ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「トーマの心臓」

2011-01-06 21:20:33 | 芝居
2010年3月に紀ノ国屋ホールで上演された萩尾望都原作「トーマの心臓」を、先日TVで観た(劇団スタジオライフ公演、演出:倉田淳)。

原作は昔読んでいたが、すっかり忘れてしまっていた。観ているうちに次第に思い出すのもなかなか乙なものだ。

ドイツの「シュロッターベッツ」という名のギムナジウム(全寮制高等中学校)が舞台。
転校生エーリクは、行く先々で生徒たちにまじまじと見つめられ、怒り出す。実は彼は、数日前に転落死したトーマという生徒と瓜二つだった・・・。金髪で明るい少年トーマは誰からも愛されていたが、その死はただの事故死ではなかった・・・。
優等生だが行き場のない悲しみを抱える黒髪のユーリ、包容力のある魅力的な先輩オスカー、やんちゃで可愛いエーリク・・・。それぞれが複雑な家庭の事情を抱えている。そして誰もが誰かに恋している。ちょっとチェーホフの「かもめ」の少年版みたいだ。片想いの苦しみ、憧れ。屈折した思いを内に抱え、彷徨する少年たち。まさしく萩尾望都の世界。懐かしくもいとおしい、甘やかな耽美の世界。
実は筆者は、今でも萩尾望都という文字を見ると何だかおいしいものを前にした時のようなときめきを覚えるのです・・。

愛と死、二組の父と息子の和解。
謎解きの興味もあり、ぐいぐい引っ張って行かれる。ただ、多く詰め込み過ぎのような感じはする。神学的に見ると妙なところもある。人間は人間の魂を救うことはできないし、ましてやそのために自殺して「自分を犠牲に」するなどということはもってのほかだ。
場面転換が多いのも気になるが、それは漫画の特性なのだろうか。

一番問題なのは音楽。バッハのゴルトベルク変奏曲など多過ぎて、いささか邪魔。特にグノーのアベ・マリアが執拗に使われ、うんざり。一ヶ所だけ使われるのだったらどんなに心に沁みて効果的だったろうか。残念だ。


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