5月21日新国立劇場小劇場で、クシシュトフ・キェシロフスキ作「デカローグ 5と6」を見た(演出:小川絵梨子)。
タクシー運転手を殺害した青年と、若い弁護士。
死刑判決を受けた青年を救えなかった弁護士の悲嘆。
街中でたまたま、傲慢で好色な中年の運転手のタクシーに乗り込んだ
20歳の青年ヤツェクは、人気のない野原で運転手の首を絞め、
命乞いする彼を撲殺する。殺人により法廷で有罪判決を受けたヤツェクの
弁護を担当したのは、新米弁護士のピョトルだった・・・(チラシより)。
若い男ヤツェクが2階から石を落とすと、下で車が事故を起こす大きな音がする。
タクシー運転手が洗車中。
老人が鳩に餌をやっている。
ヤツェクが来ると、「あっちへ行け」「鳩が怯えてる」
するとヤツェクは立ち去りかけるが、すぐに戻って来てわざと鳩たちを蹴散らす。
鳩たちは驚いて飛んで行ってしまう。
ピョトルが、弁護士資格を取るための最終試験である面接を受けている。
なぜ弁護士になりたいのか、と質問された彼は、死刑制度に反対なのだと言う。
ヤツェクは映画館に行く。
窓口の女性に今やっている映画がどんなのか尋ねると、「つまらないよ」、
「男と女が出会って、別れる話」・・
ヤツェクは写真屋に入り、折り目のついた少女の写真を引き伸ばして欲しい、と言う。
彼は「写真屋って、写真に写った人が生きてるか死んでるかわかるって本当?」と尋ねる。
ヤツェクはカフェに入る。
紅茶を頼むが、ないと言われ、仕方なくミルクとケーキを注文する。
近くのタクシー乗り場の場所を尋ねる。
彼は、なぜか太い縄をリュックに入れている・・。
無事、試験に合格したピョトルは、すぐにカフェに入り、電話を借りて妻に知らせる。
コーヒーを注文し、ヤツェクがケーキを食べている時、近くの席に座って飲む。
身重の妻を病院に連れて行くためタクシーに乗ろうとするが、一台しかいないタクシーの運転手は
洗車中だと断る。しかも、彼が待っているのを知っているのに、洗車が終わると意地悪く車を出してしまう。
ヤツェクはタクシーに乗り込む。
人けのない場所に止めると、運転手が不審がる。
突然ヤツェクは、手にした縄で運転手の首を絞める。
運転手は苦しみもがき、抵抗するが、ヤツェクは執拗に絞め続ける。
運転手が地面に倒れ、死んだかと思ったが、片手を挙げて何か必死に声を出す。
ヤツェクは近くにあった石を持ち上げて、運転手の頭を殴り出す。
そうして完全に息の根を止めると、車に戻り、運転手の食べかけのパンか何かをむさぼり喰い、金を盗む。
その後、ヤツェクは捕まったらしい。
裁判で、ピョトルが彼の弁護をしたらしいが、結果は有罪で死刑。
ピョトルは、弁護士として初めて臨んだ裁判で負けた。
失意に沈む彼に、裁判長は温かい言葉をかける。
だが、彼があまりに落ち込んでいるので、「あなたは繊細過ぎる。この仕事には向いていないかも知れませんね」と言うのだった。
連れて行かれるヤツェクを見て、ピョトルは思わず「ヤツェク!」と叫ぶ。
ヤツェクの処刑の日。
検事も立ち会う。
検事はピョトルに「お子さんが生まれたそうですね」
ええ。2日前に。息子が。
「おめでとう」
ピョトルはヤツェクが会いたがっていると聞いて、会いに行く。
ヤツェクは妹のことを話す。
5年前、妹がまだ小6で12歳の時、彼女はトラクターに轢かれて死んだ。
ヤツェクと友人が家の酒を飲み、友人がトラクターを運転して彼女を轢いた。
ヤツェクには兄が4人いた。妹は6人兄妹の末っ子で、やっと生まれた女の子だった。
その後、ヤツェクは家にいられなくなって村を出た。
両親は、妹の好きだった野原に墓を買った。
父は妹の死後、死んだようだった。
「先生がオレの名前を呼んだ時、先生は敵じゃないって思った」
「オレの周りはみんな敵ばっかりだった」
・・君じゃなくて君のしたことに対してだよ
「違いがわかんねえ」
「父と妹の間にオレを埋めてほしい」
ピョトルが死刑囚ヤツェクと接見していると、係官から何度も電話がかかってくる。
まだかまだか、と。
話をじっくり聴いてやりたいピョトルは、しまいに怒り出す。
だが、ついに時間切れとなり、会話は途中で打ち切られる。
医者と聖職者が直前に現れ、それぞれの仕事をする。
脈を計ったり、手にキスをさせて祝福?したり。
それから人々は、ヤツェクを2階の処刑台の前に連れて行き、宣告文を読み上げ、首吊り縄にかけようとするが、
ヤツェクは泣き叫び、さんざん抵抗する・・。
ピョトルは、初めての仕事でつらい挫折を味わい、地に突っ伏す。
~~~ ~~~ ~~~
弁護士との接見が刑の執行当日とは。
もっと時間をかけて話を聴いて欲しかっただろうに。
日本では1人殺しても死刑にはならないので、だいぶ違うと感じる。
ただ、最後まで彼の動機がわからない。
そもそもそんなもの、なかったのか。
彼は、この世のどこにも居場所がないと感じている。
若者の、そんな空漠たる心象風景が悲しい。
十戒の第5戒は、「殺してはならない」。
