人生修行の旅

「笑って、野垂れ死ぬ!!」
そのために、この人生をどう生きて、この命を何に使うか?人生一度きりの生き方を実験中!!

山岳サバイバルレース 3日目 短くて長い道

2013年08月18日 | 
 槍ヶ岳に向かう西鎌尾根を通り、

千丈乗越に着く。これが最後の登りだ。

急坂が続くが、どことなく懐かしい。

富士山の登り坂に似ているのだ。

富士山は私にとっては、散歩コースのような親しみがある。

最後の登りも苦しくとも、自分のホームのような気分で、

ほとんど休まずに通常の半分の時間で通り過ぎた。

そして、遂に槍ヶ岳。



2日前うっすらと見えていたのが、今こうして目の前に存在しているのが不思議だ。

山頂に行こうか迷ったが、付近の行列を見て行くのをやめた。

昨年、31歳の誕生日に31アイスクリームを槍ヶ岳山頂で食しているため、今回はパス。

わずかな休憩をとって、ゴールの上高地に向かう。

残りは、下りと平地の22km。

下山の足が思うように動かない。

それでも、スピードを緩めず先へ先へ進んだ。

そして、なだらかなトレイルの道からは走った。

残り13kmのところで足がオーバーヒートした。

熱くて、熱くて、痛くて、痛くて、動かない。

川沿いに腰を下ろし、機能性タイツを脱ぎ、靴下を脱ぎ、川の水で足を冷やした。

細胞達が限界と呻いている。

このまま休んで、ゆっくり行くのか?

できる限りスピードを維持したまま行くのか?

早くゴールをしたからと何かあるわけでもない。

ゆっくり歩き出すこと3分。

何かに押し出されるようにして走り出した。

残り11kmで登山靴からビブラムシューズに履き替えた。

500ccのスポーツドリンクを一気飲みし、

ザックの中に残っている水を全て捨てた。

少しでも軽くしたかった。

少し走っては歩き、

歩いては少し走る

を繰り返す。

集中力が高まった状態をゾーンというが、そのゾーンに入るための儀式に入る。

全てのものに感謝する。

この肉体を授けてくれた家族に、

身につけている物に、

このような経験をさせてくれた自然に、

温かさと元気をくれる太陽に、

酸素溢れる地球に、

そして、頑張ってくれている細胞達に、

ありがとうを言う。

毛穴が開き、全身がぞわっとする。



残り3km。

長い。3kmってこんなに長いのかというほど、とてつもなく遠く感じる。

そして、残り300m。

人生で一番長く感じる300mを走る。



もうこれ以上、動けないし、動きたくない。



室堂を出発してから、

55時間30分後に上高地のかっぱ橋に到着。





できるのかできないのか?

やれるのかやれないのか?

実際にチャレンジしてみないことには分からない。


山で3日間過ごし、

風景を楽しむ方

写真を楽しむ方

草や木、花を楽しむ方

鳥や動物を楽しむ方

キャンプを楽しむ方

酒を楽しむ方

仲間との語らいを楽しむ方



色々な楽しむ方をみた。

きつく苦しいことが楽しい私はちょっと変わっているのかもしれないが、

それもまあ、人それぞれの自由だ。

私がゆっくり風景を楽しむのは、生きていたら数十年先で十分だ。




ゴールしたからといって何かあるわけでもない。

ただ、この経験はきっと何かの役に立つと信じている。


北アルプス山岳サバイバルレース ~完~

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山岳サバイバルレース 3日目 最後の戦略

2013年08月18日 | 
 皆が寝静まる早朝3時半。

こっそり起きだし、玄関で着替える。

最後の力を振り絞るため、足にテーピングを巻き、

久々に機能性タイツを履く。

持参した行動食を無理やり胃の中に入れる。

ここまでくれば総力戦だ。

地図を頭の中に叩き込み、ヘッドランプを頼りに暗闇の木道を歩く。



できるかできないかではなく、やるかやらないか。

暗闇は人の心を弱くする。

どこからか聞こえてくる口笛・・・

登山道などあるはずのない方向からの光・・・

幻聴か、幻覚か、何かのサインか。

こんな時には、自分にとって都合よく変態的に捉える。

口笛は私はふけない。

口笛に対して、私も口笛で応えたがスースーしか言わず、

「俺はできないよ!!」と暗闇に対して、突っ込みを入れる。

道に迷わぬように、

慎重に先に進み坂道に入ったと同時に

朝の光が出てきた。

予定通り。

地図、自分のスピード、自然状況、それらを推測していた。

誰もいない急坂を気持ちよく降りる。

川を渡り、また上がる。




なだらかな道は走る。

最終日の今日は、力を余すことなく使い切ろうと思う。

雲ノ平を下り、三俣に行き、双六小屋へ。

山小屋でりんごをかぶりつき、アミノ酸入りのペットボトルを2本購入した。

わずか5分の栄養補給と休息。

2日前に剣岳付近からはるか遠くわずかに見えていた

槍ヶ岳がいつの間にか近くに迫っていた。



急峻な尾根を歩く。

一歩間違えれば、さようならだ。

集中力を最大限に高める。

鎖場で前のカップルが落石をしそうになった。

50cm四方の岩がズルズルと私の眼前に迫る。

幸い後ろには誰もいない。

落ちてきてもよけるし、そうでない状況になっても何とか対応しようと思った。

男性がズルズル落ちる岩を上から引っ張った。

そして、私もその岩を下から押した。

急な鎖場で岩を安全な位置に移動して、石でストッパーをかけた。

「ファイトーイッパーツ!!」

リポビタンDが飲みたい気分になった。







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