夫が今月の9日都立松沢病院で、「アルツハイマー型認知症の初期」と診断
されてから満10年になった。夫は大らかな性格でだったが、私は結婚した頃は自分の
言動に後悔や反省ばかりしていた。すると夫は、「もう過ぎたことだし、考えたって
仕方がないよ。これから注意すれば良いんだから」とよく言ってくれた。
20歳代の私はかなりエキセントリック(神経質、天真爛漫、我がまま、感受性
も強く、超臆病、粗忽、さらに物音には過敏に反応)だった。(実は今でもそうだ)
でも、夫にいつもそう言われ続けると、「確かに、これから注意すればよいのだ」
と考えられるようになり、随分気持ちが楽になった。
細かいことは一切いわず、欲しい物のすべて与えてくれた。整理整頓が大の苦手
だったが、結婚して以来たったの一度も、それらについて小言を言われなかったのは
本当に有難かったと、私は今でも感謝している。娘に「パパはまるでママの保護者みたい」
とよく言われ、年下の友人にも「ときどき、我がままでヤンチャな娘を持った、父親のような
気分にさせられる」と言われたこともあった。ある意味では、そう年は変わらないのに夫はま
るで父親のような存在で、そう言えば昔は、知人や友人達から「ご主人は随分年上なんでしょ?」
とよく言われた。
長年冷静に介護できるのは、心理カウンセラーとしての知識と、私達夫婦の長く平和な
結婚生活のお陰だと思う。この3年間で友人や知人3人は認知症のご主人を、凄惨な介護
の末見送った。それに比較すると、私は「幸せな介護をしている」と思っている。
認知症歴が長い夫だけれど、そんな夫の人間性を今でも尊敬できるし、現在もほぼ自立
している夫なので、「幸せな状態でもう少し長生きして欲しい」と、これからも愛情をこめて
夫を見守っていきたいと思っている。