12月17日新国立劇場小劇場で、デヴィッド・ヘア作「スカイライト」を見た(演出:小川絵梨子)。
ステージ中央に舞台。客席は舞台をぐるりと囲むように、しかもかなり高くまで設けられている。
評者はLB席という真横の高い所に設けられた席だった。
ロンドン中心部から離れた質素なアパートに暮らすキラ(蒼井優)。ある夜、かつての不倫相手の息子であるエドワード(葉山奨之)が
やって来る。妻を亡くして以来、不安定なままの父親トム(浅野雅博)を助けてほしいと言い残し、彼は去っていく。数時間後、期せずして
トムもまたキラの元へ。三年ほど前に不倫関係が明るみになった日以来、初めて再会した二人。未だ消えぬお互いへの思い、解けない不信感・・・
共有する罪の意識の間で大きく揺れ動く二人の会話は、やがてそれぞれの価値観の違いをぶつけ合う激しいものとなっていく・・・。(チラシより)
二人がどうやって出会い、なぜ別れたのか、少しずつ明らかになってゆく。
キラは知的で精神的に自立した女性。レストランのオーナーであるアリスに雇われて働くうちに、アリスの夫トムと愛し合うようになる。
結果的に自分を信頼しているアリスを裏切り続けたが、アリスは二人の関係には全く気づかない。トムはそんな状況を変えたくて(アリスと
別れたくて)わざと不倫に気づかせるようなことをしたのだった。
キラはそれを見抜いて姿を消し、暖房もろくにないボロアパートに一人住み、教師として働いて何とか暮らしている。
その後アリスはガンで亡くなる。最後まで彼女は二人を許さなかった。
一年後、トムがやって来る。「もうそろそろ潮時かな、と思って」「僕たち、また会ってもいいんじゃないかな」
この粗野な男のどこがいいんだか。
芝居の間、キラが会話しながら、たくさんの野菜を切るところからパスタソースを作り終えるまで舞台上でやってしまう、という趣向が珍しい。
二人の会話が核となり、その前後にエドワードとの会話が置かれた枠構造になっているが、そもそもこの枠がいらない。
特に、トムが帰った後、外は雪が降り出し、キラは再びベッドに横になるが、そこで幕になるかと思いきや、翌朝またエドワードがやって来る
(ホテルの豪華な朝食を持参して)のは、まるで不要。
明るいエンディングにしたかったのかも知れないが。
それに(蛇足だが)、日本人は英国式朝食にはそそられない。もっとおいしいものがいっぱいあるのだから。
納得の行かない点をまとめると、主に次の3点。
➀ 構成がまずい。不自然。
➁ 手紙が重要なモチーフだが、これも現代ではあまりに不自然。第一、彼らは携帯を使っているし。時代錯誤でわざとらしい。
➂ ヒロインの生き方に疑問。
彼女は確かに潔い。リッチな暮らしを惜しげもなく捨てて自分のできることをして一人自活している。教師として苦労しながら。
だがトムはアリスの愛する夫。それを6年間奪い続けて「幸せだった」と回想するとは・・・。
夫婦関係が破綻していたのならともかく、アリスは何も知らず、二人を信頼していたのだから。
6年の間、キラは良心に一片の呵責もなかったのか?
というわけで、残念ながら男にも女にも共感できない。
この芝居は、主演女優が料理する全工程を見せるという趣向が物珍しいだけ。
あとはただ話をこねくり回しただけ。
浅野雅博はリッチだが粗野で子供っぽい男を好演。
蒼井優もよかった。相変わらず若々しく瑞々しく強い。
ステージ中央に舞台。客席は舞台をぐるりと囲むように、しかもかなり高くまで設けられている。
評者はLB席という真横の高い所に設けられた席だった。
ロンドン中心部から離れた質素なアパートに暮らすキラ(蒼井優)。ある夜、かつての不倫相手の息子であるエドワード(葉山奨之)が
やって来る。妻を亡くして以来、不安定なままの父親トム(浅野雅博)を助けてほしいと言い残し、彼は去っていく。数時間後、期せずして
トムもまたキラの元へ。三年ほど前に不倫関係が明るみになった日以来、初めて再会した二人。未だ消えぬお互いへの思い、解けない不信感・・・
共有する罪の意識の間で大きく揺れ動く二人の会話は、やがてそれぞれの価値観の違いをぶつけ合う激しいものとなっていく・・・。(チラシより)
二人がどうやって出会い、なぜ別れたのか、少しずつ明らかになってゆく。
キラは知的で精神的に自立した女性。レストランのオーナーであるアリスに雇われて働くうちに、アリスの夫トムと愛し合うようになる。
結果的に自分を信頼しているアリスを裏切り続けたが、アリスは二人の関係には全く気づかない。トムはそんな状況を変えたくて(アリスと
別れたくて)わざと不倫に気づかせるようなことをしたのだった。
キラはそれを見抜いて姿を消し、暖房もろくにないボロアパートに一人住み、教師として働いて何とか暮らしている。
その後アリスはガンで亡くなる。最後まで彼女は二人を許さなかった。
一年後、トムがやって来る。「もうそろそろ潮時かな、と思って」「僕たち、また会ってもいいんじゃないかな」
この粗野な男のどこがいいんだか。
芝居の間、キラが会話しながら、たくさんの野菜を切るところからパスタソースを作り終えるまで舞台上でやってしまう、という趣向が珍しい。
二人の会話が核となり、その前後にエドワードとの会話が置かれた枠構造になっているが、そもそもこの枠がいらない。
特に、トムが帰った後、外は雪が降り出し、キラは再びベッドに横になるが、そこで幕になるかと思いきや、翌朝またエドワードがやって来る
(ホテルの豪華な朝食を持参して)のは、まるで不要。
明るいエンディングにしたかったのかも知れないが。
それに(蛇足だが)、日本人は英国式朝食にはそそられない。もっとおいしいものがいっぱいあるのだから。
納得の行かない点をまとめると、主に次の3点。
➀ 構成がまずい。不自然。
➁ 手紙が重要なモチーフだが、これも現代ではあまりに不自然。第一、彼らは携帯を使っているし。時代錯誤でわざとらしい。
➂ ヒロインの生き方に疑問。
彼女は確かに潔い。リッチな暮らしを惜しげもなく捨てて自分のできることをして一人自活している。教師として苦労しながら。
だがトムはアリスの愛する夫。それを6年間奪い続けて「幸せだった」と回想するとは・・・。
夫婦関係が破綻していたのならともかく、アリスは何も知らず、二人を信頼していたのだから。
6年の間、キラは良心に一片の呵責もなかったのか?
というわけで、残念ながら男にも女にも共感できない。
この芝居は、主演女優が料理する全工程を見せるという趣向が物珍しいだけ。
あとはただ話をこねくり回しただけ。
浅野雅博はリッチだが粗野で子供っぽい男を好演。
蒼井優もよかった。相変わらず若々しく瑞々しく強い。
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