八一 あぢきなきもの (94) 2018.10.12
あぢきなきもの わざと思ひ立ちて、 宮使へに出でたる人の、物憂がりて、うるさげに思ひたる。人にも言はれ、むつかしき事もあれば、「いかでかまかでなむ」といふ言ぐさをして、出でて、親をうらめしければ、「またまゐりなむ」と言ふよ。とり子の顔にくさげなる。しぶしぶに思ひたる人を、しのびて婿に取りて、思ふさまならずと嘆く人。
◆◆無意味でつまらないもの わざわざ思い立って、宮使へに出ている人が、その宮仕えを面白くなく面倒そうに思っているの。人にも何かと言われ、やっかいなこともあるので、「どうかして下がってしまおう」ということを口癖にして、里へ出て(みると)、親が何かと煩く言うのがうらめしく、「もう一度参上してしまおう」と言うことよ。養子の顔が憎らしげなの。婿になるのを気が進まなく思っている男を、ひそかに婿として迎えて、あとで思うようでないと溜息をつく人。◆◆
■あぢきなきもの=筋道に沿ってなくて無益だ、無意味でつまらない、どうしようもない、などの意。
■むつかしきこと=やっかいな。煩わしい。
■親をうらめしければ=里に下がってみると、辛抱が不足だとか、何のかのと小言を言う親が今度はうらめしくなるのであろう。「親を」の「を」は疑わしい。
■とり子=養子。
■しぶしぶに思ひたる人=婿になることに気が進まない男。一説、娘がそれを婿とすることに気乗りのしない男。
あぢきなきもの わざと思ひ立ちて、 宮使へに出でたる人の、物憂がりて、うるさげに思ひたる。人にも言はれ、むつかしき事もあれば、「いかでかまかでなむ」といふ言ぐさをして、出でて、親をうらめしければ、「またまゐりなむ」と言ふよ。とり子の顔にくさげなる。しぶしぶに思ひたる人を、しのびて婿に取りて、思ふさまならずと嘆く人。
◆◆無意味でつまらないもの わざわざ思い立って、宮使へに出ている人が、その宮仕えを面白くなく面倒そうに思っているの。人にも何かと言われ、やっかいなこともあるので、「どうかして下がってしまおう」ということを口癖にして、里へ出て(みると)、親が何かと煩く言うのがうらめしく、「もう一度参上してしまおう」と言うことよ。養子の顔が憎らしげなの。婿になるのを気が進まなく思っている男を、ひそかに婿として迎えて、あとで思うようでないと溜息をつく人。◆◆
■あぢきなきもの=筋道に沿ってなくて無益だ、無意味でつまらない、どうしようもない、などの意。
■むつかしきこと=やっかいな。煩わしい。
■親をうらめしければ=里に下がってみると、辛抱が不足だとか、何のかのと小言を言う親が今度はうらめしくなるのであろう。「親を」の「を」は疑わしい。
■とり子=養子。
■しぶしぶに思ひたる人=婿になることに気が進まない男。一説、娘がそれを婿とすることに気乗りのしない男。