ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「サンシャイン・ボーイズ」

2022-03-25 15:50:43 | 芝居
3月14日下北沢・本多劇場で、ニール・サイモン作「サンシャイン・ボーイズ」を見た(演出:堤泰之)。



ニューヨークの古びたホテルの一室で、悲惨な生活を送るひとりの男、ウィリー・クラーク(加藤健一)。元はヴォードヴィルの大スターコンビであった
ウィリーは、ひとりとなった今でも役者としての自分は終わっていないと必死にもがくものの、その気持ちとは裏腹になにもかもが上手くいかず仕事に
ありつけない。ある日、テレビ局の副社長が頭をさげてお願いするほどの大仕事を、ウィリーの甥でありマネージャーのベン・シルバーマン(佐川和正)が
持ってくる。ウィリーは当然引き受けると思いきや、出演の条件は元相棒アル・ルイス(佐藤B作)との「サンシャイン・ボーイズ」による往年の名作コント
だと聞いて出演拒否の一点張り!
喜劇の黄金時代が生んだ史上最高のコンビとまで言われたルイス&クラーク、11年ぶりの名コンビ復活となるのか!?
ラストショーの最後に待ち受けるふたりの運命は・・・?(チラシより)

加藤健一事務所創立40周年、加藤健一役者人生50周年記念公演第1弾。
ニール・サイモン追悼公演。
その楽日を見た。
ネタバレあります。注意!

11年前、相棒のアルが突然引退表明して去ったため、ウィリーはピン芸人になるしかなくなり、アルからの電話にも出ず、ずっと彼を恨み続けていた。
仕事にも恵まれず一人で古びたホテルに引きこもっている。甥のベンが彼のマネージャーを引き受け、週に一度は食料品などを届けてやっている。
一方アルは、2年前、妻リリアンを亡くし、今はニュージャージー州の娘の家に住んでいる。足が悪くなり、杖をついている。
ウィリーはセリフを覚えられず、チップスのCM の仕事もダメになる。
そんな叔父に久しぶりにテレビ局から大きな仕事が入り、ベンは大興奮。彼自身、伝説の「診察室のコント」を生で見たいのだ。
ベンは、渋るウィリーをあの手この手で説得し、承諾させることに成功する。
第2幕
診察室の書き割り。二人のリハがようやく実現し、その掛け合いのコントは少し時代を感じさせるものの、結構おかしくて笑いの連続だが、途中やっぱり
アルの「つば」と「指つつき」問題でウィリーが怒り出し、アルも言い返し、結局アルは去り、ウィリーは心臓発作を起こして倒れる。
テレビ局は仕方なく昔の録画を流す。
次のシーンはウィリーの病室。
看護師、いやこの時代に即して言えば、看護婦が常駐。あちこちに花が活けてあり、お菓子やチョコの箱が置いてある。
ベンが来て、ウィリーに、引退し、うちに来て(彼の妻)ヘレンと子供たちと一緒に暮らすか、それともニュージャージー州のアクターズホームという
引退した俳優たちのホームに入るか、どちらかを選んだらどうかと勧める。彼はすでにそこを下見してきており、いいとこだよ、とパンフレットを見せる。
そして言う、アルが毎日いろんな偽名で花やお菓子を送ってきた、ウィリーに会いたがっている、彼が倒れたことで胸を痛めている、とも。
ウィリーは嫌がるが、謝罪するなら受けよう、と急に元気になり、ベッドから降りて上着を引っ掛け、椅子に座る。
アルが来てウィリーの容態を気遣うが、ウィリーは相変わらず虚勢を張り・・・。
ラストでベッドに戻ったウィリーのそばに座り、アルは延々と昔話をしゃべり続ける。幕!

このエンディング!これは評者がこれまで「三谷式エンディング」と呼んできたものだ。思うに三谷さんは、この作品の影響を受けて、あの独特の
エンディングをしょっちゅう使うようになったのではあるまいか。

佐川和正が人のいいベンを好演。相変わらずメリハリの効いた演技で、見ていて実に気持ちがいい。
ベンの存在が、主演二人のアクの強さを際立たせると同時に、二人の間に風を送ってすがすがしい気分にさせてくれる。
加藤健一と佐藤B作のお二人には、ただもう感謝しかない。彼らの芸をたっぷり堪能させてもらった。

ある評に「ナンセンス」とあったので、評者は少々腰が引け、おっかなびっくり出かけたが、蓋を開けてみると、まったく問題なく、面白くて楽しいひと時だった。
ナンセンスもコントの中でなら全然問題ないのでした。
連発されるギャグも決して古臭くなっていなかった。
もちろん、若い女性の肉体美を強調した流れは今日ではあり得ないが、昔の作品として、観客もみんな受け止めていたようだ。
この二人の名優コンビがいてこそ実現した公演だ。
将来、彼らを継ぐ人が果たして出てくるだろうか。




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