Swingin' On The Moon/Mel Torme
(Verve MGV-2144)
(Verve MGV-2144)
白人男性ボーカルではシナトラが絶対的な人気を誇っていると思われますが、Coral、Bethlehem、Verve、Atlanticと快作を次か ら次へと発表して来たメル・トーメの活躍も見逃せません。Marty Paichのオケをバックにしたアルバムが多く,トーメの活躍を影で支えたPaichのサポートも重要な要素であったといえるのではないでしょうか。 Paich絡みでアート・ペッパーのソロが聴けるアルバムもありインストファンにも良く知られた存在だと思います。
さてこのSwingin' On The Moonと題されるアルバムですが、1960年頃の録音と思われます。その時代は旧ソ連とアメリカの間で宇宙開発計画のつばぜり合いが起こっていた時代で ソ連がスプートニクの打ち上げに成功し、1961年にはガガーリンがヴォストークで有人飛行を行い”地球は青かった”の名言を残します。この色にちなんだ 訳ではないでしょうが,このブルーのカバーと宇宙飛行士の風貌をかぶった美人女性が印象的なカバーで有名なこのアルバムは、月にたいする当時の一種の憧れ をもって制作されたのではと推測したくなりますね。収録曲は全12曲,すべての曲タイトルにMOONという言葉が入ったいわば“月特集”です。ここでは ラッセル・ガルシアのバックで唄われますが,A-1のタイトルチューンでもうニンマリですね。珍しいバースから入るHow High the Moonの歌唱も聞き物です。B面では月関連ソングではポピュラーなブルームーン,バーモントの月が聴かれます。トーメのテクニックあふれる歌唱ですよ ね。何と言っても,自分の愛聴曲No Moon at Allが聴けるのが嬉しいです。月はいつの時代でもロマンティックシンボルであることのあかしですよね。
VerveのMGM、T字レーベルですが、何はともあれ今ならややコミカルとも思えるこのカバーが好きで堪らないんですよ!