◆撮影:2010年5月15日、くろんど池辺りにて
2013年5月12日(日)
『山野逍遥』
<くろんど園地>
[私市駅]11:10→[月ノ輪滝]→12:45[すいれん池]13:30→14:00[草原広場]14:20→[すいれん池]→[月ノ輪滝]→15:45[私市駅]
◆所要時間:4時間35分
<毛虫と蝶三昧>
往路では一部の急階段を除くと手をつなぐことが殆ど無かったように思うが、帰路ではその逆で、民家が散在する平坦なアスファルトの道であっても私市駅に着くまで、J太郎は僕の手を放そうとはしなかった。それはJ太郎の体調が芳しく無かったことに理由があったのだろうが、J太郎の脳裏中には“抱っこ”という選択肢は無かったようで、ゆっくりではあったが最後まで彼は歩き続けた。
“草原広場”に居るとき「お祖母ちゃんのとこに帰ろ!」と力無く言う。また“草原広場”より“すいれん池”方面へと向かうとき、蚊の鳴くような声で、「お腹が痛い」と言ってお腹を押さえ、「ウンチ」と続けた。「トイレまでもう直ぐやから我慢できる?」と確認して“すいれん池”横のトイレに駆け込んだのだが、その後も体調は戻ることはなかった。そう云えば、私市駅に着く電車中で暫くの間眠ったのだが、もしかすれば私市にやって来るときに既に体調は芳しく無かったのかもしれない。
往路は蝶と毛虫三昧であった。出合った蝶は、クロアゲハ、モンシロチョウ、キチョウ、コミスジ、アオスジアゲハ、アゲハチョウの他、飛翔しているときにはクロアゲハだと思っていた蝶が葉っぱに停まったときに判ったのだが、それは紛れも無くカラスアゲハであったことに僕の精神は高揚し、J太郎は自身が好きだというジャノメチョウ(ひめうらなみじゃのめ?)の舞姿に歓喜の声を上げた。
また、森中は毛虫や幼虫の天国でもあった。様々な大きさや多様な色彩の毛虫や幼虫に出合った。それらは夥しい数で、僕達の眼前に現れたものだけであっても軽く百匹以上に上るのだろう。見えないくらいの細糸にぶら下がり空中を浮遊する姿を森中の其処彼処で見ることになったし、一本の樹木幹に眼をやればそこには必ず十匹以上の毛虫や幼虫が居るという状態が続いた。手摺や地面上にも然り。また、“すいれん池”前の食卓でお昼にしたのだが、ベンチや食卓上を毛虫が這い廻るとう状況が続いた。ところで、もしそれらの幼虫が如何なる成虫になるのかを知っていたなら、僕はより夢中になったのだろうと思われた。そのほか多くの昆虫に出合った。カワトンボ(イトトンボ?)やカタビロオサムシ始め、蜂の仲間や名称の分からない様々な小さな昆虫に出合った森中の4時間あまりの山野逍遥であった。
“すいれん池”西端に位置する鎖場を三度目で初めて完登した。丸太に似せたコンクリート製の階段より鎖場に移るところで、J太郎は諦めようという仕草をするが、「僕が後ろに居るから落ちへんで」と耳元で囁き、鎖を持つ所や持ち方を示してやると難なく上ってしまった。
ところで、帰路元気無くうつむきトボトボと歩くJ太郎を見つつ、もしかすればJ太郎は、僕(祖父さん)ではなく父や母、そして妹と来たいのかもしれないと思った。それは森中で遊ぶ家族連れの姿を見る中で殆どの子供達が両親とやって来ていたからであって、J太郎は傍らに両親が居ないことに某かの悲哀を感じていたのかもしれない。