2時50分に起きて、3時30分に出発。
まだ暗い中を全身の力を抜いて、楽に楽に歩いていく。
こうすればスピードは出ないが、
体力の消耗は抑えられて、
水分補給も最小限で済む。
「1週間前にこの山(弥山)へは登りました。運良く山頂の山小屋が営業していれば、水を購入できますし、営業してなくても雨水をためたタンクに水が大量に入っています。」
生の情報は本当に有り難い。
コースタイム4時間を3時間かけて登り、山頂の山小屋に着くとボイラーの音がする。
「どうやら営業しているようです」
「助かりました!!」
水2リットルとコーラ500mlを購入して、
その場で1リットル近く飲むと、
復活!!!!
「よーーーし、行きましょう!!!」
約20分ほどして近畿最高峰の八経ヶ岳(1914m)に到着すると、宇原さんが足を気にしていることに気付く。
「以前に腸脛靭帯炎になり、今ちょっとうずいているんです」
「よければ脚をケアさせてください!命の水の僅かばかりの御礼です。」
痛めている箇所から原因と思われる筋肉をケアして、テーピングを施し、歩き方のアドバイスをすると、
「うずきがなくなりました!これなら大丈夫です!!!」
と宇原さんも復活!!
報恩感謝
八経ヶ岳から3時間かけて、
ロープを使った急登りを繰り返して辿り着いたのは釈迦ヶ岳。
山頂には、日帰りの登山者が多数いる。
「裏から来られたということは奥駈道ですか?」
表の穏やかな道から上がってきた年配の登山者たちが聞いてくる。
「そうです!私は3泊4日、彼は2泊3日で踏破しようと挑んでます。」
周りにいる方々も聞く耳を立てて、
笑顔で見つめてくる。
地元の登山者にとって、
その困難さを十分に理解しているがゆえに、
大峯奥駈道に挑んでいるということだけで、
畏敬の念を抱くようだ。
「釈迦ヶ岳のちょっと下るとかくし水と呼ばれる場所があります。そこで補給して、休憩しましょう」
豊富な水量のため水をたくさん飲み、
2リットルほど補給していると、
そこでも登山者たちが話しかけてきてくれる。
みんないつかはやりたいとは思っていても、
実際には足を踏み出すことは難しい。
そこから30分ほど進むと、
「大峯奥駈道の前半部分終了です。ここからは未知のエリアです。実を言うと、腸脛靭帯炎のうずきで、途中で引き返せる最後が釈迦ヶ岳で終わりにしようと思ってました。ここからは電波も入らず、エスケープルートもない、覚悟のある人しか行かない道です。」
「だから人が誰もいないんですね!覚悟がなかったら、埼玉からわざわざ来ませんよ!行きましょう!」
人のいる気配もなく、
人が歩いた痕跡も少ない道。
天狗岳、奥守岳、地蔵岳、般若岳、涅槃岳、証誠無漏岳、阿須迦利岳...
これでもかというほど繰り返されるアップダウンに、
約17kgのザックを背負って13時間以上歩き続けた身体と心はクタクタになっていた。
時刻は17時。
そろそろ宇原さんの宿泊予定地である山小屋、持経の宿が近づいてくる。
私の予定地はそこからコースタイム4時間先の行仙の宿である。
果たして無事に辿り着けるのだろうか。
つづく