ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「デカローグ Ⅱ ある選択に関する物語」

2024-05-02 21:16:02 | 芝居
4月22日新国立劇場小劇場で、クシシュトフ・キエシロフスキ作「デカローグ Ⅱ ある選択に関する物語」を見た(演出:上村聡史)。



交響楽団のバイオリニストである30代の女性ドロタと、彼女と同じアパートに住む老医師の二人。
ドロタは重い病を患って入院している夫アンジェイの余命を至急知りたいと尋ねる。
ドロタは愛人との間にできた子を妊娠していた・・・。

下手のベッドに男が寝ている。そばで女が見ている。

集合住宅の医師(益岡徹)の部屋を女(前田亜希)が訪問する。
「ドロタです。上の階に住んでいます。ご存じですか」
「ああもちろん。2年前、私の犬を轢いた」
「主人の容態を知りたいんです」
「水曜の3時から5時の間に来なさい」
「今日は月曜日、水曜まで待てません!」
医師が断ると、ドロタは「犬でなく、あんたを轢けばよかった」と捨てゼリフを残して去る。

医師の部屋に若い男(亀田佳明)が来る。
ベランダの鉢植えの世話をして、医師の話を聴く。
カウンセラーなのだろうか。
医師は昔の身の上話をする。男は終始セリフ無く、聴いている。

ドロタは病院に行き、医師と話す。
チェーンスモーカーで、タバコを吸いまくる。
彼女は米国のように「告知」をして欲しいと言う。
医師は「本に書いてあることから言えば死ぬことは確かだが、見込みのないはずの患者が助かった例を幾度も見て来た。
反対に、特に悪くなかったのに死んでいった人もたくさんいた。告知なんてできない」

ドロタはまた医師の家に行く。
またタバコ。
実は、私妊娠してるんです。
子供の父親は夫じゃなくて別の人です。
・・二人を愛することができるんですよ。
私たち、なかなか子供ができなくて。今、この子をおろしたら、年齢的に、もう子を持つことはできません。
でも夫が死ななかったら、子供を産むことはできません。
・・先生は神を信じますか。
神?・・・私は私の神を信じている。
じゃあそのあなたの神にひざまずけばいい、と言い放って女は去る。

医師の家では給湯器の具合が悪い。
そこで、会話の途中、彼は彼女に尋ねる。
お宅では風呂場のお湯は出ますか?
・・鍋で沸かしています。
彼女の部屋でもやはりお湯は出ないようだ。

ドロタは部屋に戻ると、机の上の鉢植えの葉をじっと見ていたかと思うと、全部むしり取る。
恋人ヤネク(近藤隼)が来る。
ドロタの夫アンジェイとは山岳クラブで仲間だったらしい。
「アンジェイのリュック持って来た」とリュックを置く。
もうお葬式の用意?!
持って帰って!

ヤネクから留守電。
だがドロタは出ない。

ドロタは別の若い医師(近藤隼)と面談する。
医師「順調ですよ」
ドロタ「私、堕ろさないといけないんです」
医師「・・順調なのに?」
「ええ」
明日の朝9時に、中絶手術をすると決まる。

ヤネクからの電話にようやく出る。
中絶のことを告げると、彼は驚いたらしく、しばし考えて「アンジェイが死んだら僕と別れるつもりだね」
ええ
僕は君と一緒にいたい!
だが彼女は電話を切る。

病院で、医師は病巣の変化に気づいて驚く。

ドロタはまた医師の部屋に行き、告げる。
いいお知らせです。明日の朝一番に子供を堕ろします。
やめなさい!絶対いけない!ご主人は死ぬ!
言い切れますか?
間違いない。転移していて・・

ところが、その後アンジェイは生き返った。
彼は、まだよろめきながら医師の前にやって来て言う。
妻と僕に子供が生まれるんです!二重の喜び!
・・・幕

妊婦がタバコを吸いまくる。
現代ではあり得ない光景だが、この作品が作られた1988年当時は、喫煙の害について、まだ認識されていなかったのだろう。
この医師には、かつて家族を一夜にして失ったという壮絶な過去がある。
戦争か災害、おそらく戦争でだろう。

十戒の第2戒は、カトリックでは「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」。
この話とどういう関連があるのかは、よくわからない。







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