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判事例 転借人が投棄した廃棄物の撤去義務

2008年05月26日 | 最高裁と判例集
最高裁判決 平成17年3月10日
(判例時報 1895号 60頁)
(判例タイムズ 1180号 187頁)

《要旨》
 転借人が不法に投棄した大量の産業廃棄物について、無断転貸した賃借人は賃貸借契約の終了時に撤去すべき義務を負うとされた事例


(1) 事案の概要
 Ⅹは、県の許可を得て産業廃棄物最終処分場として使用していたが、平成7年10月以降は使用を中止した土地につき、平成9年10月、Aに対して、資材置場として賃貸し、また、Yは、Aが本件賃貸借契約に基づき負担する債務につき連帯保証をした。
 しかし、Aは、本件賃貸借契約の3日後、Xに無断で本件土地をBに転貸し、Bは、本件土地を産業廃棄の処理場として使用して、コンクリート魂や解体資材等の廃棄物を投棄し始め、それを知ったXは、平成9年11月、Aに対して、本件賃貸借契約を無断転貸及び用法違反を理由として契約解除し、本件土地の明渡しの催告をした。
 その後、Aは本件土地を明け渡したものの、投棄された産業廃棄物を放置したため、Xは、Aの連帯保証人であるYに対して、本件連帯保証契約に基づき、本件賃貸借契約終了に基づく原状回復義務の不履行による損害賠償を求めて提訴し、原審で請求が棄却されたため、上告に及んだ。

(2) 判決の要旨
 ①原審は、Aは、犯罪行為である産業廃棄物の投棄についてまで、賃貸借契約の解除に伴う原状回復義務として責任を負うものではないので、Aの連帯保証人であるYがこの点につき責任を負う余地はないとしてXの請求を棄却した。しかし、賃借人は、賃貸借契約上の義務に違反する行為により生じた賃借目的物の毀損について、賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うことは明らかであり、Aは、本件賃貸借契約上の義務に違反して、Bに対し本件土地を無断で転貸し、Bが本件土地に産業廃棄物を不法に投棄したというのであるから、Aは、本件土地の原状回復義務として、投棄された産業廃棄物を撤去すべき義務を免れることはできないというべきである。
 ②原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻す。


(3) まとめ
 一般に、賃借人は、賃貸借契約の終了に伴う目的物の返還に際しては原状回復義務を負うとされており、また、賃借物が自然にまたは、使用収益の正常な過程において損傷した場合や、不可抗力により毀損した場合には、これを原状のまま返還すれば足りると解されている。本判決は、賃借人の契約違反により生じた賃借目的物の毀損であり、賃借人における賃貸借契約終了時の原状回復義務は免れないと判示されたものである。



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