賃貸の新潮流
ニーズと向き合う
今回は賃貸住宅管理に焦点を当てる。今年、賃貸管理業界で最も注目されるのは「めやす賃料制度」と、国土交通省が創設する「賃貸管理業者の登録制度」の2つだ。共にこれまでの流れを大きく変えることは必至で、業界では当然、これに備えた動きが活発化している。
賃貸管理、節目の年に
登録制&めやす賃料
今年6月の日本賃貸住宅管理協会の総会で三好修会長は、「賃貸住宅管理業者の社会的役割はますます重要視されてくる。事業者の登録制度創設や、一部業者による悪質な家賃の取り立て防止の法規制など、国は具体的な賃貸不動産市場の安定・健全化の方策を打ち出した。我々はより高度な管理業務の自主ルールを独自に策定し、高い倫理観と質の高い業務水準を確立していかなければならない。今年は賃貸管理業にとって大きな節目の年になる」と語った。
その言葉通り、同協会の総会では「めやす賃料制度」を今秋スタートすることと、事業者登録に備えた自主ルールを早期に確立することが発表され、業界の動きも急だ。
長らく規則や規制を持たなかった賃貸管理が、今年を境に公認の下で、社会的な信頼に足るビジネスへと流れが加速する。その延長には管理業務の有償化も垣間見える。
業者選びの判断材料に
その第一ハードルとなるのが国交省の賃貸住宅管理業者登録だ。賃貸管理業務について一定のルールを定めて適正な運営を確保すると共に、賃借人、賃貸人双方の利益を保護することが目的だ。家賃などの受領に係る業務や賃貸借契約の更新・終了に係る業務を行う個人・法人は、国交省の業者登録簿に任意で登録できるようになる。登録事業者の情報を公表する一方、違反者には登録消除もあり、消費者に物件選択、業者選択の判断材料として役立ててもらう狙いだ。
登録要件については、多くの事業者が登録できるようにするため要件のレベルはそれほど高くならないとの見方があるほか、業務規程のレベルを上回る自主ルールを策定し全会員の登録を目指す日本賃貸住宅管理協会の動きもあり、登録業者イコール信頼・安心という位置付けになることは確実だ。
いずれにしても業者登録の導入で、賃貸管理業務の適正化、高度化が進むことは明らか。仲介と管理の境界線が今以上にはっきりしてくることになる。仲介のための管理、管理のための仲介という事業スタイルから、どちらかにより専門特化していく中小業者と、2つの業務を両立できる大手とで棲み分けも進む。しかし相互依存が高いのもまた仲介・管理の特徴でもあり、大手優位は続きそうだ。
台風の目「めやす賃料」
台風の目となるもうひとつが「めやす賃料」だ。
「めやす賃料」は賃貸住宅に4年間入居を想定した賃料、共益費・管理費、敷引金、礼金、更新料に、フリーレント期間なども考慮した合計額を必要月数で割って1カ月の支払い額に置き直したものとなる。
合計額は更新料が発生する4年間分とし、その合計額を48カ月で割る。礼金・敷金や更新料があるケースが多い大都市などでは、募集家賃の表記よりも「めやす賃料」の方が高くなり、地方都市のように礼金・敷金・更新料がなく、しかもフリーレントがある場合などは「めやす賃料」が募集家賃を下回る可能性がある。
従来の賃料表示ではわかりにくかった総支払い額を月額ベースの実質負担額として全国一律の形で、正規募集賃料に併記する。
同協会では導入のメリットを、(1)借主が支払う金額が容易に理解できる(2)地域性など商習慣の異なる賃貸市場でも公正かつ公平な判断で物件を選択できる(3)トラブルの未然防止、などとしている。秋には会員各社を通じて「めやす賃料」の表示をはじめ、翌シーズンには市場に浸透させたい考えだ。
同協会によると、「月額家賃だけでは単純比較が難しかった部分が、借主と貸主または管理業者双方の認識のずれを生じさせ、時にはトラブルにも発展していた。頻発している更新料訴訟もどちらが正しい、正しくないという問題ではなく、それ以前に双方が納得して契約を結べることが重要」とめやす賃料の意義を説明している。
あるメディアが実施した賃貸ユーザーの意識調査がある。従来通りに月々の家賃とは別に一時金として礼金や更新料などを支払う方法か、または「めやす賃料」のようにこれらの合算を月割りして一時金をなくす支払いの二者択一の質問に対して、ほぼ半々の回答結果が得られたという。
これを踏まえて、将来的にはユーザーがどちらかの方法を任意に選んで支払えるようになる可能性も大いにあると、同協会では見ている。「めやす賃料」の浸透具合によっては、実質的に賃料一本化への流れが強まることも否定できない。
賃貸管理に先んじて、01(平成13年)に一定の管理業務主任者を要件とする事業者の登録制度が導入されたのがマンション管理業界。大手、中小が混在する業界特性もあり、法令順守の徹底もまだ道半ばだ。たが、業界の自主的な取り組みによって確実に業務改善は進んでいる。
偶然にも多くの取り組みや施策が今年に集中した格好となったが、賃貸管理業界も長い道のりを一歩ずつ前進することが消費者や社会からの信頼獲得に向けた最短ルートになる。
(住宅新報 7月12日)
ニーズと向き合う
