昨年末の衆議院総選挙について、一票の価値の格差が2.43倍あったことを理由に選挙無効訴訟が提起され、各地の高等裁判所で判決が相次いでます。初めは「違憲状態」「違憲」とするものの原告の請求を棄却し選挙は有効とする判決ばかりでしたが、一昨日の広島高裁と昨日の広島高裁岡山支部が、「違憲」としたうえで選挙無効とする原告全面勝訴の判決を下しました。
違憲・違法であれば選挙を無効としてやり直すのが当たり前です。違憲だけど選挙は無効としないというのは普通は論理矛盾です。ただ公職選挙法の選挙無効訴訟は今回のように選挙制度自体がおかしいという場合を想定していないので、昭和51年の最高裁判決は、選挙無効に伴う混乱を避けるために行政事件訴訟法31条の事情判決の法理をこうした選挙無効訴訟にも適用して、違法ではあったが選挙は有効とするという判断をしました。事情判決とは、たとえば違法なダムの建設が行われたが判決確定時までにダムの存在を前提にした周辺住民の生活があるときに違法だからといってダムの撤去を命じることが誰も幸せにしないというような場合です。
実は公職選挙法は事情判決の適用を明文の規定で排除しています。そりゃそうでしょう、違法な選挙を無効としないことが選挙の公正さを犠牲にしてまで何らかの重大な利益を守るために必要な場合は想定しにくい。だから、昭和51年判決は事情判決ではなく「事情判決の法理」によって、主文で原告の請求棄却、ただし選挙は違法だったとしたのです。
たしかに、国会などに遠慮がちなこれまでの裁判所の振る舞いからすれば選挙無効判決は画期的ではあるけど、違法なものは無効、やり直しという原則を貫いただけという見方もできます。最高裁がどういう判断をするか注目されます。
ところで、マスコミは広島高裁の選挙無効判決を伝えるとき、「戦後初めて国政選挙を無効とした」という形容詞を付けますが、では戦前・戦中は選挙無効判決があったのでしょうか? それは次回。
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