1964年の今日(12月29日)は「 三木露風 (詩人『赤とんぼ』) 」の忌日。[1889年6月23日生] <75歳>
1 夕焼小焼の 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か
2 山の畑の 桑の実を 小かごに摘んだは まぼろしか
3 十五でねえやは 嫁にゆき お里のたよりも 絶えはてた
4 夕焼小焼の 赤とんぼ とまっているよ 竿の先
『赤とんぼ』(「真珠島」より)作詞:三木露風、作曲:山田耕筰
三木 露風(ろふう)と言えば、誰でも、この有名な『赤とんぼ』を思い出すだろう。彼は我が地元、兵庫県揖西郡龍野町(後の龍野市、現在のたつの市)出身の詩人である。戦前を代表する抒情派詩人の一人で、相馬御風、野口雨情らと早稲田詩社を結成。詩集『廃園』は北原白秋の『邪宗門』と並び称され、文学史上「白露時代」と呼ばれる一時代を築いた。本名は三木 操(みさお)。父の放蕩が原因で、母は彼が7歳の時に家を出ている。その後、祖父の家に引き取られ、お手伝いの姐やに養育されたという。小・中学生時代から詞や俳句・短歌を新聞や雑誌に寄稿、17歳で処女詩集を、20歳で代表作の「廃園」を出版するなど早熟の天才であった。1918(大正7)年ころから鈴木三重吉の赤い鳥運動に参加し童謡を手掛ける。『赤とんぼ』は、1921(大正10)年、露風32歳のとき、北海道のトラピスト修道院で作られた。この詩について、露風自身が、「赤とんぼのこと」という文章のなかで、この詩は小さいときの思い出を詠ったものだと語っている。幼くして離別した母に対する慕情とふるさとに対する望郷の思いが、この『赤とんぼ』の詩を作らせたのであろう。
この童謡『赤とんぼ』は、はじめ『赤蜻蛉』と題して「樫の実」に掲載され、 ついで、童謡集「真珠島」に発表され、1927(昭和2)年に、山田耕筰によって作曲されて全国を風靡した。露風は題名を漢字に変えただけでなく詩も少し改稿をしている。
たとえば、「赤蜻蛉」(樫の実)の第1節は、
「夕焼、小焼の、山の空、 負われて見たのは、まぼろしか」となっていたものを、「真珠島」では、「夕焼小焼の 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か」となっている。
(樫の実)の第2節は、
「山の畑の、桑の実を、小籠に摘んだは、いつの日か」となっていたものを「山の畑の 桑の実を 小かごに摘んだは まぼろしか」と改稿している。
赤蜻蛉(赤とんぼ)は、トンボ目トンボ科アカネ属 に含まれる蜻蛉の総称である。この詩の第4節には露風が13歳の頃に作った「赤蜻蛉とまっているよ竿の先」の俳句が歌いこまれている。この第4節は、「樫の実」も「真珠島」も同じであるが、俳句で使われていた「赤蜻蛉」は、この詩ではいずれも「赤とんぼ 」とひらがなを使用している。
詩の中では「赤とんぼ」とひらがなを使っているにも関わらず、最初の「樫の実」の題名には、とんぼの古名に由来する蜻蛉(とんぼ)の漢字を使っているが、これは、トンボの漢字の「蜻蛉(かげろう)」を「赤とんぼ=赤い陽炎(かげろう)」に見立てたのではないだろうか?。露風は、北海道の地平線の向うに隠れた夕日が炎のような陽炎「「夕焼け小焼け」を意味するものとして、この詩の題名としたように思われる。私は見たことがないが、北海道などでは、夕日は夕焼けと一般的に言うそうだが、実は夕日が沈んで暗くなった後に、もう一度赤く光る「夕焼け」が見えのだそうで、これを「小焼け」というのだそうだ。だから、「小焼け」は国語の辞書などに乗っているような「夕焼け」の語調を整えるとともに、時の流れを凝縮して言いあらわすものだけではないようだ。それで、最初の「樫の実」では、第1節は「真珠島」の「夕焼小焼の 赤とんぼ」ではなく「夕焼、小焼の、山の空」だったのだろう。それを、児童用に判りやすく、改稿したのではないかと思われる。曲の情感に加えて、詞の「とまっているよ 竿の先」に潜んでいる寂しい思いが伝わってくるすばらしい詩ではある。
露風は「詩人は言葉を生み、詩人は言葉に対する愛を持たねばならぬ」といっているという。日本の詩歌史に不朽の足跡を留めた。詩集「廃園」のほか「寂しき曙」「白き手の猟人」などがある。
晩年、東京・三鷹の地でひそかに詩を書き続けた彼は、1964(昭和39)年12月29日、不幸にも自宅付近で交通事故に遭い、75歳でこの世を去った。
二木紘三のMIDI歌声喫茶には、歌詞つきのMIDIがある。以下です。
赤とんぼ
(画像は夕焼け。お友達のララさんよりの頂き物画像)
参考:
三木露風
http://www.shougai.city.mitaka.tokyo.jp/mitaka/tekuteku1999/a_data/a_0230.html
早稲田と文学(三木露風)
http://www.littera.waseda.ac.jp/sobun/m/mi008/mi008p01.htm
はてな 夕焼けこやけの「こやけ」の意味を ...
