ローリングストーンズの曲については何度も書いてきた。
私にとって、このアルバムは、聴けば聴くほど味が出て飽きないアルバムのひとつ。ストーンズの曲の中でいちばん回したのは、やはりジャンピンジャックフラッシュのシングルレコードかな。聞き手に媚びることなく、まっすぐ攻撃をしかけるサウンドは、今聴いても鮮烈さを失っていない。
その他、嫌になるくらい聴いたアルバムと言えば、Mハタケヤマ、カラヤンの第九、ワルターの運命、サイモン&ガーファンクル、ジェファーソンエアプレーン、クロスビースティルスナッシュ&ヤング、レオンラッセル、ディランのノッキンオンヘブンズドア、キングクリムゾン、ロッドスチュワート、デビッドボウイなどなど。アルバムの大半が散逸したので、タイトルを思い出せるのはほんのわずか。
Mハタケヤマは日本の演歌シンガーで、私が小学生のころ最盛期だった。私の母親くらいの年齢だろうか。古い蓄音機に載せたペラペラのソノシートに、重い針をおそるおそる置いた感触が、今でも指先から伝わってくる。
まさにそのころ、ビートルズの情報が私の小学校に届いた。その直後、ストーンズが私の家にも上陸。彼らの人相がこれまた印象的で、レコードジャケットを父親に見せたら、父親は、ミックの視線から顔をそむけ、ブライアンジョーンズをいい男だと言ったような記憶がある。
私の音楽の聴き方は、一風変わっているかもしれない。媒体がすり切れるんじゃないかと心配になるまで、連続して徹底的に聴くというやり方。私としては、数回くらいで曲全体を聴き取ることはできないと思う。最初の十回はボーカル、次はリードギター、それからベース、キーボードと、聞き耳を立てる対象を変えていく。興味のある曲は、百回聴いても違う曲を聴くようだ。いよいよ耳鳴りがしてきたら次の曲へ移行する。
ところが読書の方はきわめて淡泊で、連続読みした作家は、若いころに、ドイルとルブランそれにヘッセ、漱石しか思い当たらない。学術書以外で、同じ本を二回読んだ記憶もない。
この六十年を振り返ると、ときどき好みに変化があったものの、聴き入る音楽のほとんどは激しい旋律とリズムをもったクセものばかりだ。クラシック音楽も、なだらかな旋律より激しく変化する方を好む。
それにしても、理由は特にないのだが、この国の音楽だけは、長く聴き続けることができない。最近、Tクボタを聴いたが、やっぱり途中で投げ出してしまった。日本のExile(エグザイル)にもまったく関心がない。
ところで、このアルバムタイトルのExileという語は、ならず者というより、放浪者、亡命者のニュアンスが強い。ストーンズは、このアルバムを作っていたころ、イギリスの高い税金を嫌ってフランスの隠れ家に身を潜めていた。隠れ家といっても、多くの男女が次々と侵入してきたというから、メインストリートに住んでいたようなものか。(2015.3.23)