グルリンポチェの埋蔵経典に記載されていた呪で、
誦したり聞いたりする事で
三道を獲得し 解脱が得られるとされます。
「ア・ア・シャ・サ・マ・ハ
マ・ベン・ダルマ・ラ・ラ
ハ・ガン・カ・ア・シャ・ラ(Lの発音)
サ・デン・ダルマ・ダ・リ(Lの発音)
ガ・ハ・ナ・ア・リ(Lの発音)・タ
ハ・マ・サ・シャ・キ・ウ。」
以下 ネットに投稿されていた体験談のコピペですが、
裏の祭祀に通じている人が 以下の体験談を読めば、
もしテツが生贄になっていなければ、
体験談を投稿した本人が生贄になっていたという事、
投稿した本人の先輩は、
親切心から 投稿した本人に 高給の仕事を紹介したのではなくて、
生贄候補に 後輩である投稿した本人を入れたという事がわかります。
現在は
「仁慈そのものの神が 無条件で人間の幸福や救いを願っている」という概念が
一般的に定着していますが、
本来の祭祀というのは 様々な神や 霊的存在に
贄や供物を捧げて行うという事が前提となっており、
供物や礼拝などは不要で、ただ神に感謝の気持ちさえ持てば良いと
説いているタイプの人というのは
霊的な原理や祭祀に深く通じていない人であると判断できます。
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だいぶ前に体験した話。
そのころ俺は勤めていた機械部品の工場を失職し、実家に戻ってバイトで食いつないでいた。
つてを頼んで就職先を探したんだがなかなかみつからない。
そんなときに、高校のときの部活の先輩から連絡があった。
なんでも久しぶりに帰郷した際に俺が地元でぶらぶらしているというのを聞いたらしい。
短期だが住み込みで仕事を手伝わないか、日当を1日3万出すからということだった。
これは俺にしてみれば非常にありがたい話で、引き受けると即答し、
着替えだけ持って先輩に言われた近県のM市へ出かけた。
行った先は市の海岸沿いにあるちょっとした工場地帯だった。
仕事の内容はその一画にある倉庫番で、荷の出入りのチェックをするだけという、簡単なもの。
事務所の隣にキッチンとソフアベッド、テレビ、冷蔵庫なんかがあり、そこで寝泊まりする。
つまり日当3万というのは、夜間の警備員としての仕事代も含まれているということらしかった。
事務所はプレハブでまだ新しかったが、引き戸の裏にでかでかとお札が貼られてある。
それはよく見かける神社のものではなく薄っぺらい和紙で、
○や+の字が組み合わさった子どものイタズラ書きを羅列したようなもんだった。
お札はそこだけじゃなく、あと3枚事務所の三方の壁にあったんで、
俺は笑って「先輩なんスかこれ」と聞くと、
「いや上からの指示なんだ馬鹿らしいと思うだろうが剥がすなよ」とけっこうキツイ声でたしなめられた。
事務所詰めは俺一人だけじゃなく、テツと呼ばれる二十歳過ぎくらいのやつとのコンビで、
こいつが飯の買い出しやゴミ捨てなんかをしてくれる。
ただし毎日来るわけじゃないし、夜は俺一人だけになる。
倉庫に面した国道は夜になればときたま長距離トラックが通るだけだし、
工場街の人気はなくなり、いつも海の音がザワザワしていて薄気味の悪いところだった。
倉庫は体育館半分くらいの大きさで暗証番号キーがついている。
そこに二日に一回程度4tトラックで荷が運ばれてくるが、いつも長方形の段ボール数個程度で、
こちらから荷が持ち出されるということはなかった。
倉庫の内部にはその箱が3段ぐらいに積まれていたが、スペースはまだまだ余裕があった。
倉庫の奥、体育館で言えばステージがあるあたりに祭壇のようなものがあって、
奇妙な雰囲気だったが、そこには絶対に近づくなと言われていた。
そんな仕事内容だったから暇を持て余した。
荷が届く前には携帯に連絡が入るから、それ以外の時間はテレビを見るか雑誌を読んで過ごした。
テツはいても無口で、しかもなんだか頭が弱いような感じで話し相手にはならなかった。
単調な生活だったが、2週目に入ったとき夜の9時頃に連絡が入った。
これまでそんな遅い時間に荷が来たことはなかったんで妙だと思っていたら、
電話の相手はトラックの運転手ではなく先輩がだった。
なんでも今夜中に入手しなければならない荷があるが人手が足りなくなった。
それで俺にも手伝ってほしい、今すぐ車で迎えに行くという内容だった。
それからすぐ先輩が大型のSUVで乗りつけてきた。
乗っていたのは4人、先輩とテツともう一人高校を出たばかりくらいの初めてみるガキ、
それから高そうなスーツを着たやせた高級サラリーマン風の男。
ガキを俺のかわりに倉庫番として残し、4人で車に乗った。
