ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

劇団プロペラ「ヴェニスの商人」

2009-07-13 21:50:37 | 芝居
 7月7日東京芸術劇場中ホールで、シェイクスピア作「ヴェニスの商人」を観た(劇団プロペラ、演出エドワード・ホール)。
 この劇団は今ロンドンで評判の、男ばかりの集団で、今回「ヴェニス・・」と「夏の夜の夢」とを引っ下げて来日した。

 舞台には何もなく、周囲に鉄製のやぐらが組んであるのみ。男達は皆同じ粗末な服で、どうも刑務所の中らしい。鉄格子を叩いたり、開けたり閉めたり人を閉じ込めたり、床を拭き掃除したり・・そう、彼らは囚人なのだった!

 彼らは太鼓、トランペット、リコーダーなどの楽器を上手に演奏する。特に合唱がいい。と言っても演技のつなぎなどに移動しつつハミングしたりする程度だが、その小声の合唱が美しい。

 冒頭、公爵が「どっちがクリスチャンでどっちがユダヤ人だ?」と尋ね、アントーニオとシャイロックが出てくるので驚いたが、そのシーンはそれでおしまいだった。最後にまたこのシーンが繰り返されたが、こんな所を強調してどうしようというのだろうか。

 ポーシャは小柄な黒人で、口紅とハイヒールとそれなりの衣裳だが、ネリッサには驚いた。背の低いがっしりしたおじさんで、乳首丸見え、網タイツが実に不気味。

 シャイロックは cockney(ロンドンの下町なまり)でしゃべる。"I hate [hait] him ・・・”ときた。

 ランスロット・ゴボーは看守(役)が演じる。父ゴボーは省略。看守だから当然だが、彼は誰に対しても偉そうに振舞う。一人だけいい服を着ているし。

 ジェシカは小柄。スカーフをかぶり悲しげな表情で、忍従の女という感じですぐそれと分かる。少年の姿になると称してスカーフを取ると、頭はツルツル。なるほど面白い。

 アラゴン大公の、スペイン人っぽい英語の発音が楽しい。(これはどんな演出でもそうだが。)
 銀の箱には阿呆の人形ではなく鏡が入っていた。

 「ユダヤ人には目がないか?・・・」というシャイロックの例の名セリフ(第3幕第1場)の後、舞台には彼と若い白人の二人だけになり、シャイロックはその男の両手を鉄格子にくくりつけて片目をくり抜き、双方血だらけに!やめてくれ~。「リヤ王」じゃないんだから。
 ここを頂点として、他にも暴力的なシーンが時々見られる。

 彼らのセリフ回しは美しいので、合唱と合わせて耳の楽しみは十分だが、所詮男性ばかりなので、目の楽しみが少なかった。

 ポーシャ役の黒人男性を見ていたら、’92年1月に来日し「お気に召すまま」でヒロイン、ロザリンドを演じた、劇団「チーク・バイ・ジャウル」のエイドリアン・レスターを思い出した。ロザリンドを黒人男性がやるなどということは想像もできなかったが、これが思いがけず素晴らしかったので、彼の名は忘れられない。彼はその後’01年6月にも来日し、ピーター・ブルック脚色・演出の「ハムレットの悲劇」で題名役をやり、これがまたよかった。いつかまた彼の演技を見ることができるだろうか。

 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「鳥の飛ぶ高さ」 | トップ | 劇団プロペラ「夏の夜の夢」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

芝居」カテゴリの最新記事