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北米project 4 ~Is the order a warbird? その4 【2016/03/04~10】

2017-01-24 23:26:31 | 海外旅行記

西部航空博物館編の続きです。前回のYF-23以外の機体を見ていきます。
まずはノースロップYF-17「コブラ」(3機目)。1970年代のアメリカ空軍の軽量戦闘機計画(LWF計画)においてジェネラルダイナミクスYF-16と競作となった試作戦闘機です。これもレア物ですよ!

軽量戦闘機と言えば地元アメリカでは(基本的には)1機たりとも採用されなかったけど世界中にバラ撒かれてウハウハだった戦闘機ことF-5「フリーダムファイター」を造ったノースロップでして、F-5開発後に自社開発でF-5後継機のP-530を開発。これがファイターマフィアの目に留まって、改良モデルのP-600を経てYF-17となっています。
LWF計画は元々研究目的の計画でYF-16もYF-17も実証機に過ぎなかったのですが、ジョン・ボイド率いるファイターマフィアの暗躍(?)でいつの間にか性能はいいけど値段が高すぎて数を揃えられないF-15を補完する戦闘機選定計画にのし上がっていました。

飛行選考前のシュミレーションではYF-17が有利だったのですが、航続距離の短さ、新型エンジンの実績の無さ(YF-16はF-15で実績のあるエンジンと同様のものを採用)、搭乗した現役の空軍パイロットの評価が高かったのがYF-16だった、といったことから結局はYF-16が勝者となりご存知F-16「ファイティングファルコン」として採用されることになったのです。
哀れノースロップ、またも決勝戦で負ける。



ところがアメリカ海軍がこれに目をつけてYF-17を採用します。エンジンを2発積んでいるので単発機よりも冗長性があるから、YF-16のフライバイワイヤ等の電子機器は空母などと干渉して危険だから・・・というのが選定の理由だそうですが、たぶん空軍と同じF-16を採用するのがイヤで仕方なかったんじゃないかなと思います・・・。
元々ACF計画は空軍の計画ですが、実は予算削減のために連邦議会から海軍もそれに乗っかれ(=空海軍で同じ戦闘機を採用しろよ!)とお達しが来ていたのです。それを上記のようにアレコレ理由をつけてYF-17にしたんじゃないの?っていう感じです。
だって単発機の機体はF3H、F-8、F-11、A-4、A-7とこれまでいくつも運用してきましたし、ついでにこの度採用されたF-35Cも単発機ですし(そしてこれらが単発機だったゆえの弊害は私の範囲では聞いたこと無い)、YF-17を制式化したF/A-18は結局フライバイワイヤ実装してるし他にも電子装備てんこ盛りだし・・・。よく議会を押し通せたなと。

で、めでたく敗者復活を果たしたノースロップさんチームでしたが、海軍は艦上戦闘機の設計経験のないノースロップは不適と判断し、マクドネル・ダグラスに設計を任せます。ノースロップにしてみれば美味しいところだけ持って行かれたものでして、その後マクドネル・ダグラスと一悶着起こしています。
で、マクドネル・ダグラスがYF-17を再設計して制式化したのがご存知F/A-18「ホーネット」でございます。YF-17とシルエットはそっくりですがそれよりひと回り大型化していて、まあF-16とF-2と同じくらいの別物具合と言っていいです。



ここに保存されているのは2機造られた内の1号機。2号機はアラバマ州という日本人の12割は正確な場所を答えられなさそうなところの戦艦USSアラバマ記念公園にあります。戦艦と航空機と戦車が一度に見られるというお得感ある博物館で面白そうではありますが、アラバマとか行く機会なんてあるんですかねぇ・・・。

デカデカとNAVYと書かれているので塗装は海軍による敗者復活後の姿のようですね。この時点でもうF-18と決まっていたようですが、まだF/A-18とはなっていなかったようで。



