先日80歳の夫が85歳の認知症の妻を殺害した事件があったが、本当
にお気の毒でならない。何年間もやさしく介護していたようだが、夫が妻
を介護するのが最もご苦労だと思う。認知症は感情に逆らわないことが
ベストだが、私は長年介護して一度も怒らせないことが、夫が穏やかさで
次は食生活に違いないと思っている。またデイホームで毎週3回お世話
になっているのも、大変効果的なサポートで、いつも感謝をしている。

私は心理のプロとして、それを長年続けている。夫は温和な性格だが
現役の時は多少頑なな部分もあったが、今はまったくなく、実に素直で
扱いやすい。それに夫に対する確執はないし、友人達に「ちょっと神様」
と言われたほどは私には寛大(と言うより甘かった)で、子供達からは
「パパはママの保護者みたい」と言われていた。
そのため同じこと何回言われても、黙って聞いたし、忘れることに対し
ては「何を忘れても大丈夫、しっかりした私が全部覚えているから」と
言った。

すると臆病でおっちょこちょい、いつも「キャーキャー」言って、あまり
しっかりしていない私を熟知しているので、ニヤニヤしていたが、ちょっと
嬉しそうだった。ある日銀行の通帳や印鑑をなくした時は、(我が家から
こんな近いところで無くすなんて、私が行けばよかったのだ)と、とても
悲しくて、寒い羽根木公園の梅林で一人で泣いたこともあったが、夫は決
して責めなかった。今も「美味しく食べられて幸せ」と言う夫、少しづつ
食欲は衰えてきたが、毎日考え工夫して、これからも夫の喜ぶ料理を
作りたいと思っている。一日でも長く幸せな状態で生きていて欲しいから。
