「財政が厳しいから」「財源の確保が課題」──地方議会の多くで、行政側が事業の必要性は認めながらも、財源の問題で実施が厳しいということを答弁することがよくあります。
私も、町田市議会議員の時代に、「お金がない」問題に何度も直面しました。その際に、議員の側は「ここにお金がある」と財源論を示すために、この開発にお金を使うよりも、暮らしや福祉のために使うことが必要という論戦を行い、市民のみなさんにもそうした発信をしていくことで、財源を確保できるということを共有していきます。
自治体の状況が違うので、その自治体ごとにどうやって財源を生み出していくのか(区市町村の場合は、国や都道府県の財政支援を求めることも含む)は、知恵の発揮が必要です。
税金の集め方、使い方を見ることで、自治体の姿勢がわかり、政治対決の中心問題でもあります。
■東京都は、「財源が厳しい」とは言わない
と、ここまでは一般論として書きましたが、東京都の場合「財源が厳しい」とは言いません。
私も、都議会議員になって5年ですが、財政委員会に所属していて、東京都の財政の全体像がぼんやり見えてきたところです。そのぐらい東京都の財政力は巨大なのです。
2021年度の決算をみると、「財源が厳しい」と言わない理由の一端がわかります。
2021年度の決算は、10億円の黒字で「収支均衡」でした。これ自体は事実です。
しかし、実態は、収支均衡に「なった」というよりは、収支均衡に「した」というのが真相ではないかと思います。
詳細は、東京都年次財務報告書で→https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/09/16/documents/06_01.pdf
ザクっと書いていきます。
昨年度の当初予算では、都税収入は5兆450億円を見込んでいましたが、決算時点では8265億円増の5兆8715億円(前年比5785億円増)となりました。凄まじい増加率です。
税収増となったことで、東京都独自の制度として、財政調整基金への積み立てを義務付けています(おそらく東京都だけの制度)。その結果、昨年度末の最終補正予算で、1944億円を財政調整基金に積み立てました。
さらに、21年度と22年度の当初予算における都税収入を比較して、上昇した分に合わせて積み立てた結果、22年度当初予算で404億円を財政調整基金に積み立てています(当初予算で財政調整基金に積み立てるというのも東京都だけだと思います)。
昨年度の予算段階では、3751億円の財政調整基金、244億円のスマート東京推進金など基金を取り崩して、財源として活用する予定でしたが、最終的にこれらは1円の取り崩しも行いませんでした。
さらにさらに、オリパラ基金の21年度末残高見込みは1780億円(うち国分が379億円)となっています。この基金は廃止される予定であり、1400億円を暮らしを守る財源として活用することができます。
法人二税の割合が高く、変動が大きいから「将来への備え」が必要だと、東京都は説明します。しかし、以前と比較しても、都税収入にしめる法人二税の割合は減少しており、現実の暮らしや営業の厳しさを考えれば、緊急対策としてお金を使うことが必要です。
ちなみに、東京都が事業の必要性を認識しながら(と言っても、議会では認識をほとんど答弁しようとしない)、実施を拒む理由として使うのは2つです。
ひとつは、国において実施すべきもの。もう一つは、区市町村の責任で実施すべきもの。東京都がやるべきことではないんだということを言って、責任がないかのように言います。しかし、東京都には、都内で生活する人々の暮らしや福祉を向上させていく、責任があります。
さらに、不要不急の大型開発や大型道路への支出をやめさせればもっと暮らしのための財源は生まれます。日本共産党都議団は、そうした視点から毎年、予算の組み替え動議の提案を行なっていますが、来年度予算に向けても税金の使い方の転換を求めていきたいと思います。
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