委員会編)には次のような記載があります。
大会の会期については,5月上旬〜中旬の初夏案,7月下旬から8月上旬にかけての盛夏の時期,10月後半の秋のシーズンなど,さまざまな案があったが,組織委員会は,第57次IOC総会(ローマ)に,5月23日から6月7日までの16日間を提案した.提案の理由は,
a 盛夏の時期は,比較的長期にわたって晴天が期待できるが,気温,湿度ともにきわめて高く,選手にとって最も条件が悪いうえに,多数の観衆を入れる室内競技場のことを考えると,最も不適当という結論に達した.
(「第18回オリンピック競技大会公式報告書」44ページ)
盛夏の時期は「不適当」とされ、選択肢から除外されたことがわかります。
その後の変遷はありますが、5月開催は欧州や米国などから「シーズンが早すぎる」「学生選手にとって学業の妨げになる」などの理由から反対意見がありました。
「会期を約1ヵ月遅らせることができるか同課について検討」することになりますが、結果として「ちょうど梅雨の真最中で,晴天が続く可能性はほとんど考えられず,湿度も高くて,我が国で最も不快な時期」として却下となります。
最終的に組織委員会としては「必ずしも最良の時期とはいえないが,次善の策として秋のシーズン」を選んだことによって、「64年大会」は10月開催が決まったのです。
■東京都の報告書にも
「第18回オリンピック競技大会東京都報告書」(東京都編)という記録を見ると、ここにも時期についての記述があります。
当該部分を引用します。
本都で競技をするためには,気象状況からみて7月上旬から8月上旬または10月中旬から11月上旬にかけて行なうのが適当である。
しかし,7月中旬から8月上旬は気温が高過ぎる嫌があり,競技の実施,運営に最適ではない。従って10月中旬から11月上旬の方がより好ましい。
(「第18回オリンピック競技大会東京都報告書」19ページ)
ここでも、夏の時期は「競技の実施,運営に最適ではない」という結論に至っています。それに続く文章では、気温や湿度、雨量や風速などについて、1928年〜57年の30年間の統計を用いた記述が続いています。
■東京の気温はどう変化しているのか
「64年大会」当時でも、気温や湿度が高いことから、盛夏の時期は「不適当」と判断していましたが、現在は「適当」だと言えるエビデンスはあるのでしょうか。
これは、気象庁の「ヒートアイランド監視報告2016」に掲載されている表です。
この100年間で、平均気温は3.2℃、最高気温は1.7℃、最低気温は4.4℃上昇していることがわかります。
さらに、「東洋経済」が「東京の夏は着実に『暑く・長く』なっている 過去140年分の日別平均気温をビジュアル化」したものが、百聞は一見にしかずです。
もちろん、2020年の夏がどういう気候になるかはわかりません。しかし、エビデンスをみれば限りなく猛暑を避けることはできないと考えることができます。
日本共産党都議団は、「東京2020大会の開催時期の再検討を求める申し入れ」を行いました(参考:「共産党都議団として『東京2020大会の開催時期の再検討を求める申し入れ』」)。
この申し入れでは、「東京2020大会の開催時期について、専門家やアスリートの意見を再度聞きながら、9月、10月に開催することも含めて改めて検討すること」を求めています。
何よりもアスリートのため再考すべきです。そして大会関係者や11万人のボランティア、観客の健康と安全を確保するために考える必要があります。
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