タクシー運転手を殺害した青年と、若い弁護士。
死刑判決を受けた青年を救えなかった弁護士の悲嘆。
街中でたまたま、傲慢で好色な中年の運転手のタクシーに乗り込んだ
20歳の青年ヤツェクは、人気のない野原で運転手の首を絞め、
命乞いする彼を撲殺する。殺人により法廷で有罪判決を受けたヤツェクの
弁護を担当したのは、新米弁護士のピョトルだった・・・(チラシより)。
若い男ヤツェクが2階から石を落とすと、下で車が事故を起こす大きな音がする。
タクシー運転手が洗車中。
老人が鳩に餌をやっている。
ヤツェクが来ると、「あっちへ行け」「鳩が怯えてる」
するとヤツェクは立ち去りかけるが、すぐに戻って来てわざと鳩たちを蹴散らす。
鳩たちは驚いて飛んで行ってしまう。
ピョトルが、弁護士資格を取るための最終試験である面接を受けている。
なぜ弁護士になりたいのか、と質問された彼は、死刑制度に反対なのだと言う。
ヤツェクは映画館に行く。
窓口の女性に今やっている映画がどんなのか尋ねると、「つまらないよ」、
「男と女が出会って、別れる話」・・
ヤツェクは写真屋に入り、折り目のついた少女の写真を引き伸ばして欲しい、と言う。
彼は「写真屋って、写真に写った人が生きてるか死んでるかわかるって本当?」と尋ねる。
ヤツェクはカフェに入る。
紅茶を頼むが、ないと言われ、仕方なくミルクとケーキを注文する。
近くのタクシー乗り場の場所を尋ねる。
彼は、なぜか太い縄をリュックに入れている・・。
無事、試験に合格したピョトルは、すぐにカフェに入り、電話を借りて妻に知らせる。
コーヒーを注文し、ヤツェクがケーキを食べている時、近くの席に座って飲む。
身重の妻を病院に連れて行くためタクシーに乗ろうとするが、一台しかいないタクシーの運転手は
洗車中だと断る。しかも、彼が待っているのを知っているのに、洗車が終わると意地悪く車を出してしまう。
ヤツェクはタクシーに乗り込む。
人けのない場所に止めると、運転手が不審がる。
突然ヤツェクは、手にした縄で運転手の首を絞める。
運転手は苦しみもがき、抵抗するが、ヤツェクは執拗に絞め続ける。
運転手が地面に倒れ、死んだかと思ったが、片手を挙げて何か必死に声を出す。
ヤツェクは近くにあった石を持ち上げて、運転手の頭を殴り出す。
そうして完全に息の根を止めると、車に戻り、運転手の食べかけのパンか何かをむさぼり喰い、金を盗む。
その後、ヤツェクは捕まったらしい。
裁判で、ピョトルが彼の弁護をしたらしいが、結果は有罪で死刑。
ピョトルは、弁護士として初めて臨んだ裁判で負けた。
失意に沈む彼に、裁判長は温かい言葉をかける。
だが、彼があまりに落ち込んでいるので、「あなたは繊細過ぎる。この仕事には向いていないかも知れませんね」と言うのだった。
連れて行かれるヤツェクを見て、ピョトルは思わず「ヤツェク!」と叫ぶ。
ヤツェクの処刑の日。
検事も立ち会う。
検事はピョトルに「お子さんが生まれたそうですね」
ええ。2日前に。息子が。
「おめでとう」
ピョトルはヤツェクが会いたがっていると聞いて、会いに行く。
ヤツェクは妹のことを話す。
5年前、妹がまだ小6で12歳の時、彼女はトラクターに轢かれて死んだ。
ヤツェクと友人が家の酒を飲み、友人がトラクターを運転して彼女を轢いた。
ヤツェクには兄が4人いた。妹は6人兄妹の末っ子で、やっと生まれた女の子だった。
その後、ヤツェクは家にいられなくなって村を出た。
両親は、妹の好きだった野原に墓を買った。
父は妹の死後、死んだようだった。
「先生がオレの名前を呼んだ時、先生は敵じゃないって思った」
「オレの周りはみんな敵ばっかりだった」
・・君じゃなくて君のしたことに対してだよ
「違いがわかんねえ」
「父と妹の間にオレを埋めてほしい」
ピョトルが死刑囚ヤツェクと接見していると、係官から何度も電話がかかってくる。
まだかまだか、と。
話をじっくり聴いてやりたいピョトルは、しまいに怒り出す。
だが、ついに時間切れとなり、会話は途中で打ち切られる。
医者と聖職者が直前に現れ、それぞれの仕事をする。
脈を計ったり、手にキスをさせて祝福?したり。
それから人々は、ヤツェクを2階の処刑台の前に連れて行き、宣告文を読み上げ、首吊り縄にかけようとするが、
ヤツェクは泣き叫び、さんざん抵抗する・・。
ピョトルは、初めての仕事でつらい挫折を味わい、地に突っ伏す。
~~~ ~~~ ~~~
弁護士との接見が刑の執行当日とは。
もっと時間をかけて話を聴いて欲しかっただろうに。
日本では1人殺しても死刑にはならないので、だいぶ違うと感じる。
ただ、最後まで彼の動機がわからない。
そもそもそんなもの、なかったのか。
彼は、この世のどこにも居場所がないと感じている。
若者の、そんな空漠たる心象風景が悲しい。
十戒の第5戒は、「殺してはならない」。
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