http://www.hatena.ne.jp/1063965340
「夕焼けこやけ」の茜蜻蛉(あかとんぼ)
http://www.hirax.net/dekirukana7/tonbo/
1 夕焼小焼の 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か
2 山の畑の 桑の実を 小かごに摘んだは まぼろしか
3 十五でねえやは 嫁にゆき お里のたよりも 絶えはてた
4 夕焼小焼の 赤とんぼ とまっているよ 竿の先
『赤とんぼ』(「真珠島」より)作詞:三木露風、作曲:山田耕筰
三木 露風(ろふう)と言えば、誰でも、この有名な『赤とんぼ』を思い出すだろう。彼は我が地元、兵庫県揖西郡龍野町(後の龍野市、現在のたつの市)出身の詩人である。戦前を代表する抒情派詩人の一人で、相馬御風、野口雨情らと早稲田詩社を結成。詩集『廃園』は北原白秋の『邪宗門』と並び称され、文学史上「白露時代」と呼ばれる一時代を築いた。本名は三木 操(みさお)。父の放蕩が原因で、母は彼が7歳の時に家を出ている。その後、祖父の家に引き取られ、お手伝いの姐やに養育されたという。小・中学生時代から詞や俳句・短歌を新聞や雑誌に寄稿、17歳で処女詩集を、20歳で代表作の「廃園」を出版するなど早熟の天才であった。1918(大正7)年ころから鈴木三重吉の赤い鳥運動に参加し童謡を手掛ける。『赤とんぼ』は、1921(大正10)年、露風32歳のとき、北海道のトラピスト修道院で作られた。この詩について、露風自身が、「赤とんぼのこと」という文章のなかで、この詩は小さいときの思い出を詠ったものだと語っている。幼くして離別した母に対する慕情とふるさとに対する望郷の思いが、この『赤とんぼ』の詩を作らせたのであろう。
この童謡『赤とんぼ』は、はじめ『赤蜻蛉』と題して「樫の実」に掲載され、 ついで、童謡集「真珠島」に発表され、1927(昭和2)年に、山田耕筰によって作曲されて全国を風靡した。露風は題名を漢字に変えただけでなく詩も少し改稿をしている。
たとえば、「赤蜻蛉」(樫の実)の第1節は、
「夕焼、小焼の、山の空、 負われて見たのは、まぼろしか」となっていたものを、「真珠島」では、「夕焼小焼の 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か」となっている。
(樫の実)の第2節は、
「山の畑の、桑の実を、小籠に摘んだは、いつの日か」となっていたものを「山の畑の 桑の実を 小かごに摘んだは まぼろしか」と改稿している。
赤蜻蛉(赤とんぼ)は、トンボ目トンボ科アカネ属 に含まれる蜻蛉の総称である。この詩の第4節には露風が13歳の頃に作った「赤蜻蛉とまっているよ竿の先」の俳句が歌いこまれている。この第4節は、「樫の実」も「真珠島」も同じであるが、俳句で使われていた「赤蜻蛉」は、この詩ではいずれも「赤とんぼ 」とひらがなを使用している。
詩の中では「赤とんぼ」とひらがなを使っているにも関わらず、最初の「樫の実」の題名には、とんぼの古名に由来する蜻蛉(とんぼ)の漢字を使っているが、これは、トンボの漢字の「蜻蛉(かげろう)」を「赤とんぼ=赤い陽炎(かげろう)」に見立てたのではないだろうか?。露風は、北海道の地平線の向うに隠れた夕日が炎のような陽炎「「夕焼け小焼け」を意味するものとして、この詩の題名としたように思われる。私は見たことがないが、北海道などでは、夕日は夕焼けと一般的に言うそうだが、実は夕日が沈んで暗くなった後に、もう一度赤く光る「夕焼け」が見えのだそうで、これを「小焼け」というのだそうだ。だから、「小焼け」は国語の辞書などに乗っているような「夕焼け」の語調を整えるとともに、時の流れを凝縮して言いあらわすものだけではないようだ。それで、最初の「樫の実」では、第1節は「真珠島」の「夕焼小焼の 赤とんぼ」ではなく「夕焼、小焼の、山の空」だったのだろう。それを、児童用に判りやすく、改稿したのではないかと思われる。曲の情感に加えて、詞の「とまっているよ 竿の先」に潜んでいる寂しい思いが伝わってくるすばらしい詩ではある。
露風は「詩人は言葉を生み、詩人は言葉に対する愛を持たねばならぬ」といっているという。日本の詩歌史に不朽の足跡を留めた。詩集「廃園」のほか「寂しき曙」「白き手の猟人」などがある。
晩年、東京・三鷹の地でひそかに詩を書き続けた彼は、1964(昭和39)年12月29日、不幸にも自宅付近で交通事故に遭い、75歳でこの世を去った。
二木紘三のMIDI歌声喫茶には、歌詞つきのMIDIがある。以下です。
赤とんぼ
(画像は夕焼け。お友達のララさんよりの頂き物画像)
参考:
三木露風
http://www.shougai.city.mitaka.tokyo.jp/mitaka/tekuteku1999/a_data/a_0230.html
早稲田と文学(三木露風)
http://www.littera.waseda.ac.jp/sobun/m/mi008/mi008p01.htm
はてな 夕焼けこやけの「こやけ」の意味を ...
http://www.hatena.ne.jp/1063965340
「夕焼けこやけ」の茜蜻蛉(あかとんぼ)
http://www.hirax.net/dekirukana7/tonbo/