車はしばらく海沿いを走ってやがて山に入っていく。
林道のようなところを走り、道幅が狭まって車では進めなくなった。
「こっから歩きだそんなに時間はかからない」
先輩はそう言って、車の荷室からヘッドライト付きのヘルメットとシャベルを出して俺とテツに渡した。
それを被って山中に入っていったが、木が埋め込まれて階段状になった小道があり、登るのは難しくなかった。
先輩を先頭にスーツの男が最後尾について、話もしゃべらないまま登っていくと、
15分ばかりで中腹のやや広くなった場所に出た。
周辺の草が焼き払われているような感じだ。
太い木を回ると洞窟というか岩屋のようなものが見えた。
先輩が低く「・・・ここに入る、頭をぶつけるなよ」と言った。
岩屋の高さは3mくらいで奥はどれだけ深いかわからない。
ナップザックを背負い大型の懐中電灯を持った先輩が先にたって進む。
上を見上げたときにヘッドライトの光でボロボロになった注連縄が見えた。
30mくらい進んだところで横穴があった。
頑丈な鉄柵がはめ込まれているのを先輩が鍵を開けた。
入ると、かがまなければマジで頭を打ちそうな高さで、
通るときにシャベルをぶつけて派手な音を出してしまったが何も言われなかった。
10mほど行くとまた広いところに出た。
先輩がナップザックから電気ランタンを出してスイッチを入れ、下に置くと辺りの様子がわかった。
十畳間くらいの広さで回りは岩壁、岩は白っぽく何かの記号のようなものが彫られていた。
事務所のお札に書いてあったのに似ていると思った。
下は岩ではなく白っぽい砂で、中央にかなり大きな木箱がふせられている。
先輩の指示でその箱を俺とテツの二人でどけた。
するとスーツの男が箱のあった場所に進み出て、お経とも祝詞とも違う呪文のようなものを低く唱え始め、
それは20分ほども続いた。
儀式?が終わると、後ろから背中を小突かれた。
見ると先輩で「これをつけろ、すぐ」と低い鋭い声で言ってそっと耳栓を差し出してくる。
俺は??ながらも、その語気に押されて耳栓をつけた。
男が箱のあった場所を指さし、テツはシャベルでそこを掘り始め、俺もそれに加わった。
そう深くないところで、シャベルは固いものにあたり、砂をはらってみると1mばかりの鉄の箱があった。
男が前に出て、かがみ込んで箱の蓋を持ち上げた。
中には獣が入っていた・・・。
黒い短い毛並みの獣が横向きに寝かせられている。
頭は羊によく似ていたがちょっと違う。
目がかたく閉じられているが死骸ではなく生きて眠っているように見える・・・。
そして気味の悪いことに、四肢の蹄にあたる部分は蟹のハサミのような形で赤黒のまだら模様。
先輩が置いていたナップザックから、白い箱とナイフを取り出した。
しゃがみ込んで獣の柔らかそうな腹にナイフを入れる。
ナイフは何の抵抗もなくずぶりと入ったが血は出ない。
そのとき獣が目を開いた瞳のない真っ赤な目。
そして横たわった状態のまま、歯をむき出し一声鳴いたように見えた。
すると俺の横にいたテツがゆっくりと膝をつき、そのまま上半身は後ろに倒れ込んだ。
俺は慌ててテツをささえようとしたが間に合わず砂の上に落ちた。
先輩はこちらにまったく構わず、ナイフを動かして獣の腹を四角く切っていく。
変な例えだが、大きなコーヒーゼリーを切っているようだ。
獣の四角くぷるぷる震えている10cm四方くらいの肉片を白い箱に入れると、ナップザップに収めた。
腹の切り口からはジェルのようなものが染みだし、傷はみるみる塞がっていく。
先輩が鉄箱の蓋をしめ、シャベルで砂をかける。
元の状態に戻ったところで、先輩が耳栓を取れというジェスチャーをしたので外した。
「さあ出るぞ」と言うんで、「テツは?」と聞くと、
「置いていく、後で回収するやつらがくる」と言い、荷物をまとめて横穴に戻っていく。
スーツの男に押されるようにして後に続いた。
それから3人で小走りに岩屋を出て車まで戻った。
帰りの車の中でも誰も会話しないんで、たまりかねて「先輩・・・あれ何だったスか?」と聞くと
後部座席にいたスーツの男が「いのこです。裏神道の贄、古い古いものですよ」と唄うように答えた。
「テツは死んだんスか?」と重ねて聞くと、
男が「いやあ、そんなことはありません。彼はいのこに・・・」と言いかけたとき、
先輩が「もうそのくらいにしろ!!」と怒鳴りつけたんで、俺はそれ以上の質問をやめた。
・・・この後、俺はまた元の倉庫番に戻り2週間ほどで仕事は終わった。
後日談は何もない先輩にもスーツの男にも、テツにもそれから一度も会っていないし連絡もつかない。