ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「作者を探す六人の登場人物」

2017-12-17 22:22:19 | 芝居
11月3日神奈川芸術劇場中スタジオで、ピランデッロ作「作者を探す六人の登場人物」を見た(上演台本・演出:長塚圭史)。

舞台上では、ある劇団の稽古が始まろうとしている。と、客席からいきなり、黒づくめの喪服姿の異様な6人(大人4人と子供2人)が稽古場
である舞台へ闖入して来る。彼らは自分たちの「作者」を探している、と訳の分からないことを真剣に訴える。
演出家は始め、邪魔しないで出て行ってくれと言うが、その中の「父親」と「娘」だと言う二人の訴えを聞くうち、興味をそそられる。ついには
彼らに言われるまま、彼らの「物語」を上演することになる。まず彼らにやってもらい、プロンプターに彼らのセリフをすべて書き留めさせ、台本
を作り、それを元に劇団の役者たちが演じることになる。ところが父親も娘も、私たちとは違う、と言ってなかなか受け入れないが、しまいに
諦めて見物する。
彼らの話の内容は次のようなものだ。
父と母の家に、父が秘書(執事?)を雇うが、母は彼と親密な関係になる。父は彼を追い出す。母は家を出る。母は終始悲しげで泣いてばかり
いる。母は4人の子(男2人女2人)を皆自分の子だと言うが、長男は母の記憶がなく、母と3人の子がいきなり家にやって来て金をくれとせびった、
と反感を抱いている。長女は父にも母にも弟たちにも憎しみを隠さない。下の弟を何度も「この馬鹿」と口汚く罵る。妹に対してだけ優しい。

この物語は「娘」と「父」がそれぞれ語るのだが、とにかく錯綜していてよく分からない。ただ彼らの間にものすごい情念が渦巻いていること
だけは確かだ。その重苦しさ、激しさに圧倒され、しかも謎が謎を呼ぶので、劇団員たち(と我々観客)は、つい真相に近づきたくなる。
だが真相などそもそもあるのだろうか?

彼らの話を聞いているうちに、何だか知らないけど面白そうだぞ、今稽古している芝居よりも、と劇団員たちが興味をそそられるのがおかしい。
曖昧宿の女主人マダーマ・パーチェの登場シーンも面白い。
彼女を誘い出すために帽子を貸してほしい、と父が言って団員たちの帽子を壁に掛けると、アーラ不思議、それに誘われるように奇抜なピンクの
衣装に身を包んだマダーマが巨体を現す。皆ワーッと逃げ出す。
しかも口を開くと彼女は少々訛りがあってこれまた面白い。劇団員たちも喜ぶ。

マダーマの家で、娘が体を売るために客を待っている部屋に、相手が娘とは知らず父が入って来るシーン。
現実にあったというこの出来事を父がやって見せ、次に役者がやり、更に演出家がやって見せ、もう一度役者がやる。これが面白い。

2幕では庭のシーン。小さな池があり、不穏な様子。実際次女は池で溺死。次男は近くの木陰でピストル自殺してしまう。しかもそれは演技では
なく現実なのだった・・・。一体何??

父親役の山崎一が秀逸。
演出家役の人も好演。この二人がうまくないと、この芝居はとても見ていられないだろうが。
継娘役の安藤輪子もいい。

上演台本は、古い時代の原作を現代風にうまくアレンジしていて楽しい。
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