ノースロップの戦闘機と言えばこれ、主翼前縁から延びるストレーキ、LERXと言います。詳しい原理は省略しますが(手抜き)これにより離着陸性能や旋回性能の向上、高迎角時の揚力不足の引き下げが見込めます。つまりは戦闘機の機動力を上げてしまうんですね。一番最初に実装したのはノースロップF-5でしたが、これは偶然発見されたものだったというのが面白いところでござんす。
YF-17を再設計したF/A-18にはもちろんのことF-16でも採用され、さらにはソ連のSu-27、MiG-29にも装備されています。すごい発見だったわけですね。
で、なんでLERXを下から見ているのかというと、機体表面とLERXの間に広いスキマがあるからなんですね。F/A-18ではかなりちっちゃくなってしまって、これはYF-17だけの特徴になってしまいました。このスキマは境界層対策です。よく見ると空気取入口まで連なって延びているのが分かります。



ノースロップのロゴと愛称コブラのマーク。コブラというのは機体を下から見た時にLERXの部分がコブラの頭に見えるからというのが由来だそうです。たしかにな。
機体がややくたびれていますが、まあ下手に扱うことはないでしょう。それでも気になったので、後で入館料を払う際にここへ連れてきてくれたチップも兼ねて「これでレストアの足しにして」と言いながら多めに支払っておきました。
こういう活動の大変さは少しはわかっているつもりなので、親切にされると気前よくなってしまいますね。



次、ノースロップT-38「タロン」(4機目)。
ノースロップの大ヒット練習機です。F-5とそっくり、というかほぼ同型です。これはN-156というノースロップの自社開発機を原型にしているからです。
練習機ですがアフターバーナーが使えて超音速飛行出来るという、一時期流行った超音速練習機です。時代は超音速戦闘機!ならば練習機にも超音速を!というのはある意味自然な流れなんですが、いざ運用してみると、あれ、別にいらなくね?となってしまい、今ではほぼ廃れてしまったジャンルです。
戦闘機型のF-5は米空軍全く興味を持たなかったのですが、こっちは大量採用となり輸出機含めて1000機以上を生産しました。アメリカでも未だ現役ですがそろそろ置き換えないとイカンということで次期練習機T-Xが選定されているはず・・・と思って調べてみたら、新型機は選定されず2029年までT-38を延命して使い続けることになったそうでイヤハヤ・・・。初飛行が1959年なので70年間も飛び続けるということですかそうですか。
これで泡食ったのはT-50でT-Xに挑んだ韓国KAIでしょうけどね。F-16をちっちゃくしたような感じで見た目はなかなか良いんですけど。



この機体はご覧の通りNASAの塗装をしています。スペースシャトルから超音速爆撃機まで色々持っています。
連絡機やスペースシャトル乗員の養成に使用されていたといいます。

ところで、ここら辺で「やけにノースロップの機体ばかりつづくな・・・」と疑問に思った人もいるかもしれません。私もそうでした。
実はこの博物館のスポンサーはノースロップ・グラマンでして、YF-23やYF-17はそのツテで寄贈してもらったものかもしれません。



最後はみんな大好きグラマンF-14A「トムキャット」(5機目)。
これは有名だしこの後もたくさん出てくるんで説明は省きますが(手抜き)、ご存知アメリカ海軍の艦上戦闘機です。
普通だったら大興奮モノなんですが、YF-23とYF-17の前には脇役扱いでして・・・どうもあまり。



主翼とか。塗装はVFA-2バウンティハンターズでした。
これはノースロップの機体ではないですが、ノースロップグラマンのグラマンの方の機体なのでやはりそういうツテでもらったのかな。

もう1周して見て回りたいところでしたが、連れてきてくれたおじいちゃんがもう待ちぼうけ状態だったのでこれで引き上げました。
1箇所目から良いものを見ることが出来て大変満足しました。普通に一声かければ案内してもらえると思うのでみんなも行ってみよう。

次回は本館です。


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