◆撮影:2012年9月16日、富士山五合目より
2012年10月13日(土)
『山野逍遥』
<ほしだ園地>
[私市駅]11:10→[星の里いわふね]11:50→(かわぞいの路)12:10→[星の里いわふね]→16:05[私市駅]
<J太郎は怖がり>
私市駅舎から直ぐのところ、駐車場の金属製網目の柵に絡んで伸び上がるホオズキ(?)相手にJ太郎が遊んでいると其処に家族連れがやって来た。その中の小学校中級学年くらいの女の子が、「これ私の学校にもあるよ、フウセンカズラっていうねん」と話した。僕にはホウセンカズラとも聴こえたので、「ホウセンカズラ?」と訊き返すと、隣に居られたお父さんが「果実が風船みたいやからそう言っているだけと違うんか」と娘さんに仰っりつつ笑った。J太郎は先日よりこの植物が至極気にいってしまい、帰路には15分以上もの間フウセン相手に遊び続けた。「お母さんが待っているよ」「お祖母ちゃんも待っているよ」と度々声を掛けるが、彼の耳にはなかなか届かなかった。
“星の里いわふね”を過ぎ森中へ入り桐の高木並木を過ぎ暫く歩いたころ、樹木が鬱蒼と茂り何となく薄暗くなったとき、堤でもあるのだろうか、雑木林の向こうを流れる川音が少し激しくなったとき、「もう帰ろう」とJ太郎が呟いた。そのときのJ太郎の心根に如何なる感情が生じていたのかは知る由もないが、きっとそのときの周辺の雰囲気にJ太郎なりの“恐怖”を感じたのだろうと思う。
また、“星の里いわふね”の川辺の大石が階段状に巧みに積み上げられている処で遊ぶとき、J太郎が僕の顔をみつつ岩と岩の隙間を指差す。よく見るとそこには仰向けに転がったミンミンゼミの死骸があった。「死んでいるから触っても動かへんで」と僕が言うと、J太郎は安堵した様子でそっと触った。次はツチイナゴだ。ミンミンゼミの死骸があった一段上の石上に薄茶色のバッタが静止している。それは一見死んでいるかのようにも見えたが、しっかりと見ると6本の足でしっかりと立っているのが分かった。「生きているみたいやけど、触っても大丈夫やで」とJ太郎に触るよう促したが、手を出す気配がない。僕が指を出すと瞬時にその場から姿を消した。
“星の里いわふね” のバーベキュー場下方に意外と綺麗な天ノ川の流れがある、その川辺でお弁当にした。上さんが作ってくれたJ穣太郎のためのお弁当箱と、僕のためのものの二つのお弁当箱があったが、中身はまったく同じで量が違うだけだ。柿と蜜柑も皮を剥いて他の容器に入っていて、J太郎はそれらをしっかりと食べ尽くした。また魔法瓶に入った熱いお茶がお気に入りで、「あついッ!」と言って美味しそうに飲んだ。
J太郎が砂上にお握りを落とした。「砂が付いているから食べられへん、蟻にあげような」と言って暫くが経ったとき、多くの蟻が集まっていた。J太郎は集まる蟻の様子を興味深そうに何度も何度も身体を伸ばして眺めていた。
J太郎よりも1歳から2歳年上に見える男二人兄弟がやり始めた川への石投げを、J太郎も真似てやり始めた。僕には何が面白いのか分からないのだが、川に石を放り投げ続けた。暫くして男の子達は居なくなったのだが、J太郎は延々と1時間以上もの間石投げを続けた。薄暗い森中で先程彼が言った、「もう帰ろう」の言葉は何処にいってしまったのだろうかと、僕は石上に腰を下ろし茫然として眺めていた。