ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

マクドナー作「スポケーンの左手」

2016-01-11 00:08:10 | 芝居
11月17日シアタートラムで、マーティン・マクドナー作「スポケーンの左手」をみた(翻訳・演出:小川絵梨子)。

古ぼけたホテルの一室に宿泊する中年男カーマイケル(中嶋しゅう)。彼は27年間も失くした左手を探していた。そこへ若い詐欺師カップル、
マリリン(蒼井優)とトビー(岡本健一)が現れ、彼に手を売ろうとする。一方ホテルのフロント係マーヴィン(成河)はちょくちょく現れては
3人の対立をけしかけるが…。

あのマクドナーが不条理劇を書いたのか?!と思ったが、やはりそうではなかった。
ここではみんな程度の差こそあれイカレてる。一番はカーマイケルだろうが、途中からマーヴィンが彼に勝るとも劣らない位「変」だということが
分かってくる。この世に生きること自体に違和感を抱いているような二人。
カーマイケルが左手を失った事情は不明なままだが、観客にはぼんやりと真相が見えてくる。
幼児期のトラウマ。親、特に母親との関係。これが作者マクドナーの一貫した関心事なのかも知れない。かつて見た「ビューティー・クイーン・オブ・
リナーン」でも娘と母親との重苦しい関係が息苦しいほどに描かれていた。

キャスティングがいい。しかも役者がみなうまいので、楽しく見られた。
トビー役の岡本健一。この人はリチャード三世、そして特に、サルトルの「アルトナの幽閉者」での熱演が忘れ難い。
マーヴィン役の成河(ソンハ)。彼は「夏の夜の夢」のパック、IRA の若い兵士役など何度も見てきたが、この役は、まるで彼に当て書きされた
かのように、怖いほどぴったりだ。
カーマイケル役の中嶋しゅう。「恐るべき大人たち」などで見たことがあるが、この人の存在感もこの役にうってつけ。
マリリン役の蒼井優。彼女は高い声が出るばかりか、すごくでかい声も出せる。体も柔らかいし、「サド侯爵夫人」の題名役の時よりずっといい。
この4人をそろえたキャスティングで、半ば成功したと言える。

演出もいい。とにかくテンポが快適。

黒タイツに短パンというマリリンの格好もいい(衣装:前田文子)。この芝居で要求される、どんな激しい動きをしても大丈夫な上に、蒼井優の
若さ可愛さが引き立っている。


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