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現行の賃料が不相当に高額になっていると主張する請求が認められた事例

2008年05月19日 | 最高裁と判例集
甲府地裁判決 平成16年4月27日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 建物の賃借人からの、現行の賃料が不相当に高額になっていると主張する請求が認められた事例


(1) 事案の概要
 ショッピングセンター等を経営する賃借人Xは、昭和62年11月、建物の一部、1万5,010㎡を、20年間、店舗等とする使用目的で、賃料月額を2,935万円として、賃貸人Yと賃貸借契約を締結した。
 平成4年6月、YとXとは、①賃料が平成2年11月以降、同7年6月まで、3,228万円であることを確認する ②賃料は、公租公課の増額、経済情勢の変動等を勘案し、平成7年7月以降将来に向かって改定できるものとし、以後3年毎に賃料額の改定を行うものとする、との訴訟上の合意をした。なお、平成8年7月、Yは、本件建物の隣の自らの土地に、同業他社を誘致している(平成10年10月開店)。また、平成10年9月、Ⅹは、Yとの間で、増築した本件建物のうち、増築部分も含めた賃料算定面積15,537㎡につき、賃料を3,321万円に変更する旨合意した。
 平成11年7月、Xは、50%の賃料減額請求調停を申し立てたが、不調に終わった。Xは、バブル崩壊による土地価格の大幅下落等に照らし、大きく減額すべきであるとし、その確認を求めた。

(2) 判決の要旨
 ①交渉経過を検討すると、平成10年9月の増築の時点で、既存部分についての賃料改定に関する合意が行われたと認めることはできず、既存賃借部分について現行賃料の合意がされた時点は、平成4年6月であると認められる。
 ②本件増築後建物について、Xが賃料の減額請求をしている平成11年8月の時点における適正賃料額を算定するに当たっては、差額配分法、利回り法、スライド法及び賃貸事例比較法の各手法を用いて総合的に判断し、合理的な額を算定するのが相当である。
 ③各方法による試算賃料についての比重について検討するに、差額配分法における賃料については比重を3、利回り法における継続利回り賃料については比重を2とするのが相当である。また、スライド法における賃料については、その比重を5とするのが相当である。なお、賃貸事例比較法については、鑑定手法に疑問の余地があるため採用できない。
 ④以上によれば、実質賃料を月額2,842万円と認め、ここから敷金運用益を控除して、適正賃料額を2,798万円とするのが相当であり、これに、追加賃借部分の賃料(92万円)を合計すると、賃貸借変更契約における適正賃料額は平成11年8月1日以降、2,890万円であるとの確認を求める限度で理由がある。


(3) まとめ
 本判決では、賃料改定に関する合意については、双方が正面から取り上げて話し合った形跡はない等として合意には至らなかったされたが、増築後の建物の適正な賃料については、不動産鑑定評価に基づく各算定方法の比重を基に判断された。

(不動産トラブル事例データーベース)




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