今回は賃貸住宅管理に焦点を当てる。今年、賃貸管理業界で最も注目されるのは「めやす賃料制度」と、国土交通省が創設する「賃貸管理業者の登録制度」の2つだ。共にこれまでの流れを大きく変えることは必至で、業界では当然、これに備えた動きが活発化している。
賃貸管理、節目の年に
登録制&めやす賃料
今年6月の日本賃貸住宅管理協会の総会で三好修会長は、「賃貸住宅管理業者の社会的役割はますます重要視されてくる。事業者の登録制度創設や、一部業者による悪質な家賃の取り立て防止の法規制など、国は具体的な賃貸不動産市場の安定・健全化の方策を打ち出した。我々はより高度な管理業務の自主ルールを独自に策定し、高い倫理観と質の高い業務水準を確立していかなければならない。今年は賃貸管理業にとって大きな節目の年になる」と語った。
その言葉通り、同協会の総会では「めやす賃料制度」を今秋スタートすることと、事業者登録に備えた自主ルールを早期に確立することが発表され、業界の動きも急だ。
長らく規則や規制を持たなかった賃貸管理が、今年を境に公認の下で、社会的な信頼に足るビジネスへと流れが加速する。その延長には管理業務の有償化も垣間見える。
業者選びの判断材料に
その第一ハードルとなるのが国交省の賃貸住宅管理業者登録だ。賃貸管理業務について一定のルールを定めて適正な運営を確保すると共に、賃借人、賃貸人双方の利益を保護することが目的だ。家賃などの受領に係る業務や賃貸借契約の更新・終了に係る業務を行う個人・法人は、国交省の業者登録簿に任意で登録できるようになる。登録事業者の情報を公表する一方、違反者には登録消除もあり、消費者に物件選択、業者選択の判断材料として役立ててもらう狙いだ。
登録要件については、多くの事業者が登録できるようにするため要件のレベルはそれほど高くならないとの見方があるほか、業務規程のレベルを上回る自主ルールを策定し全会員の登録を目指す日本賃貸住宅管理協会の動きもあり、登録業者イコール信頼・安心という位置付けになることは確実だ。
いずれにしても業者登録の導入で、賃貸管理業務の適正化、高度化が進むことは明らか。仲介と管理の境界線が今以上にはっきりしてくることになる。仲介のための管理、管理のための仲介という事業スタイルから、どちらかにより専門特化していく中小業者と、2つの業務を両立できる大手とで棲み分けも進む。しかし相互依存が高いのもまた仲介・管理の特徴でもあり、大手優位は続きそうだ。
台風の目「めやす賃料」
台風の目となるもうひとつが「めやす賃料」だ。
「めやす賃料」は賃貸住宅に4年間入居を想定した賃料、共益費・管理費、敷引金、礼金、更新料に、フリーレント期間なども考慮した合計額を必要月数で割って1カ月の支払い額に置き直したものとなる。
合計額は更新料が発生する4年間分とし、その合計額を48カ月で割る。礼金・敷金や更新料があるケースが多い大都市などでは、募集家賃の表記よりも「めやす賃料」の方が高くなり、地方都市のように礼金・敷金・更新料がなく、しかもフリーレントがある場合などは「めやす賃料」が募集家賃を下回る可能性がある。
従来の賃料表示ではわかりにくかった総支払い額を月額ベースの実質負担額として全国一律の形で、正規募集賃料に併記する。
同協会では導入のメリットを、(1)借主が支払う金額が容易に理解できる(2)地域性など商習慣の異なる賃貸市場でも公正かつ公平な判断で物件を選択できる(3)トラブルの未然防止、などとしている。秋には会員各社を通じて「めやす賃料」の表示をはじめ、翌シーズンには市場に浸透させたい考えだ。
同協会によると、「月額家賃だけでは単純比較が難しかった部分が、借主と貸主または管理業者双方の認識のずれを生じさせ、時にはトラブルにも発展していた。頻発している更新料訴訟もどちらが正しい、正しくないという問題ではなく、それ以前に双方が納得して契約を結べることが重要」とめやす賃料の意義を説明している。
あるメディアが実施した賃貸ユーザーの意識調査がある。従来通りに月々の家賃とは別に一時金として礼金や更新料などを支払う方法か、または「めやす賃料」のようにこれらの合算を月割りして一時金をなくす支払いの二者択一の質問に対して、ほぼ半々の回答結果が得られたという。
これを踏まえて、将来的にはユーザーがどちらかの方法を任意に選んで支払えるようになる可能性も大いにあると、同協会では見ている。「めやす賃料」の浸透具合によっては、実質的に賃料一本化への流れが強まることも否定できない。
賃貸管理に先んじて、01(平成13年)に一定の管理業務主任者を要件とする事業者の登録制度が導入されたのがマンション管理業界。大手、中小が混在する業界特性もあり、法令順守の徹底もまだ道半ばだ。たが、業界の自主的な取り組みによって確実に業務改善は進んでいる。
偶然にも多くの取り組みや施策が今年に集中した格好となったが、賃貸管理業界も長い道のりを一歩ずつ前進することが消費者や社会からの信頼獲得に向けた最短ルートになる。
(住宅新報 7月12日)
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