永子の窓

趣味の世界

枕草子を読んできて(95)(96)(97)

2018年10月16日 | 枕草子を読んできて
八二  いとほしげなき事  (95) 2018.10.16

 いとほしげなき事 人によみて取らせたる歌のほめらるる。されど、それはよし。
 遠きありきする人の、つぎつぎ縁たづねて、文得むと言はすれば、知りたる人のがり、なほざりに書きて、やりたるに、なまいたはりなりと腹立ちて、返事も取らせて、無徳に言ひなしたる。
◆◆相手が困っていても気の毒だという様子を感じさせないこと。人に代筆して詠んである歌がほめられるの。でもそれはよい。
 遠い旅をする人が、次々と縁故を探し求めて、旅行先の知人宛の紹介状がほしいと、中に入る人に言わせるので、知人のもとに、いい加減に書いてそのほしいという人に送ったところが、その内容に誠実さが欠けていて失礼だと腹を立てて、使いの者に返事も与えず、役に立たぬもののように言いなしているの。◆◆

■文得む=紹介状。
■無徳=それなりに権威があったり有益であったりするものが、役にたたず無様な様子をあらわしている状態であること。




八三  心地よげなるもの  (96) 2018.10.16

 心地よげなるもの 卯杖のほうし。神楽の人長。池の蓮の村雨にあひたる。御霊会の馬長。また御霊会のふりはた、
◆◆心地よさそうなもの 卯杖の法師。神楽の人長。池の蓮がにわか雨にあっているの。御霊会の引き馬の長(おさ)。また、御霊会の振り幡を、◆◆

■卯杖(うづゑ)のほうし=正月上の卯の日に諸衛府から禁中に奉る、邪気払いの杖。「ほうし」は不審。
■人長(にんじょう)=指揮者。近衛舎人が当たる。
■御霊会(ごりょうえ)=祇園牛頭天王の御霊祭。




八四  取り持たる者   (97)  2018.10.16

 取り持たる者。くぐつのこととり。除目に第一の国得たる人。
◆◆手に取り持っている者。くぐつの座頭。除目に第一等のよい国の守になった人。これらは気持ちよさそうだ。◆◆