The Rumproller/Lee Morgan
(Blue Note 84199)
「月の砂漠をはるばると」で始まるこの曲の歌詞とメロディは我々日本人にはとても馴染みのあるものでモーガンが吹奏するこのテーマを初めて聴いたときにはぶっ飛んだものです。作詞/加藤まさを、作曲/佐々木すぐるこの童謡の名曲をジャズにしてしまったモーガンにさらに親近感を覚えたものです。おそらくは彼のガールフレンド(妻?)がこの曲をリーに教えたのかなんて想像してしまいます。原曲に比べればテンポを速めたマイナーテーマはまぎれもなく我々がよく知ってる「月の砂漠」なのですが"Desert Moonlight"とクレジットされコンポーザーにリーの名前が刻まれているのは、何とも微笑ましいですよね。こういったジャズになった日本の名曲では、モンクの「荒城の月」と並び双璧だろうと思います。
メンバーはLee Morgan(tp), Joe Henderson(ts), Ronnie Mathews(p), Victor Sproles(b), Billy Higgins(ds)の五重奏団です。フロントのユニゾンとマシューズのピアノのコールアンドレスポンスではじまるbluesで幕を開けます。タイトルチューンであり10分あまりの長尺演奏でありサイドワインダーの路線を踏襲した作品ですが、この曲はのちに結構アバンギャルドなアルバムを発表するAndrew Hillの作品であることに驚いてしまいますよね。リーのサイドワインダーから好調を維持するインパクトの強いファンキーなソロ、ジョーヘンのR&B的なソロ、マシューズのキラキラするようなピアノ、グリッサンドを交えたスプローレスのベース、相変わらずの小気味良いダンシングビートを供給するヒギンズのドラムとどれをとっても最高で、アルバムの中でも最大の聞き物でしょうね。そして問題の"Desert Moonlight"に引き継がれていきます。B面トップののBossa,"Eclipso"も好きなナンバーですが、やはりタイトル曲を含むA面のインパクトの強さにはかないません。サイドワインダー路線の踏襲ではありますが、やはりジャズロックを代表する名演と思います。
所有盤は30年前、学生時代に石丸電気で新品で購入したソリッドブルーの音符盤ですが、当時は国内盤は出ておらず、新潟のジャズ喫茶のどこにもなかったような記憶があります。リード・マイルスのカバーデザインも秀逸ですよね。