友人達に「クリスマスシーズンのきれいなパリを見に行かない」と誘われた。認知症の夫を置いて行くのはと少々迷ったが、これが大好きなパリの
見納めかもと感じた。まだその頃はかなりしっかりしていた夫を、家族や
お手伝いさんに、連携プレーで見守ってくれることをお願いし、思い切って
行った。
個人旅行だったが、宿泊したのはモンパルナスの一流ホテルで、以前
3人で行ったホテルよりランクが上で広々して素敵だった。
本当に美しかったパリの夜景を堪能し、二度目のモンサンミッシェルにも
行った。帰る前日デパートで記念になるからと、きれいな筒状の缶入りの
クッキーを買ったら、それを見た二人もお揃いでと買った。
それは今も私のカウンセリングルームの窓辺に飾ってあるが、裏に日付
が書いてあった。そのきれいな缶を手に取りながら、あっという間に流れた
長い年月をいろいろ考えていた。
今私にふりかかっているかなり面倒な問題、それを解決しなければなら
ない。普通の人では経験できないような、幸せな思い出もたくさんあり
比較的思い通りに生きてきた。けれど・・・人生の最終期にそんな問題
にぶつかるとは、また目が冴えて眠れない。本当は夫の問題なのに
すべて私にかかっている。何にも考えずすやすやと眠っている、認知症
の夫が羨ましいと思いながら、何度か行ったパリの楽しい思い出が蘇
えった真夜中だった。これからコーヒータイムにしよう。