去年の丁度今頃見つかった食道がん、招かれざる居候との同居も2年目に入りました。
抗がん剤による化学療法で一旦消えたと思った “がん” は半年で再燃、6週間にわたる放射線治療を終えたのはつい先々月のことです。
その放射線治療が終了した後の再診2回目の時、初めて相方を伴って診察に同席させました。主治医の K 先生が、一度家族の意向も確かめたいと言っていたからです。
私が K 先生とは波長が合わないと思っていたように、K 先生の方も私のことを、真意が何処にあるのかその言動からは掴み切れない患者と思っていたようなのです。
どこかで折り合いをつけなければ・・・そう私が思っていた矢先に偶々、再診予約が午後の時間帯に取れ、相方の都合にもうまいこと合ったので実現しました。
K 先生が掴みかねていた私の真意とは、以下の私の言動からきていたようです。
「抗がん剤による化学療法は、“がんは消えたけど、患者は死んだ”
ということになりかねないのが実感です。
だから2クールだけでもうこりごり、二度と受けたくありません。
生き長らえるだけの延命治療も嫌、治療は緩和療法だけで十分です。」
私がなぜこんな主張になったのか? それはこういうことからです。
2クールだけ受けた化学療法ではクール毎に、骨髄抑制による38 ℃代の発熱があったり、最高血圧が70 mmHgまでしか上がらなかったりして、私は今にも死にそうな目に遭いました。
結果、上のような化学療法拒否となったわけで、その旨を当時の主治医に告げていましたし、今の主治医 K 先生に対しても伝えています。
そして実はもうひとつ、K 先生のたっての勧め、放射線治療に続けて経口抗がん剤服用についても頑として拒んでいます。確かに、K 先生にとって私は扱いにくい患者ではあります。
その上、私にはこういう事情もありました。
第一選択となるはずの外科手術は、血を固まりにくくするバイアスピリン服用中のため適応除外。放射線治療も既に限度一杯の照射を終了済み。
というわけで今度、転移・再発したら対抗手段は手詰まりとなってもうないはず、そう思い込んでいた私でした。
「一度、家内を連れて来いと言われていたので・・・」
診察室に相方を同伴してきた私を見てK 先生は大いに顔が立ったらしく、
「これから一体どうしたいのか、あなたの本音をお聞かせください」と、ゆったりした表情で応対してくれました。
立会人として相方がいる前で、私の方も持論のQOL(Quality of life:生活の質)について主治医に述べるいい機会と思い、
「今までゴチャゴチャ言っていましたが、私の望みは唯一つ、
がん治療によってQOLを落したくないだけなんです」と、単刀直入に言ってみました。
「QOL?! QOL重視なら緩和療法ということもよくわかります。
今なら、免疫チェックポイント阻害剤オプシーボも保険適応に
なりましたし、愈々となったら、緩和療法専門の施設も紹介で
きますからお任せ下さい。」
たった一言 “QOL” と言ったお陰で何と呆気なく、あれほど波長が合わないと嘆いていた K 先生と意思の疎通が一気に進みました。しかも、次の再発の対抗手段としてオプシーボ使用というオマケまで付いて。
たった一言のキーワードで相互理解が一気に進む。言葉の重みを実感した一瞬でした。
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